帝人(株)は、2018年4月1日付にて、帝人グループで炭素繊維事業を展開している東邦テナックス(株)を統合する。
帝人グループは、今年度よりスタートした中期経営計画「ALWAYS EVOLVING」において、マテリアル事業領域とヘルスケア事業領域を2本の柱とし、成長戦略および発展戦略を強力に推進している。そして、マテリアル事業領域においては、世界的な環境規制の強化に伴う低燃費化の要請に応えるため、「軽くて強い」高機能素材の拡大に取り組んでおり、航空機分野や自動車分野への展開に注力している。
こうした中、グループ内の情報・技術の共有や人財の最適配置などによる総合力の発揮を通じて、さらなる企業価値の増大を図るため、このたび炭素繊維事業を担う東邦テナックスを帝人に統合することとした。
なお、このたびの統合に伴い、ヨーロッパ、アメリカ、シンガポールの事業会社であるトーホウ・テナックス・ヨーロッパ、トーホウ・テナックス・アメリカ、トーホウ・テナックス・シンガポールについては、それぞれテイジン・カーボン・ヨーロッパ、テイジン・カーボン・アメリカ、テイジン・カーボン・シンガポールへと名称変更を予定している。
【炭素繊維】帝人、東邦テナックスを2018年4月に統合
【フィルム培地】DNP、「Medi・Ca®(メディカ)」シリーズが国際的認証機関AOACのPTM認証を取得
大日本印刷(株)(DNP)が開発した、「DNP微生物検査用フィルム培地 Medi・Ca®(メディカ)」シリーズの「黄色ブドウ球菌数測定用(SAグレード)」が、国際的に権威のある認証機関AOACのPTM(Performance Tested Methods:性能検証済み試験法)認証を取得した。
Medi・Caシリーズは、食品・飲料メーカー等が行う品質管理用の微生物検査の効率を向上させるため、微生物を培養する培地にフィルムを使用した製品。今回「黄色ブドウ球菌数測定用(SAグレード)」がPTM認証を取得したことで、「一般生菌数測定用(ACグレード)」、「大腸菌群数測定用(CCグレード)」、「大腸菌・大腸菌群数測定用(ECグレード)」に加えて、シリーズ4種全てが同認証を取得した。従来の寒天培地を使ったシャーレでの微生物検査では、培地を調製する前処理作業などで熟練した作業者が必要であった。Medi・Caは、ゲル化剤や栄養成分などをシート状のフィルムにコーティングしており、この前処理作業が不要で、取り扱いが容易なため作業者の熟練も必要とせず、検査業務の効率化を実現する。
【AOACのPTM認証について】
国際的な認証機関であるAOACは、米国内の食品、医薬品、肥・飼料、化粧品等に関する新開発の検査法の妥当性検証を目的に設立されました。AOACのPTM認証は、AOACが認定した第3者機関で妥当性が確認された試験法であり、AOACの理念に基づいた厳しい検証の基準に合格した検査キットに与えられる。
【「DNP微生物検査用フィルム培地 Medi・Ca」の特長】
●簡単で扱いやすく、すぐに使える調製済み培地
外装袋から取り出してすぐに使用できるため、緊急の検査などにも迅速に対応できる。検査する食品・飲料などを希釈した試料液を培養エリアの中央に滴下し、カバーフィルムを閉じるだけで試料液が培養エリア全体に広がるため、効率的に作業を進めることができる。
●コロニーが見やすく、カウントしやすい
培養する菌に適した専用の発色剤を使用しているため、培養後の微小な菌の集合体(コロニー)の視認性が高く、食品残渣との判別も容易で、コロニー数の計測をスピーディかつ確実に行える。
ACグレードはBacillus(バチルス)属菌によるコロニーの広がりが少ないことも特長の1つ。
●省スペース化と廃棄量削減を実現
Medi・Caの容積は、従来の検査で使用するシャーレの約20分の1以下に減容化しているため、保管や培養に要するスペースを削減し、使用後の廃棄物量を削減する。また、滴下時にMedi・Caを重ねながら作業が行えるため、作業エリアの省スペース化も実現できる。
左:シャーレ、右:Medi・Ca
【Medi・Caの商品ラインナップと価格(税抜き)】
一般生菌数測定用(ACグレード) | 各75,000円(1,000枚入) |
大腸菌群数測定用(CCグレード) | |
大腸菌・大腸菌群数測定用(ECグレード) | 47,500円(500枚入) |
黄色ブドウ球菌数測定用(SAグレード) | 75,000円(500枚入) |
【今後の展開】
今後は、Medi・Caシリーズの4製品を食品・飲料・菓子メーカーや飲食チェーン店などを中心に販売し、2021年度に年間約3億円の売上を目指す。
【買収】ミマキエンジニアリング、豪Rimslow社からデジタルテキスタイルプリント向け前後処理装置の製造販売事業を取得
(株)ミマキエンジニアリングは、オーストラリアのRimslow Global Pty. Ltd.(Rimslow社)から、デジタルテキスタイル プリント向け前後処理装置の製造販売に関する事業を取得する。
事業取得の理由
ミマキエンジニアリンググループは、今後の持続的な成長に向けてテキスタイル・アパレル市場(TA市場)におけるデジタルプリントの拡大を喚起することが不可欠と認識しており、そのためには、TA市場の販売・ サービス体制の再構築と並行して、TA市場のデジタルプリント全般に関わるノウハウの習得に取り組む必要があると考えている。
同グループは、デジタルプリンタに関して、既に消費地と生産地の双方に対応できる製品群をフ ルラインナップで取り揃えているが、コーティング、蒸し、水洗等の前後処理工程に関する自生のノウハウはない。今回の件により、新たにTA市場向けデジタルプリントの前後処理装置(コーテ ィング機・蒸し機・洗い機等)に関するノウハウを取得することで、TA市場のトータルソリューショ ンに対応できる稀有なデジタルプリンタメーカーとしての地位を築くことができる。
調印式の様子
