東京都市大学工学部機械工学科の藤間卓也准教授ら研究チームは、多孔質層を持つガラス(HNLガラス(※1))に、導電性プラスチックPEDOT(※2)を結合させた有機透明導電材料を開発した。
同材料は、タッチパネルやテレビ画面の電極材料として利用が可能で、現在主流の酸化インジウムすず(ITO)が有する材料調達と製造コストの課題を解消する。
なお、この成果は、横浜市で開催された国際ガラス会議「ICG Annual Meeting 2018」(会期:9月23日~26日)で発表された。
■成果のポイント
・多孔質層を持つガラス(HNLガラス)の表面に、直接PEDOTを成膜することで新たな有機透明導電材料を開発した。
・従来、ガラスとPEDOTの付着性を高めるために用いていた絶縁性のある助剤(PSS)が不要となり、導電性が約4倍に向上した(同じ光透過率で比較)。
・現在、タッチパネルやテレビ画面の電極材料として主流の、高価で複雑な生成過程が必要なITOに代替できる材料として実用化を目指す。
■概要
タッチパネルやテレビ画面などに利用できる代表的な導電性プラスチックPEDOTは、透明なガラス表面などに塗布して電極として利用する研究が進められている。これまでガラスと剥がれやすいPEDOTとの接合強度を高めるため、別の有機材料であるPSSが助剤として混ぜられてきました。ところがPSSは絶縁性のため、電極の導電性を下げる原因となっていた(図1)。そこで、独自開発している多孔質層を持つガラス(HNLガラス)を用いることで、PSSを使わずにPEDOTとガラスを強固に結合させた有機透明導電材料を開発した(図2)。電極材料として主流である、高価な酸化インジウムすず(ITO)に代替できる材料として実用化を目指す。
現在、スマートフォンや液晶テレビ、有機ELテレビなどのガラス基板には、画像を制御する電極として無機材料のITOが広く使われている。しかし、構成元素のインジウムは希少金属(レアメタル)で、将来的な調達や価格面に改善の余地があります。さらにITOの成膜には真空装置が必要なため、製造コストを高めている。一方、有機材料は一般に安価な原料から容易に化学合成できる上、無機材料に比べて屈曲性が高いため、タッチパネルなどに用いた時に衝撃に強く、製品形状の自由度も高くなる。また、PEDOTの成膜は常温で、真空装置も不要です(通常の圧力環境で成膜可能)。しかし、これまでのPEDOTの導電性は、同程度の光透過率を持つITOに比べて一般的に1~2桁低いものあった。
今回、多孔質層を持つガラス(HNLガラス)を用いてPSSを不要にすることで、導電性を従来のものに比べて約4倍に向上させました(同じ光透過率で比較した場合)。今後、成膜技術の改良で導電性をITO並みに高めていく。
※1 HNLガラス:Hierarchically Nano-porous Layerの略称。
2014年に独自開発し、超親水性、防曇(ぼうどん)性・防汚性、低反射性といった特性を持つ
※2 PEDOT:Poly(3,4-EthyleneDiOxyThiophene)の略称。導電性高分子の一種で、透明性、安定性に優れ、広く使用されている。