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【成長戦略】BASF、CO2排出量増加を伴わない高収益成長目指す

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  BASFは11月20日、新しい企業戦略を発表した。「新しい戦略により、BASFを成長軌道に乗せます」とBASF取締役会会長のDr.マーティン・ブルーダーミュラーは述べている。近年の前向きな動きとして、「2012年以降、減価償却費、償却費および特別項目控除前の営業利益は、平均で年率8%増加しており、固定費の増加率3%を大きく上回っている」。BASFの収益成長は、年率3.7%増の世界の化学品生産を上回っている。また、近年のフリー・キャッシュ・フローは堅調に推移し、直近では15.4%と高い投下資本利益率(ROCE)を達成した。新しい戦略では、これらに加え、特に売上高と販売量の拡大を目指す。
 BASFは有機的な事業成長に注力している。成長を加速させるために、BASFはこれまで以上に顧客志向を強化し、差別化製品を開発していく。また、より迅速で、かつより柔軟になることを目指し、BASFは社内組織とプロセスを大幅に簡素化し、ポートフォリオを見直し、フェアブント(統合生産)を強化する。「BASFは、よりお客様中心で、機敏に動けるような組織に変革します」とブルーダーミュラー氏は述べている。
 アジア市場は、BASFが既に十分に市場での地位を確立しているため、成長戦略において重要な役割を果たしている。化学品市場における中国のシェアは40%以上にのぼり、中国は世界最大の市場で、世界の化学品生産の成長を牽引している。「2030年までに、中国の市場シェアは50%近くまで増加します。私たちは、この成長の波に乗りたいと考えています」とブルーダーミュラー氏は述べている。「広東省の湛江市に開設する新しいフェアブントサイト(統合生産拠点)や、南京の拠点の拡大により、このダイナミックな市場におけるBASFの成長が大幅に向上します」。

BASFは野心的な財務・非財務目標を設定
 BASFは新たな戦略で、財務および非財務面での野心的な目標を追求している。最高財務責任者および取締役会副会長のDr.ハンス‐ウルリッヒ・エンゲル氏は、「私たちは市場を上回る成長をしたいと考えており、世界的な化学品生産の成長を超える販売量を目指しています」と語る。
 BASFは、収益性をさらに向上させたいと考えており、特別項目控除前EBITDAを年率3%から5%増やすことを目指す。「さらに、BASFは毎年、資本コスト率を大幅に上回る投下資本利益率を達成することを目指します。これは、私たちが真の付加価値を生み出すことを意味します」。
 BASFはまた、投資家にとって目を引く存在であり、化学業界と比較して平均以上の価値を投資家に提供することを目指す。「そのため、好調なフリー・キャッシュ・フローを背景に、1株当たりの配当を毎年増加させていきたいと考えています」とエンゲル氏は述べている。
 これらの野心的な目標の達成に向けて、BASFは2019年から2021年まで、新しい「エクセレンスプログラム」を実施する。2021年末から、毎年20億ユーロの利益への貢献を目標とする。このプログラムには、生産、物流、研究開発、デジタル化やオートメーション化のための施策、および組織変更が含まれる。
 BASF はまた、非財務面においても野心的な目標を設定した。ブルーダーミュラー氏は次のように述べている。「BASF は、年間生産量の大幅な増加を目指しますが、温室効果ガス排出量については、2030年まで現在の2018年レベルに抑えることを約束します。つまり、私たちが温室効果ガスの排出を有機的な成長から切り離す(デカップリング)ということです」。この目標には、中国南部の広東省に新たに建設するフェアブント拠点など、計画されている大規模な投資も含まれる。これを達成するために、BASFは、プラントの管理、効率性、統合性を改善し、再生可能エネルギーによる電力を可能な限り購入する。「既にプラントの技術水準が非常に高いことを考えると、これは非常に野心的な目標であり、これまでとは違う方法をとるには、並外れた創造性が必要となるでしょう。そのためには、ドイツ、欧州、そして世界中で適切な規制環境が必要です」とブルーダーミュラー氏は述べている。
 BASFの生産量は1990年と比較して倍増しているが、温室効果ガスの排出量は絶対値で50%減少している。BASFは、2030年までCO2排出量を増やすことなく成長するという目標に加えて、2025 年のアクセラレーター製品の売上高を約220億ユーロとしたいと考えている。
 アクセラレーターとは、バリューチェーンにおいてサステナビリティに大きく貢献する製品。「しかし、社員がいなければこうした目標は達成できません。そのため、今回初めて社員満足度の目標を設定しました。80%以上の社員に、BASFでは自身が成長でき最高の成果を上げることができると感じてもらいたい」とブルーダーミュラー氏は述べている。