事業を譲渡するRimslow社は、デジタルプリント用前後処理装置のパイオニアとしてテキスタイルプリント業界では広く知られ、同社製品はRimslow社の社名とともに広く流通している。今般の事業取得は、Rimslow社からの事業承継の打診に対してミマキエンジニアリングが合意したもので、ミマキエンジニアリングはRimslow社製品の設計・商標・ デザイン等を取得する(既存顧客の保守サービスは承継しない)。さらに、Rimslow社の代表者と別途コンサルタント契約を締結し、Rimslow社製品の開発・製造に関する指導を受けてミマキエンジニアリンググループ内での生産体制を築いていく。中期的には、ミマキエンジニアリンググループの販売チャネルを通じてRimslow社製品をワールドワイドに展開することを想定している。
事業取得先の概要
1) 商 号 | Rimslow Global Pty. Ltd. |
(2)所 在 地 | 50 Commercial Drive Lynbrook,Victoria3875,Australia |
(3)代 表 者 | George Sebek |
(4) 事 業 内 容 | デジタルテキスタイルプリント向け前後処理装置(コーティング機、蒸 し機、洗い機等)の開発・製造・販売 |
(5) 上 場 会 社 と 当該会社との関係 | 資本的関係、取引関係および人的関係において、該当事項はない。 |
契約締結日は平成29年11月30日。今回の件が今期連結業績に与える影響は軽微としている。
【CSR】ユニ・チャーム、台湾で創立32周年記念日にボランティア活動と寄付活動実施
ユニ・チャーム(株)は、台湾にある子会社嬌聯股份有限公司で11月24日、CSR活動を行った。
同社では、日本での事業活動で培ってきたノウハウを活かし、それぞれの国や地域の特性に合った商品・サービスを展開するとともに、さまざまな社会貢献活動や啓発活動に取り組んでいる。
嬌聯股份有限公司では毎年創立記念日に、社会貢献を目的とし、全社を挙げてCSR活動を実施している。
今年は、総勢167人の社員が、高齢者施設でのボランティア活動と、今回初となる、DVや性暴力から児童と女性を守ることを旨とする台湾の福祉団体“励馨基金会”(The Garden of Hope Foundation) に寄付する活動を実施した。この活動は、同基金会が保護している乳幼児が里親を見つけるまでの養育費や医療費を募金し、サポートすることを目的としている。台湾最大手の遠東百貨店の協力の下、台北、台中、高雄の4会場でハイハイ運動会等のイベントを実施し、同社の商品が入った100元(日本円約370円相当)福袋を販売することによって、合計27万元(約100万円)を寄付した。
【か性ソーダ】信越化学工業2018年2月1日出荷分から20円/kg以上値上げ
信越化学工業(株)は、か性ソーダの国内向け販売価格を改定することを決定した。2018年2月1日出荷分から、1kg当たり20円以上の値上げを実施する。
か性ソーダの需要は国内では堅調に推移しており、海外ではアジアを中心に大幅に増加している。一方、中国や欧州では環境規制などにより設備が停止していることから供給量は低下している。この結果、海外市況はこの1年で2倍以上に急騰している。大型の増設計画がなく、今後も国内、海外ともに逼迫した需給が続くものと予想される。内外の価格差を放置すれば、同社事業の競争力は低下し、結果として安定供給が難しくなる。
同社は2017年4月に顧客の理解を得、か性ソーダの販売価格を改定したが、その後も発電用の燃料や物流コストは上昇し、自助努力によるコスト削減は限界に達しているため、今回の決定に至った。
【セロファン】レンゴー、2018年1月1日納入分から値上げ
レンゴー(株)は、セロファン製品の価格を改定する。木材パルプに由来する透明フィルムである「セロファン」は、手切れ性や透明性の良さで、主に医薬品向け包装などで使用されている。昨今、エネルギーコストや薬品、副資材価格、さらに物流経費等が上昇し、同社のセロファン事業の収益は圧迫されている。同社はコストダウンに取り組み価格の維持に努めてきたが、単独の努力では難い状況となり、価格改定に至った。
対象品目 | 一般セロファンおよび乳白セロファン全品種 |
価格改定幅 | 500円/連(一般セロファン換算) |
改定時期 | 2018年1月1日納入分より |
【3Dプリンター】日本HP、「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」対応造形材料を拡充
(株)日本HPは、3Dプリンター「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」向けに、今後新たに3種類のHP製の造形材料(*1)を追加することを発表した。HPの革新的な3D オープンマテリアル&アプリケーションラボで開発された新材料は、HPの3Dプリンティング技術「HP Multi Jet Fusionテクノロジー」(*2)の利用や可能性を広げ、新たな大量生産 アプリケーション分野を切り拓くもの。
HP独自の3Dプリンティング向けオープンマテリアルプラットフォームは、新材料の開発を強化し、イノベーションを加速し、より広域なアプリケーションへの対応を可能にする。HPの造形材料は業界トップの再利用率が特長で(*3)、すべての「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」で利用可能。
新材料は以下の3種。
(1)HP 3D High Reusability PA 11
補綴物、インソール、スポーツ用品、スナップフィット、リビングヒンジなど、耐衝撃性と延性を備えた低コストかつ高品質の機能性パーツの生産向け
(2)HP 3D High Reusability PA 12ガラスビーズ
寸法の安定性と再現性を備えた、低コストかつ高品質な機能性パーツの造形向け。エンクロージャやハウジング、型、ツーリングなど、高い剛性が求められるアプリケーションに最適
