<ジョージア州アルファレッタ、2016年10月24日>高機能樹脂の世界的サプライヤーであるソルベイは本日、K 2016(ホール6、ブースC61)で、3Dプリントとも呼ばれる急成長中の付加製造(AM)技術への対応で主導的役割を果たすべく、ワールドクラスの特殊ポリマーおよびエンジニアリングプラスチックの生産態勢強化に取り組んでいくと発表した。
3Dプリント対応能力の拡大は、金属に代わる高機能軽量ソリューションを世界的に主導するソルベイの取り組みの一環。そうしたソリューションは、現在では主に輸送分野で活用されている。自動車や飛行機の軽量化によりCO2排出量を削減するほか、設計の柔軟性を高めることで廃棄物の削減にも貢献している。
ソルベイはこの取り組みの一環として、フランスのリヨンにある既存のSinterline(r) Technyl(r) のAM技術センターおよび生産施設に加え、ジョージア州アルファレッタのResearch & Innovationセンター内に、AM用高機能材料の開発に向けた新たなラボを開設した。さらに、AMソフトウェア設計開発を専門に手がける施設をベルギーのブリュッセルに設立した。このAMソフトウェアは、MSC Software社のe-Xstream部門のDigimat(tm)をベースにしている。ソルベイはまた、大学から設備メーカーに至るまでのAMバリューチェーン全体で、強力なソリューションプロバイダーのネットワークも構築している。
「付加製造技術は独自の補完的なプラスチック変換加工技術として登場したもので、現在では特に、従来の溶融加工技術では不可能な高度で複雑な部品の製造に対するニーズが高まっています」とソルベイのSpecialty Polymers Global Business UnitでHead of Additive Manufacturingを務めるBrian Alexander氏は述べている。「プロセスと設備が進歩する一方で、信頼性の高い高機能材料の供給と標準化についてはまだ欠けている点があります。ソルベイは、技術に対する確かな知識と総合的なお客様サポートを基盤に、AM用ポリマーの選択肢の拡大やサプライチェーンの最適化に関して主導的な役割を果たしていく決意です」。
AMプロセスでは、最初に成形金型や試作品を製造する際の時間やコストが不要になるため、デジタルデザインをすぐに少量から中程度の生産量の機能部品へ変換することができ、生産性を向上させることが可能。その結果、OEMや傘下のサプライヤーが製品を市場に送り出すまでの時間が大幅に短縮される。
AM技術を導入すれば生産廃棄物が大幅に削減され、サプライチェーンが最適化されるほか、工作設備も不要になる。また、従来のポリマー変換加工手法と同程度の性能の高さが求められる新設計を商用化するまでの時間も短縮される。その一方で、部品を輸送するのではなくデジタル技術とファイルを用いて製造を行うことから、製造業の革命的な民主化にも貢献する。
材料と製造に関するソルベイの専門技術は、すでにオールプラスチック製エンジンPolimotor 2の3Dプリント部品に貢献している。このエンジンは、業界の先駆者であるMatti Holtzberg氏が設計開発したもので、高度なポリマー技術を利用して現在製造されている標準的なエンジンよりも、約40kg軽いDOHC4気筒エンジンを開発することを目標としている。Polimotor 2エンジンのプレナムチャンバーは、ガラスビーズを40%充填したソルベイのSinterline(r) Technyl(r) ポリアミド6(PA6)パウダーグレードを用いて、選択的レーザー焼結法(SLS)により3Dプリントされている。
ソルベイはPolimotor 2で得た経験をさらに掘り下げ、試作品にとどまらずにAMの価値を広げるための研究も実施している。そうした研究の一例が、キータスパイア(r) KT-820 PEEKを用いて、3Dプリントおよび射出成形により製造されたサンプルの引張り特性の比較評価。この研究では室温で製造した場合、3Dプリント部品と成形部品の間に性能の差が見られたものの、150度Cまで温度を上げるとその差が縮まることが分かった。この結果は、PEEK部品の場合、3Dプリントでも成形でも高温環境での要求特性に対応できるという実用面の可能性を示唆している。ソルベイはPolimotor 2の動力計試験段階でも、3Dプリントおよび成形により製造したPEEK部品の性能比較評価を継続していく計画。
これらの知見は、フランスのリヨンにあるソルベイの技術センターで得られた知見と一致する。この技術センターでは、Sinterline(r) Technyl(r) PA6から3Dプリントにより製造された試作的な機能部品に関して、補足的な材料特性試験と試作品確認試験が実施されている。
「最近実施されたPolimotor 2のプレナムの研究では、軽量かつ複雑な設計の部品に関して、AMは射出成形以上の大きな可能性を秘めていることが確認されましたが、そうした潜在能力はまだほとんど活用されていません」とソルベイのEngineering Plastics Global Business UnitでSinterline(r) Program Leaderを務めるDominique Giannotta氏は述べている。「この大きな潜在能力を余すところなく活用するためには、付加製造を前提とした部品の設計にインダストリアルデザイナーが乗り出す必要があるでしょう」
ソルベイは幅広いSinterline(r) Technyl(r) ポリアミド6(PA6)製品に関連し、長年にわたりSLSの経験を積んできた。これらの製品は、他社のPA11やPA12よりも高い剛性と耐熱性を兼ね備えている。非強化およびガラスビーズ充填グレードで提供されており、自動車、輸送、スポーツ用品、電化製品、電気市場などの要件の厳しいSLS用途での使用に適している。また、非充填グレードは、USPクラスVI医療用途の適合試験に合格している。
ソルベイはその他のAM用特殊ポリマーもアルファレッタで開発している。具体的には、熱溶解フィラメント製法(FFF)に対応するアバスパイア(r) ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、キータスパイア(r) ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、レーデル(r) ポリフェニルサルホン(PPSU)、SLSに適合するポリエーテルケトンケトン(PEKK)などがある。
2016年末までには、FFF 3Dプリントプロセスに対応する非強化およびファイバー充填グレードのキータスパイア(r) PEEKおよびレーデル(r) PPSUをはじめ、サンプリング用の多くの製品が提供される予定。
ソルベイは買収したCytec社の事業により、SLS AMプロセスへの適応材料の1つであるPEKKのリーダーとしての地位を固めた。この事業とソルベイの従来からの製品群を適用した付加製造技術への投資により、このエキサイティングで新しく急速に拡大する分野で材料科学のリーダーとして最先端の地位を確保している。
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【3Dプリント】ソルベイ、付加製造技術の急成長に応じた高機能ポリマーの生産強化を主導
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