積水化学工業(株)と住友化学(株)は、このたび、“ごみ”を原料としてポリオレフィンを製造する技術の社会実装に向けて協力関係を構築することに合意した。これは、“ごみ”をまるごとエタノールに変換する生産技術の開発に成功した積水化学と、ポリオレフィンの製造に関する技術・ノウハウを有する住友化学が協力することにより、“ごみ”をポリオレフィンにケミカルリサイクルするサーキュラーエコノミーの取り組みを推進するもの。積水化学は“ごみ”から得たエタノールを、住友化学はそのエタノールを原料としたポリオレフィンを、それぞれ2022年度から試験的な生産を開始し、25年度には本格上市を目指す。
日本で排出される可燃性ごみは、年間約6,000万トン※1であり、そのエネルギー量はカロリー換算で約200兆kcalにも達する。これらの量は日本でプラスチック素材を生産するのに用いられる化石資源の量(年間約3,000万トン※2)およびカロリー換算したエネルギー量(約150兆kcal)に比べて大きいにもかかわらず、その再利用は一部に留まり、多くは焼却・埋立処分されているのが現状。雑多・不均質であり、含まれる成分・組成の変動が大きいという“ごみ”の工業原料としての扱いにくさが、その再利用を阻んできたといえる。
積水化学は、2017年12月、米国ランザテック社と協力して、ごみ処理施設に収集された“ごみ”を一切分別することなく一酸化炭素と水素にガス化し、このガスを微生物により、熱・圧力を用いることなくエタノールに変換する生産技術の開発に成功した。一方、住友化学は石油化学分野において長年にわたり培ってきた技術・ノウハウを生かして、“ごみ“由来のエタノールを原料に、エチレンを経てポリオレフィンを製造する技術開発を行う。
両社の協力によって、このエタノールから身近なプラスチックなどの有機化学素材を生み出すことで、“ごみ”を原料としてポリオレフィンを製造するサーキュラーエコノミーを確立し、新たな化石資源の使用量を削減すると同時に、ごみ焼却時に発生するCO2排出量や廃プラスチックを削減することにより、持続可能な社会の構築に貢献していく。
積水化学は、「エコロジーとエコノミーを両立させて成長し続けることにより、持続可能な社会の実現に貢献するグローバルな環境トップランナーを目指す」との理念の下、環境経営方針を定めている。特に次代に豊かな社会を引き継ぐ上で、「ごみの原料化」は果たすべき使命であり、極めて困難であっても果敢に挑戦すべき課題であるとの信念の下、“ごみ”を資源として使いこなす技術の開発に取り組んでいる。また、自社事業の拡大だけではなく、外部との協業を積極的に推進することで、これまで先人が為し得なかった廃棄物利活用による究極の資源循環型社会という新規コンセプトを具現化すること、また、当該新規コンセプトの環境価値に相応しい社会認知と市場形成を促すことを目指している。
住友化学は、経営として取り組む最重要課題(マテリアリティ)の1つに「環境負荷低減への貢献」を掲げている。ケミカルリサイクルの推進に向けて、環境負荷低減技術に関する新たな開発組織を設置するとともに、オープンイノベーションを積極的に推進することで、廃プラスチック問題を含む炭素循環や温暖化ガス排出削減の技術など、社会課題を解決するソリューションの開発を加速させているところ。ケミカルリサイクル由来のポリオレフィンをユーザーへ提供することで、サーキュラーエコノミーに資する新たなバリューチェーンの創出を目指す。
積水化学と住友化学は、“ごみ”からポリオレフィンを製造する技術の社会実装に向けてサーキュラーエコノミーの取り組みを推進していく。
※1 出典:環境省『廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量実態調査報告書』をもとに積水化学にて試算
※2 出典:プラスチック循環利用協会『プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況』
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【サーキュラーエコノミー】積水化学と住友化学、“ごみ”を原料にケミカルリサイクルでポリオレフィン製造
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