(3)HP 3D High Reusabilityポリプロピレン
耐薬品性に優れ、軽量で、防水性を備えた柔軟性を有する、低コストの耐久材料
また、HP純正の材料に加え、多彩な材料に対応するためのマテリアルパートナーエコシステムには、グローバルで業界をリードするアルケマ、BASF、エボニック、ヘンケル、Lehmann & Voss、Sinopec Yanshan Petrochemical Companyに加え、新たにDressler GroupとLubrizolが認定材料供給パートナーとして参画した。
HPのオープンマテリアルプラットフォームというアプローチは急速に拡がっており、認定パートナーに加え、現在50社以上の化学メーカーが積極的に取り組んでいる。 業界をリードするダウ・ケミカルやDSMなどが新たに加わり、HPと協力して「HP Jet Fusion 3Dプリンター」向けの造形粉末を開発するため、業界初となる「3Dマテリアルディベロップメントキット(MDK)」を採用している。
*1:「HP 3D High Reusability PA 11」は2018年1月中旬から、「HP 3D High Reusability PA 12ガラスビーズ」は2017年12月中旬から国内認定パートナーより販売開始予定。「HP 3D High Reusabilityポリプロピレン」の販売開始時期は未定。
*2:「HP Multi Jet Fusionテクノロジー」は、HPの30年以上におよぶプリンティング技術と高度な材料の知見をもとに開発。生産性と品質の向上を低コストで実現することで、3Dプリンターの活用の可能性を大きく拡大。ボクセル(Voxel)単位で必要な特性を持たせることが可能なため、将来的には、ボクセル単位でカラーやテクスチャー、機械的特性を持たせたパーツを造形することが可能。
*3:「HP 3D High Reusability PA 12」を使用して推奨のパッキング密度で製造した場合、粉末焼結積層造形法(SLS)テクノロジーと比較し、業界トップの余剰粉末再使用率を達成。 機械的性能を損なうことなく、優れた再利用率を提供。ASTM D638およびMFIテストに従い、HDTを使用して異なる負荷で、寸法安定性のため3Dスキャナを用いてテスト。テストのモニタリングには、統計的プロセス制御を使用。リットルは、実際の材料分量ではなく、材料のコンテナ寸法を表す。材料はキログラムで測定。
【半導体】住友化学、中国・西安で高純度ケミカル工場の生産能力増強
住友化学(株)は、住化電子材料科技(西安)有限公司において、半導体用高純度ケミカル工場の生産能力を増設する。増設した設備では、2019年初めから順次量産開始予定であり、生産能力は現行比でほぼ倍増する。
住友化学は、これまで日本、韓国、中国において、半導体製造工程で精密洗浄などに用いられる半導体用高純度ケミカル事業を展開してきた。中国では、半導体市場の拡大に伴って、住化電子材料科技(西安)有限公司を設立した後、2017年8月には住化電子材料科技(常州)有限公司を設立し、中国で2拠点目となる半導体用高純度ケミカル工場の建設を開始したところ。
住友化学は、2001 年に上海で光学機能性フィルムの加工・販売拠点を設立して以降、顧客のニーズにきめ細かく対応すべく、北京、無錫などで情報電子化学事業を展開している。今回の増設は、中国における半導体事業のさらなる拡大と、これに伴う半導体用高純度ケミカル需要の増加を背景に決定した。
住友化学は、中期経営計画において「ICT」分野を次世代事業開発の重点領域の1つとして位置付けている。今後も、旺盛な半導体需要を取りこみつつ、中国沿岸地区の住化電子材料科技(常州)と中国内陸部の住化電子材料科技(西安)の東西2拠点を活用しながら、さらなる半導体高純度ケミカル事業の強化を図る。
<住化電子材料科技(西安)有限公司の概要>
所在地:中国陝西省西安市高新開発区内
資本金:250,724千CNY
董事長:池添 肇
設立年月:2012年11月
事業内容:過酸化水素水、硫酸、安水、イソプロピルアルコール等の製造・販売
【化成品の製造受託サービス】富士フイルム、2018年1月から開始。多品種少量生産から約100トン/年レベルの大量生産まで対応可能
富士フイルム(株)は、ファインケミカル事業をさらに拡大するため、新たな生産手法を用いた、化成品の製造受託サービスを2018年1月より開始する。
同サービスは、原料を連続的に供給し混合・反応させる化学合成法である「フロー合成法」を活用したもので、多品種少量生産から約100トン/年レベルの大量生産まで対応できる。また、需要が高まっている高純度な化成品の生産も可能であるなど、幅広い顧客ニーズにこたえることができる。
「フロー合成法」は、直径数百ミクロン~数mm程度の極細な管に、原料である化学物質を連続的に供給して混合・反応させる化学合成法。「フロー合成法」は、大きな反応釜で大量の原料を一度に混合・反応させる「バッチ合成法」と比べて、生産量にあわせて一定の原料を連続的に投入するため、多品種少量生産ニーズへの対応が可能。さらに、極細な管の中で反応条件を精緻に制御できるため、より高純度な化成品を生産することができる。このようなことから、現在、化成品の生産工程に「フロー合成法」を取り入れる動きが始まっている。
富士フイルムは、1951年に、富士フイルムファインケミカルズにて「バッチ合成法」を活用した化成品の製造受託サービスを開始。2012年には「フロー合成法」を用いた化成品の自社生産をスタートし、自社での製造実績・ノウハウを蓄積するとともに、多品種少量生産のみならず大量生産に向けた技術改良の研究開発(*1)を進めてきた。また、2017年4月に連結子会社化した和光純薬工業でも「フロー合成法」を用いた試薬の製造を行っている。
