帝人(株)は、市販車に適応することができる着脱可能な高機能内外装を開発した。これに伴い、ダイハツ工業(株)の軽オープンスポーツカー「コペン」をベース車に、外装をハッチバック車とし、高機能素材を使用して内装を改装したコンセプトカーを製作し、5月24日~26日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展 2017 横浜」に出展する。
近年、環境意識の高まりや少子高齢化、都市化の進展などにより、スマートモビリティという考えのもと、カーシェアリング、コンパクトカー、自動運転など、自動車を取り巻く環境に大きな変化が現れている。こうした環境において、車体の軽量化や、快適性を追求した高機能内装に対するニーズが一層顕在化している。さらに、内外装のカスタマイズ化や、不特定多数が乗車する環境に対応可能な内装など、ニーズの多様化が進んでおり、これまで以上に選択性や柔軟性のある内外装が求められている。
こうした中、帝人はグループ横断的な取り組みとして、2009年に自動車関連のマーケティング組織を立ち上げ、2017年4月からは組織改編により「自動車事業推進部」と改称し、自動車OEMのニーズに応える部材の開発・提案を強化している。
その1つの成果として、このたび同社が開発した内外装は、スマートモビリティに求められるニーズに対応すべく、軽量化や快適性といった高い機能性は確保しながら、顧客が素材に求める期待価値を、設計や成形加工技術などとの融合により、より高いレベルで具現化し、いわば自動車の内外装を顧客のニーズや好みに応じて「着せ替え」することを可能にした。さらに、将来の自動運転化に向けたHMI*の具体例として、高機能素材を使用したインターフェースも提案していく。
今回は、このような内外装を具現化した1つの形として、オープンスポーツカーである「コペン」をハッチバックに改造するとともに、ウォッシャブルで、夏冬リバーシブルのカーシートなどを装備し、「着せ替え」可能なコンセプトカーを新たに製作した。
*HMI:Human Machine Interfaceの略。人と機械が情報をやりとりする際の装置やソフトウエアなどの総称。機械から人への情報提供としてはメーターやランプなどが、人から機械への指示としてはスイッチやリモコンなどがそれに当たる。
着せ替えコンセプトカーの概要は次の通り。
<外装>
(1)大開口ハッチバック
構造材にCFRP、外板にポリカーボネート/PETを使用することにより、意匠性のカスタマイズとともに、車体の軽量化に寄与する。軽量化により、高齢者でも楽に操作することができ、荷物の積み下ろしを容易にする。
(2)長寿命リア/クォーターウィンドウ
軽量で、透明性が高いポリカーボネートの特徴を活用し、視野角の向上や曲面ガラスなどの意匠性を実現。また、クォーターウィンドウにプラズマCVDハードコートを用いることにより長寿命化を実現。
<内装>
(1)クッション一体型リバーシブルシート
特殊タテ型不織布を芯材として、表皮の片面に涼感素材「クールセンサー」、もう一方の面にあったか素材「サンバーナー」を使用することにより、季節に合わせた機能付与を実現。また、洗濯可能な素材を用いることで、カーシェアリングなど不特定多数が乗車する自動車の快適性向上に寄与。
(2)着脱式ドア/ルーフトリム
特殊タテ型不織布を用いることにより、静音性や、ウォッシャブルによる快適性を付与するとともに、TPOに合わせた意匠性のカスタマイズを可能にした。また、ルーフ表皮に光透過性ニットを使用することで、柔らかな光で室内空間を照らし、解放感のある車内空間を実現。
(3)まるごと洗えるラゲッジスペース
芯材に特殊タテ型不織布、表皮に成形追随性に優れた長繊維不織布「ユニセル」や人工皮革「コードレ」を用いることにより、静音性や防汚・防水性能を付与し、まるごと洗えるラゲッジスペースを実現。
(4)浮き出るインストルメントパネル
開発中の光透過性表皮材を使用することで、スイッチとしての使用時は光源を透過し、使用しない時は高級感や質感のあるパネルとして機能する。
(5)置くだけ通信ダッシュボード
ダッシュボードに二次元通信シート「セルフォーム」を敷くことにより、スマートフォンを置くだけで通信できる簡便性を実現し、シート上の機器のみが通信するため、安全性の高い通信環境を担保する。
帝人グループは、2017年2月に発表した中期経営計画「ALWAYS EVOLVING」において、「外部環境の変化を先取りして変革し、社会の抱える問題の解決に貢献する企業」を目指す。このたびの出展を通じ、市販車への実装に向けた様々なソリューションの提供を図るとともに、設計からデザインに至るまでの自動車OEMのニーズに応える部材提案を一層強化していく。