ユニ・チャーム(株)は、持続可能な社会への貢献を目指し、地球環境保全と経済的成長を両立する事業活動に取り組む。その一環として、2015年に発表した、世界で初めての使用済み紙おむつからパルプを再生する再資源化技術を活用した実証試験を開始する協定を、鹿児島県志布志市と11月1日に締結した。今後、志布志市との共同により、使用済み紙おむつの最適な収集方法とそのリサイクル技術の構築に向けた実証試験を開始する。
■背景
大人用と子供用の紙おむつの生産量は、2015年で218億枚 重さ 81万トン※1にのぼる。今後は、高齢者人口の増加を背景に、紙おむつの生産量(特に大人用紙おむつ)の増加は見込まれているが、ほとんどの紙おむつは、使用後は焼却処理されているのが現状である。一方、再利用となれば、排泄物に含まれる菌がリサイクルした製品に含まれる恐れがあった。昨年、同社が開発したオゾン処理方法(使用済み紙おむつのパルプをバージンパルプ※2と同等の品質にする方法)を用いれば、環境負荷低減効果(温室効果ガス削減効果)と、資材の安全性(衛生安全性)が確保されることが分かっている。
※1 日本衛生材料工業会 生産統計データより(軽失禁用を除く)
※2 バージンパルプ:木から取り出した新しいパルプ
■志布志市との取り組みの概要
同社は、志布志市が主体となっている18の団体・個人から構成された「使用済み紙オムツ再資源化推進協議会」に2016年5月より参画。志布志市および、そおリサイクルセンター(大崎町)、同社の3者間で使用済み紙おむつの収集とリサイクルに関する協定を11月1日に締結し、使用済み紙おむつの再資源化を目指した実証試験段階へ入る。
■リサイクル先進都市・志布志市について
志布志市は10万人以下の人口規模の市だが、ここ数年、一般廃棄物のリサイクル率が市単位では国内1位。焼却ではなく埋め立て処分を実施しており、リサイクルには力を入れているが、リサイクル率は76%と高止まりしている。さらに、埋め立てごみに占めるおむつの割合は20%に上っており、同市は環境に優しい紙おむつの再資源化の実現に期待を寄せている。
なお、同社は12月8~10日に開催される日本最大級の環境展示会「エコプロ2016~環境とエネルギーの未来展」に出展し、紙おむつのリサイクルシステムと志布志市との実証試験の内容を紹介する予定。
※3ユニ・チャームの開発したリサイクル技術:使用済み紙おむつから低質パルプを回収した後、独自のオゾン処理を加える。これにより、再利用の工程で設備不具合の原因となる、紙おむつには欠かせない素材の高分子吸収ポリマー(SAP)を酸化させて水と二酸化炭素にまで分解し、バージンパルプと同等の衛生的で安全な上質パルプへと再資源化が可能となった。昨年完成させた基本技術を活用して実証試験を行う。