今回、富士フイルムは、自社が保有する高度な技術とグループ内の生産設備を活かして、「フロー合成法」を用いた化成品の製造受託サービスを新たに開始する。富士フイルムが持つ、合成処方設計から高精度な反応制御、生産プロセス開発を一貫して行える多様な技術と、試薬・化成品などの製造・販売を行う和光純薬工業や化成品の製造受託を展開する富士フイルムファインケミカルズが保有する生産設備を組み合わせて、多品種少量生産から約100トン/年レベルの大量生産まで対応可能な受託体制を構築。今後、ますます求められる化成品の高純度化ニーズにこたえる。
2018年4月1日には、事業基盤のさらなる強化を目的に、和光純薬工業と富士フイルムファインケミカルズを統合(*2)する。両社の生産機能のみならず、品質保証や営業などの機能も一体化させて、より迅速に顧客ニーズにこたえサポートする体制を整備し、化成品の製造受託ビジネスの拡大を図っていく。
化成品は、日用品や半導体材料など幅広い分野に用いられており、今後も高い市場成長が予測されている。また昨今では、有機ELなどの登場により、製品に使用される化成品の高純度化が求められており、化成品の製造受託サービスの市場拡大が見込まれている。
富士フイルムは、これまで写真フィルムなどで培った高度な化学合成力や生産技術などを活かして、高品質・高純度な化成品を開発・提供することにより、ファインケミカル事業のさらなる拡大を図るとともに、高付加価値・高性能な製品の創出に貢献していく。
*1 京都大学 吉田潤一教授、長谷部伸治教授、前一廣教授、東京大学 小林修教授との共同研究で蓄積した先端技術も活用。
*2 和光純薬工業が存続会社として、富士フイルムファインケミカルズを吸収合併する。
【セラコン用離型フィルム】東洋紡、敦賀事業所に30億円投資して製造設備を増設
東洋紡(株)は、セラミックコンデンサー(セラコン)市場の拡大に伴い、セラコン用離型フィルムの製造設備を増設する。敦賀事業所に30億円を投資し、2019年7月から製造を開始する。
1.増設の経緯
セラコン市場は、IoTの進展やAIの導入によるデータ通信量の大幅な増加により、急速に拡大している。現在、約7,000億円の市場は、年率10%の成長が見込まれ、2020年には1兆円になると予測されている。
そのセラコン世界市場の50%以上を国内メーカーが占めている。中でも超小型(0.6㎜×0.3㎜以下)のセラコンは、ハイエンド品として位置づけられ、その大半は国内メーカーで製造されている。
東洋紡は、セラコン製造時に必要不可欠な離型フィルムを製造・加工している。今後の需要の増大に対応するため、敦賀事業所に30億円を投資して加工設備を増設する。
2.東洋紡の離型フィルムの特長
同社は、ハイエンド品の製造工程で使用される離型フィルムを、原反フィルム製造から離型加工まで一貫して製造することができる。ハイエンド品に必要な平滑性に優れたフィルムを製造する独自技術と、高度なクリーン環境を維持できる加工設備を保有している。
3.今後の展開
独自技術を生かしたハイエンド品のセラコン用離型フィルムの販売を加速し、2021年までに売上高の倍増を目指す。また、需要の増大に応じて、さらなる投資も検討する。
【農業】デュポンと住友化学、種子処理技術でグローバルな協力に合意
デュポンと住友化学(株)は、主要な農作物を対象とした、種子処理技術の開発、登録、商業化に関して、グローバルに協力することに合意した。
デュポンと住友化学は、農作物の初期生育と収量の向上につながる新たな種子処理技術の開発と商業化を加速させるために、同協力を行うことにした。このグローバルな協力は、住友化学の持つ化学農薬および生物農薬の製品パイプラインと、ダウ・デュポンのアグリカルチャー事業部門の事業ユニットであるデュポン農業製品事業部の先端種子処理技術および製品開発力という両社の強みを活用するもの。
製品開発において、従来より早い段階で、デュポンの技術や製品開発力と住友化学の製品パイプラインを組み合わせ、さまざまな製品のコンビネーションによる相互補完的な特長を両社で評価する。この初期段階での協力によって、現在や将来の種子処理製品の強化が見込まれる。
住友化学の理事・国際アグロ事業部長の梅田公利氏は次のように述べている。
「住友化学は、農作物の種子の保護を促進し初期生育を最大化するために、化学農薬や生物農薬によって根圏環境を改善する技術の研究に大きな投資を行ってきました。デュポンとパートナーを組むことで彼らの先端種子処理技術にアクセスでき、われわれの種子の保護および生育促進の製品と組み合わせて評価することにより、世界の農業生産者のために、これまでの技術を補完する新しい種子処理技術を開発する機会が生み出されます」
デュポン・シードアプライドテクノロジーのディレクターであるミック・メスマン氏は次のように述べている。
「今回住友化学と協力できることを嬉しく思います。住友化学の製品ポートフォリオとパイプラインは、これまでのデュポンの種子処理製品の探索、開発および商業化への投資を補完するものです。住友化学が開発プロセスの初期段階でパートナーとなることで、われわれは顧客のために、より高機能な種子処理製品を生み出すことができるでしょう」
デュポンと、住友化学の子会社であるベーラントU.S.A.社は、今回の合意における協力を北米地域に焦点を当て実施する。同協力は、将来的に複数の農作物を対象としてグローバルに拡大していく予定。
「この合意は、農業関連企業の協力が、農業生産者の生産性向上につながる最新技術をもたらすことを示すものです。私たちは今後のデュポンとの協力を楽しみにしており、顧客のために、創造性とイノベーションの精神でこの協力を推進していきます」と梅田氏は述べている。
【エコプロ2017】ダウ・ケミカル、東京2020オリンピックに向けた持続可能な取り組みや技術を紹介
ダウ・ケミカルグループは、12月7日(木)~9日(土)に東京ビッグサイトで開催される「エコプロ2017〜環境とエネルギーの未来展」(主催:一般社団法人 産業環境管理協会、日本経済新聞社)に出展する。ダウ・ケミカルは、ワールドワイドオリンピックパートナーであり、国際オリンピック委員会(IOC)の公式カーボンパートナーを務めている。
