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【塗布型RFID】東レ、塗布型半導体として世界初のUHF帯電波無線通信を達成

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 東レ(株)は、高性能半導体カーボンナノチューブ(半導体CNT)複合体1)を用いた塗布型RFID2)を作製し、塗布型半導体として世界初のUHF帯3)電波での無線通信を達成した。今回の成果は、レジの自動化や在庫管理の省力化など、小売・物流の大幅効率化が期待されているUHF帯RFIDを安価な塗布方法で作製できることを示したもの。今後、塗布型RFIDの製品化に向けた取り組みを加速する。
 RFIDは、長距離通信・一括読み取り等の特長があり、小売・物流における作業効率の大幅効率化が期待されている。しかし、現行のIC4)チップを用いたシリコンRFIDタグは、高温・真空を駆使した複雑なICチップ製造とアンテナへの実装工程が必要なため高コストとなり、安価な商品や使い捨てを前提としたシステムへの普及の阻害要因となっていた。そのため、低コストでICを製造し、実装工程が不要な塗布型有機半導体が注目されているが、性能を示す移動度5)は20cm2/Vs程度と低く、UHF帯RFIDへの適用が長年の課題であった。
 東レは、高性能な半導体CNT複合体を中心とする塗布型素材を活用した塗布型RFIDの研究・開発に取り組んでいます。今回、塗布型半導体としては世界最高レベルを更新する182cm2/Vsを達成した。また、薄膜トランジスタ(TFT)にはプラス電荷が流れるp型とマイナスの電荷が流れるn型があり、CNTは元来p型を示しますが、東レ独自の材料技術により、n型特性の発現に成功し、省電力かつ低コストIC形成に必要なp型およびn型の両TFTを開発した。
 これら新材料を用いて、独自のデバイス技術とプロセス技術により、低コスト塗布プロセスで製造した24ビットメモリ搭載のRFID試作品を作製し、世界初のUHF帯電波による20cmの距離での無線通信を達成した。同社の製品目標である60ビットメモリの実現にも目処が得られており、今回開発した低コスト塗布型RFIDが小売・物流分野に広く普及すると、各物品・商品データの収集や共有化が促進され、サプライチェーン全体の大幅効率化が期待される。
 今後、通信距離を始めとする通信性能の向上とフィルム上での製造技術構築に取り組み、塗布型RFIDの実用化を目指す。なお、研究の一部は、環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」からの助成を受けて実施した。

【用語説明】
2020 01 21 toray1) カーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube)複合体:
炭素原子で構成される直径がナノメートルサイズのカーボンナノチューブと高性能半導体ポリマーとの複合体。純度が高く、構造が揃った高品質なCNTは凝集する力が強く均一な分散が困難となるが、東レは、半導体ポリマーを単層CNTの表面に付着させることで、導電性を阻害することなく単層CNTの凝集を抑制できることを世界に先駆けて見出した。
2) RFID(Radio Frequency Identifier):
 商品に取り付けられた「RFIDタグ」と呼ばれる記録媒体に登録された情報を、無線電波によって直接接触することなく読み書きする技術。3) UHF帯(Ultra High Frequency):860~960MHzという周波数帯を指し、日本ではUHF帯RFIDで使用できる周波数が920MHzと決められている。伝送できる情報量が大きく、小型のアンテナと送受信設備で通信できることから、携帯電話や業務用無線を初めとした多種多様な移動通信システムを中心に、地上デジタルTV、空港監視レーダーや電子タグ等、幅広く使用されている。
4) IC(集積回路):
 TFT、ダイオード、抵抗、配線などの集合体で、情報処理や情報記録の機能を有する電子回路。コンピューター、無線機器、家電製品、自動車など、ほとんどすべての機器やシステムに使用されている。
5) 移動度:
 半導体中の正孔・電子などのキャリアの動きやすさの指標。移動度が大きいと高速応答が可能になり、またTFTサイズを小さくできるため微細化にも有利となる。


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