ダウは、企画展示ゾーン「スポーツと持続可能性ゾーン~東京2020大会に向けて」に出展(ブース番号:S-02)し、オリンピックに関連する過去の採用技術事例やIOCの 公式カーボンパートナーとしての活動を紹介するとともに、東京2020オリンピック競技大会に向けた持続可能な技術(包装技術、建築材料、塗料分野)を展示する。この企画展示ゾーンは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会協力のもと、ワールドワイドパートナーやゴールドパートナー企業により実施される。
【医薬品包材】DNP、「DNPにおい吸着包材」が複数の医薬品メーカーの高血圧治療薬の錠剤用PTP包装材に採用
大日本印刷(株)(DNP)の開発した、アルデヒド系やケトン系の臭気を吸着して取り除く「DNPにおい吸着包材(アルデヒド・ケトン用)」が、複数の医薬品メーカーの高血圧治療薬の錠剤用PTP(*)包装材として採用された。12月から発売される複数の医薬品メーカーの高血圧治療薬に使用される予定。
*PTP(press through pack):表から強く押すと裏から出る錠剤用の包装。
DNPは、2015年9月に時間の経過とともに発生してくる“アウトガス”の特定の臭いを吸着する材料を添加した機能性フィルムを使用し、不快な臭いを吸着する包装材を開発した。今回、その優れた匂い吸着性能について複数の医薬品メーカーから高い評価を頂き、高血圧治療薬の錠剤用PTP包装材として採用された。
【高血圧治療薬の錠剤用PTP包装材について】
高血圧治療薬の錠剤は、水分と反応して不快な臭いのケトン成分を発生させるため、その臭いが患者の服用阻害の要因となっていた。「DNPにおい吸着包材(アルデヒド・ケトン用)」は、特定の臭いを吸着する材料をフィルムに添加した包装材で、医薬品を包装することによって、臭いの成分となるアウトガスをフィルムが吸着して取り除くもの。これによりパッケージ開封時にはほぼ無臭で、臭いによる不快感を軽減できる。
ガス吸着評価実験では、不快臭ケトン成分がフィルムに吸着され、24時間後にガスがほぼ100%フィルムに吸着されることが確認できた。
また、一度吸着した臭気成分は再放出されないため、継続的に効果を得ることができる。医薬品のパッケージに使用すると、消臭剤の小袋を中に入れる必要がなく、消臭剤の誤飲の恐れもない。
「DNPにおい吸着包材(アルデヒド・ケトン用)」は、アルデヒド系やケトン系の臭気のほか、滅菌処理臭や樹脂分解臭などの吸着にも効果がある。
今後は、2020年度で3億円の売上を目指す。
【PESU】ソルベイとApollo Medical社、医療用マイクロチューブ設計を変革する材料としてベラデル HC A-301 PESUの可能性に注目
<ジョージア州アルファレッタ、2017年12月6日>特殊ポリマーの世界的サプライヤーであるソルベイは、Apollo Medical Extrusion社が、ソルベイの医療用グレードのベラデル(r) HC A-301 NTポリエーテルサルホン(PESU)の押出成形により製造された、シングルルーメンおよびマルチルーメンの医療用マイクロチューブの提供を開始したことを発表した。
Apollo社は、カテーテル、内視鏡検査器具、腹腔鏡器具などに用いられる幅広いマイクロチューブを製造している。ベラデル(r) HC A-301 PESUが材料の選択肢に加わることで、剛性、透明性、滅菌が同時に要求されるマイクロチューブ用途で、押出機での設計の自由度が大幅に広がる。
「当社では通常、樹脂製品群を解決の手段として提供していますが、ベラデル(r) PESUについては、いわばアイデアを生み出すものとして捉えています」と、Apollo Medical Extrusion社のSenior Process Engineerを務めるJonathan Jurgaitis氏は述べている。「ポリカーボネートよりも強度に優れ、PEIよりも透明性が高く、ステンレス鋼では不可能なマルチルーメンのマイクロチューブ形状も可能にします」。
Apollo社のある顧客が、ステンレス鋼チューブを切断してから再度溶接して部品を製造していたところ、Apollo社では、これをベラデル(r) HC A-301 PESUの押出成形によってワンステップで製造できたとJurgaitis氏は付け加える。それによって顧客は製造時間とコストを大幅に削減できた。
「PESUは構造部材に使用されるステンレス鋼に代わるものではありませんが、ステンレス鋼では過剰な設計になるような用途では、設計に柔軟性を与える選択肢として活用できます」と、ソルベイのSpecialty Polymers global business unitでbusiness manager for Healthcareを務めるJeff Hrivnak氏は述べてる。「ベラデル(r) PESUは流動性が高いため、複雑な形状の薄肉マイクロチューブの押出加工に最適であり、ソルベイのサルホン系樹脂の中でも最高の剛性を持つ材料です。画期的な医療機器を設計する上で、ベラデル(r) HC A-301 PESUの可能性が俄然注目されているのはそのためです」。
ソルベイの医療用グレードPESU樹脂は、細胞毒性、刺激性、急性全身毒性について、ISO 10993生体適合性規格の下で試験が行われており、また蒸気滅菌や化学滅菌にも対応する。ソルベイは、新しい材料向けに詳細なFDAマスターアクセスファイル(MAF)を提供するとともに、顧客の製品化までの時間を短縮するために、規制に対するサポートも行っている。
ソルベイは信頼性の高いヘルスケア分野の材料サプライヤーとして、25年以上にわたる経験を積んでいる。世界を代表するヘルスケア用途のポリマーのメーカーとして、医療機器、手術用器具、その他医療用装置に用いられる幅広い高機能樹脂を提供している。また、さまざまなインプラント向け医療機器用途に用いられるSolviva(r) 生体材料群も提供している。ソルベイのPESU樹脂製品群のベラデル(r) は、食品サービス、ろ過膜、自動車といった用途で長きにわたって実績を築いている。
【プラスチック添加剤】BASF、12月1日付で値上げ
BASF(本社:ドイツ ルートヴィッヒスハーフェン)は、2017年12月1日付で、プラスチック添加剤のほぼ全ての製品価格を世界的に15%値上げした。なお、既存の契約分については契約内容が優先される。
値上げは以下の製品群に適用される。
・酸化防止剤
・光安定剤、難燃剤、他のプラスチック添加剤
【農業】IRRIとBASF、稲の直播栽培をアジアで促進するために提携
国際稲研究所(International Rice Research Institute, IRRI)とBASF(本社:ドイツ ルートヴィッヒスハーフェン)は、稲の直播栽培用のツールと技術をさらに普及、導入するため、3点の合意書に署名した。今回のパートナーシップでは、IRRIとBASFがマルチステークホルダー方式のDSRコンソーシアムを設立し、非遺伝子組み換えの除草剤耐性を備えた稲の利用に関する研究を進める予定。
直播は最適条件下であれば、手作業で稲を植えるよりも効率が良く、安価な稲作法と考えられている。労働力や水など必要なリソースの量は少なく、他の稲作法と比較すると、温室効果ガスの排出も低減できる。
直播栽培は米国や南アメリカでは広く実践されているが、雑草の蔓延による収量ロスが多いため、アジアでは広範な導入が進んでいない。
今回の新たな研究コンソーシアムでは以下の目的を掲げている。
1.水稲直播栽培、および乾田直播栽培の安定した機械化システムの開発
2.雑草管理ソリューションの調査
3.直播栽培を行うアジアの稲作農家に適した農学実践の構築
また、今回のコンソーシアムにより、IRRIは直播栽培技術を開発し、アジアの環境条件に適した稲の品種を試験できるようになる。官民両セクター、研究組織、NGO、生産者団体の方々もコンソーシアムに加入できる。
IRRIの研究担当副所長であるジャクリーン・ヒューズ氏は次のように述べている。
「世界中の人々に食糧を供給することは、公的機関だけの問題ではありません。民間セクターを含む、あらゆる人々の貢献が必要です。今回のパートナーシップにより、IRRIのような組織がBASFのような企業と、持続可能な開発という共通の目標に向けて緊密に連携することができます」
稲の直播栽培システムにおいて雑草の侵入を確実に防除するため、今回のパートナーシップでは、非遺伝子組み換えの除草剤耐性を備えた稲に関する研究も進めていく。こうした品種は市場に投入後、第三者組織によって稲の生産性、収益性、生態学的な持続可能性への影響が評価されることになる。
アジア太平洋地域でBASF農薬事業本部を率いるグスタボ・パレロシ・カルネイロ氏は次のように述べている。
「今回のIRRIとのパートナーシップにより、当社の領域と専門知識はさらに拡大していくでしょう。それが、Clearfield® Production SystemやProvisia® Rice Systemなどの稲作技術がより迅速かつ広範に普及することに貢献し、米の生産性と稲作農家の収入の向上にもつながると私たちは確信しています。今回の提携により、重要かつ環境的に持続可能な形で、食糧確保に貢献する製品やプログラム支援を提供できることを私たちは嬉しく思います」
稲の直播栽培は他の稲作法に比べ労働力や水など必要なリソースの量は少なく、温室効果ガスの排出も低減できる。
■国際稲研究所について
国際稲研究所(International Rice Research Institute, IRRI)は、国際協定のもと1960年に設立された非営利の自律的な非政治国際組織。共同研究やパートナーシップ、国による農業研究や拡張システムの強化を介し、ライスサイエンスを通して貧困と飢餓を撲滅し、稲の生産者と消費者の健康を促進し、環境の持続可能性を確保することを目指している。
【真空断熱ガラス】パナソニック、プラズマディスプレイパネルの技術を応用して開発
パナソニック(株)エコソリューションズ社(以下、 パナソニック)は、 パナソニックが従来保有していたプラズマディスプレイパネル(以下、PDP)の開発・製造技術を応用することで、 約6mmの薄さで業界最高クラス(※1)の断熱性能を有する真空断熱ガラスの開発および量産化に成功した。総厚約6mmのガラスとしては業界最高クラス(※1)の断熱性能である熱貫流率(Ug値)0.7(W/m2・K)(※2)を実現し、総厚約3cmのアルゴンガス(※3)入りトリプルガラスと同等以上の断熱性能。
PDPは、 真空封着された2枚のガラス間の非常に薄い真空層内で蛍光体が発光することにより画像を表示している。
一般的にガラスを真空状態に保つためには、 真空層内の物質からのガスの発生を抑制しつつ、 高真空状態を維持する真空封着材料技術が必要。パナソニックは、PDPの開発・製造で培った、「真空ガラスパネル製造技術」や、「気密性を維持する鉛フリーの封着材料技術」を保有していた。
今回、パナソニックは真空層内で発生するガスを吸着する薄型のガス吸着剤や、2枚のガラス間に0.1mm程度の隙間を形成する低熱伝導性材料などを新開発することで、優れた断熱性能を持つ真空断熱ガラスを実用化した。さらに独自の工法により、ガラス表面には真空空間を形成する際に必要な排気孔の封止部がない。これによって、フラットですっきりとした製品外観を実現している。また、有害物質として規制されている鉛を一切使用していないため、環境面・安全面でも安心して使える。 なお、今回開発した真空断熱ガラスを、米国エネルギー省の規制強化(※4)対応として、パナソニックの完全子会社である冷凍・冷蔵ショーケースメーカー「ハスマン社」のコンビニ・スーパー向け屋内用自動ドアのガラスに先行納入する。
パナソニックは、持続可能な社会の実現に向け、パリ協定にみられるような国際的エネルギー規制の高まりに伴う、国内外の断熱事業への展開を目指す。
<特長>
1.総厚約6mmのガラスとして業界最高クラス(※1)の断熱性能(熱貫流率Ug値=0.7(W/m2・K))(※2)
2.ガラス表面に真空排気孔の封止部がない、 フラットですっきりした外観
3.環境面・安全面で安心して使用できる鉛フリー真空封着材
※1 ガラス業界における厚さ約6mmのガラスとして、真空断熱ガラス単体の熱貫流率。2017年12月5日現在 パナソニック調べ。
※2 Ugは窓枠などを含まない、ガラス単体での熱貫流率(U値)を表す。熱貫流率とは、部材の熱の伝わりやすさを表す数値。値が低いほど熱は伝わりにくく、断熱性能が優れていることを示す。
※3 アルゴンAr。他の元素と反応しにくく、安定した元素。空気よりも熱伝導率が低いため、複層ガラスに封入することで高い断熱性能が得られる。
※4 米国エネルギー省による省エネルギーに関わる2017年規制(DOE2017)。
【赤外線プラスチック熱溶着】ヘレウスとヤマウチ精機、自動車部品の軽量化に貢献する赤外線熱溶着治具を開発
ヘレウス(株)は、自動車用途を主とする樹脂部品の溶着治具メーカーであるヤマウチ精機(株)と共に、自動車部品の軽量化に貢献する赤外線プラスチック熱溶着技術を確立し、赤外線熱溶着治具を開発し、国内での販売を開始した。
自動車産業では、二酸化炭素の排出削減のため燃費を向上する様々な技術が開発されている。その手段として、自動車の軽量化につながる材料の応用技術開発が精力的に行われている。主な部材である、金属の代替技術として注目されているのが樹脂だが、それには接合技術が欠かせない。接合方法には、一般的に機械、接着剤、溶着の3つあり、そのうちの一つである溶着方法には樹脂部品の加熱が必要となる。さらに、その溶着方法の中でも、振動、超音波、熱の3つの主な方法がある。
今回開発した製品は、熱溶着方式を採用しており、加熱に赤外線ヒーターを用いる。上下あるいは左右に配置された樹脂部品の端面を赤外線ヒーターで輻射加熱する。その後、部品を加圧し、溶着する(図1、2参照)。赤外線ヒーターの特長である早い立ち上りおよび立ち下り性能を生かし、プロセス前の予熱は不要。
【製品の特長】
1. 非接触加熱によるクリーンな方法
赤外線ヒーターは、加熱対象物に照射され吸収されたエネルギーすべてが、赤外線光エネルギーとして加熱対象物に届く。樹脂部品に接触することなく、溶着する。静止状態で加熱するため、樹脂粒子 のくずなどの発生がなく、溶着後の仕上がり品質が向上する。一方、他の溶着方式、例えば振動溶着では、樹脂部品に摩擦熱を起こしそれを溶着するため、摩擦による樹脂の擦りくずが発生し、溶着後の清掃が不可欠となっていた。また溶着端面の仕上がりに行うことができ、意匠性の高い樹脂部品にも用いることが可能になる。
2. 接合強度と耐圧性
同製品を用いてプラスチック部品を溶着する場合、その端面を溶かし圧着する。溶かす面は、厚み縦方向の深部に及ぶため、表面部分ではなく深い部分での溶着となり、確かな強度を得ることができる」。ドイツ 本社の保有する圧力タンクへの導入事例では、元々熱板を用いて約10バールという圧力に耐えられるように溶着されていたのに対し、赤外線熱溶着技術を用いたところ、溶着後の破裂試験では、約28バールの耐圧性があったという報告がある(図 3 参照)。
3. 生産プロセスのエネルギー効率化
赤外線ヒーターは、立ち上りおよび立ち下りの高い性能に加えて、制御性にも優れている。溶着プロセス中における赤外線ヒーターの点灯は、必要な時のみで、端面の加熱後は、速やかにヒーターを消灯する。このため、エネルギーの使用に無駄がなく、タクト運転に適している。さらに、プロセス中に赤外線光エネルギーの出力を制御できるため、ステップ運転にも非常に適している。溶着する材料に依存するが、赤外線ヒーターの点灯は数十秒間程度となっている。
4. 治具の溶着機械への容易な取付け
同製品は、大型な溶着機械そのものではなく、いわばその心臓部に相当するもの。赤外線以外の熱溶着の手法で、毛ばり、くずなどの課題を抱えているユーザーは、機械に取り付けられている治具を同製品に交換するだけで課題を解決でき、高額な溶着機械の投資は不要となる。
本技術の応用材料は、熱可塑性プラスチックをはじめ、がラス繊維プラスチック、その他高融点および低粘度物質、発泡材などにも及ぶ。同社およびヤマウチ精機では、同製品が、現在他の溶着技術を適用しているユーザーのおおよそ3割に適するスマートなソリューションであると考えている。また今後、自動車の軽量化技術開発がますます進展するなか、両社は同製品が自動車などに用いられるプラスチック 製部品の溶着を容易にし、生産工程の効率化に寄与するものと確信。ユーザーへの提案を積極的に行い、自動車の軽量化にプロセス技術面で貢献していく。
ヘレウスおよびヤマウチでは、同製品を、平成 30 年 1 月 17 日(水)から 1 月 19 日(金)まで東京ビッグサイトで開催される第8回クルマの軽量化技術展において展示し、紹介する。
*毛ばり: 溶着後、プラスチックの端面に残る材料のこと。
溶着治具のイメージ。
2分割された樹脂部品の間に設置され、
それらの端面を加熱している様子。
赤外線熱溶着プロセスのイメージ。
プラスチックの端面を赤外線ヒーターで輻射加熱し(写真左、中央)、加圧、溶着している(写真右)様子。
ガラス繊維強化プラスチック製高圧タンクの赤外線熱溶着の事例。
破裂試験では、約10バールという目標に対し、最高 28バールを達成している。
【量子ドットカラーフィルタ用インキ】DIC、NanosysとともにIJ印刷方式によるディスプレイ向けを共同開発中
DIC(株)は、Nanosys, Inc.(本社:米国カリフォルニア州ミルピタス、CEO:Jason Hartlove)とともにインクジェット(IJ)印刷方式によるディスプレイ向け量子ドットカラーフィルタ用インキを共同開発している。共同開発の最新の成果は、12月8日まで仙台国際センターで開催中の「2017 International Display Workshop」(https://www.idw.or.jp/)のセッションMEET4で発表予定。
“量子ドット(Quantum dot:QD)”とは、発光性の無機半導体ナノ粒子。粒子径を変えることで発光色を自在に制御できることから、次世代ディスプレイ材料として注目を集めている。その中でも、“量子ドットカラーフィルタ(QD-CF)”は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイと組み合わせることで、既存のディスプレイと比較して、低消費電力化、色再現範囲拡大、視野角拡大が実現できるデバイス。また、QD-CFを大型ディスプレイへ適用するためには、既存のカラーフィルタの主要製法であるフォトレジスト方式よりも、QD材料のロスを最小化できるIJ印刷方式が理想的。最先端材料であるQDは、その製造コストが高価であることも需要拡大へのハードルとなっているが、IJ印刷方式であれば、より低コストでQD-CFを製造することができる。
QDのディスプレイへの応用は、カドミウム系材料で先行していたが、サステナビリティの観点から、カドミウムフリーQDの開発が強く望まれている。Nanosysは世界有数のカドミウムフリーQDメーカーであるとともに、QD材料のノウハウ、特許を多数所有しているトップQDメーカー。DICは、世界最大のインキメーカーであり、これまで培った分散技術、配合技術、樹脂をはじめとした豊富なインキ材料リソースなどのインキ設計に必要な技術を多数所有している。今般、NanosysのカドミウムフリーQDと、DICのインキ設計技術をコラボレーションすることで、世界初のカドミウムフリーQD IJインキの開発を目指す。QDインキ設計に際して、現在、さまざまなIJヘッドの種類や生産ラインに対応できるよう、熱硬化型インキおよびUV硬化型インキでの開発を進めている。
DICでは、このQD IJインキを、液晶材料、カラーフィルタ用有機顔料に続くディスプレイ材料として、2020年の上市を目指して開発を進める。
【包材】凸版印刷、「GL BARRIER」ブランド初のバリア紙開発、食品・トイレタリー業界向けにグローバル展開
凸版印刷(株)は、世界トップシェアである透明バリアフィルムに代表されるバリア製品ブランド「GL BARRIER」を展開している。このたび、「GL BARRIER」のラインアップに、紙素材でありながらそれ自体がバリア性を有する新製品を開発。「GL BARRIER」初となる紙製品として、2018年春より国内外の食品・トイレタリー業界向けにサンプル出荷を開始する。
同製品は、日本製紙(株)の協力のもと、同社が持つ紙として国内最高水準のバリア性を誇る新素材「SHIELDPLUS®(シールドプラス)」に、凸版印刷が従来培ったノウハウを活用して新たに確立したコンバーティング技術を組み合わせることで実現した、包材向けのバリア紙。従来の紙製包材には、内容物の鮮度を保持するバリア性がないため、アルミ箔などを用いる必要があったが、同製品は紙素材のみでバリア性を発現できるため、製造負荷や環境負荷の削減はもちろん、紙本来の風合いを活かしたパッケージデザインが可能になる。
なお同製品は、12月9日まで開催中の「エコプロ2017~環境とエネルギーの未来展」(会場:東京ビッグサイト)のトッパングループブース、および日本製紙グループブースで参考出品されている。
開発の背景
フードロスの削減やサステナビリティへの取り組みが必然のものとなっている現在、商品パッケージには内容物の鮮度保持や長期保存性などの機能だけでなく、省資源やリサイクル適性など環境負荷の低減が求められている。また、生活者のライフスタイルの多様化や訪日外国人旅行者の増加などにより、商品の顔となるパッケージに求められる役割が増加している。
凸版印刷は1986年からフードロスや省資源化などの社会課題を解決する透明バリア製品ブランド「GL BARRIER」を展開。約45の国と地域で約15,000点に採用されるなど、世界トップシェアを誇っている。
今回、従来展開してきたフィルム製品に加え、紙製品をラインアップに加えることで「GL BARRIER」の対応範囲を拡大。これまで不可能だった、内容物の鮮度を保持できる紙製包材の実現を可能にした。
製品の特長
(1)バリア性を持つ紙製包材を実現
日本製紙の「SHIELDPLUS®」が持つバリア機能と、凸版印刷のシーラント加工技術をはじめとした高いコンバーティング技術を組み合わせることにより、各種包材向けに最適化。紙単体の包材にバリア性を持たせることが可能となった。
(2)製造負荷・環境負荷を軽減
バリア性を付与するために従来必要だったアルミ箔などが不要になるため、製造負荷・環境負荷の軽減が見込める。
(3)環境に配慮した層構成の選択が可能
シーラント層には、生分解性素材やバイオマス素材など、環境に配慮した多様な素材の選択が可能なため、環境配慮型包材としての展開が可能。
(4)デジタルパッケージ向けに最適化
デジタル印刷工程に最適化しているため、優れた印刷加工適性を有す。デジタル印刷の特長であるリードタイム短縮、小ロット対応のメリットを最大化し、高品質なデジタルパッケージを実現できる。 (5)紙本来の風合いを活かしたパッケージデザインが可能
製品はバリア性を有しており、フィルムなどの別素材を用いる必要がないため、紙本来の風合いを活かしたパッケージデザインが可能。
今後の目標
凸版印刷は、製品開発を進め2019年の量産化を目指す。また今後、新たな包材向けバリア紙の開発を続けラインアップを強化。同製品を含む包材向けバリア紙で、2025年に関連受注を含め約100億円の売上を目指す。