目標達成のための活動領域
 「お客様にはBASFで新しい経験をしていただきたいと考えています」とブルーダーミュラー氏は述べている。そのためにBASFは、事業をより効果的にかつ効率的に運営でき、顧客志向をさらに推進できる組織体制にする。「私たちは、組織全体でお客様に対する情熱を高めていきたいと考えています。お客様のニーズをより的確に予測し、これまで以上にそのニーズを満たしていきたいと思っています」とブルーダーミュラー氏は述べている。化学に関するBASF独自のノウハウと顧客のコンピテンシーを融合させることで、有益で責任あるソリューションの開発が可能となる。この目的のため、BASFは、特に顧客への透明性を高め、顧客サービスを強化し、相互成長の可能性を探求する一連の施策を開始する。BASFは、ポートフォリオ、人材、イノベーション、サステナビリティ、生産体制、デジタル化の各分野に注力する。

BASFの事業セグメント構造のさらなる発展
 BASFは事業セグメント構造の見直しを行い、2019年初めから新体制を導入する。ブルーダーミュラー氏は次のように述べている。「ポートフォリオを強化し、資本配分を成長事業領域に集中させます。新体制により、事業の運営方法、バリューチェーンの重要性、フェアブントが果たす役割についての透明性の向上を図ります」。
 2019年1月1日付での新組織は6つの事業セグメントで構成され、それぞれ2つの事業本部から成る。例外としてアグロソリューションは、引き続き1つの事業本部から成るセグメント。
 ケミカル:石油化学品、中間体
 マテリアル:パフォーマンスマテリアルズ、モノマー
 インダストリアル・ソリューション:ディスパジョン & ピグメント、パフォーマンスケミカルズ
 サーフェステクノロジー:触媒、コーティングス
 ニュートリション&ケア:ケア・ケミカルズ、ニュートリション & ヘルス
 アグロソリューション
 BASFは、競争が激化する市場環境において、自社の事業を競合他社に対して明確にポジショニングし、高いパフォーマンスの実現を目指す。
 BASFは、主に設備投資やイノベーションを通じた有機的成長に焦点を当てるが、必要に応じて買収も行う。「私たちが注力するのは、プロセスを効率的で信頼性の高いものにすることです。このような地位を獲得できない場合は、その事業から撤退することもあり得ます」とブルーダーミュラー氏は述べている。

フェアブントが中心的な役割を果たす
 フェアブント(統合生産)は引き続きBASFの中心的な役割を果たす。フェアブントによる物理的、技術的、市場関連、デジタル面での利点により、BASFのポートフォリオには独自のメリットがある。フェアブントによりBASFはすべての事業セグメントにおいて技術的な優位性を発揮しており、また、幅広いポートフォリオにより顧客を効果的に支援することができる。
 化学のバリューチェーンはフェアブントだからこそ効率的に機能する。フェアブントでの統合生産のおかげで、BASFは原材料、エネルギー、物流などで年間10億ユーロ以上のコスト削減を達成しており、同時に排出量を大幅に削減している。BASFは今後も、フェアブント体制を構築・発展させ、より少数で効率性の高い拠点でのオペレーションに統合し、業界をリードしていく。

パフォーマンスの高い組織づくり
 変革を成功させるため、BASFは社内プロセスや社員の協力体制の改善にも取り組んでいる。戦略を成功させるための鍵は社員にある。BASFは、柔軟な組織を構えるとともに、社員が差別化されカスタマイズされた製品やサービスを顧客に提供する上で必要なツールやスキルを身に着けられるよう支援する。「私たちがより迅速で、より機敏になることにより、さらさらに効率的で効果的になることが不可欠です」とエンゲル氏は述べている。
 BASFは、組織のさらなる発展の一環として、サービス、研究開発およびガバナンスの分野において、よりスリムな構造を構築している。BASFは、事業セグメントに間接部門の業務のかなりの部分を組み込むことで、社員がこれまで以上に顧客に寄り添える体制を整える。さらに、残りの業務および研究活動の更なる効率化を図る。この再編により、世界中で約2万人の社員が直接的または間接的に影響を受けることになる。「これらの施策により、事業の差別化が進み、生産性が大幅に向上することを期待しています」とエンゲル氏は述べている。
 また、必要に応じて、より大きな意思決定権限がビジネスユニットに委譲される。「これは起業家としての自由度を与えることを意味しますが、同時に明確な責任を割り当てるということでもあります」とエンゲル氏。これにより、ビジネスユニットの有効性と顧客満足度の向上を図る。BASFが各国の潜在的な市場機会を確実に捉えるため、補完的な市場開発モデルを導入する。各事業本部は、自分たちがどのローカルマーケットに注力するのか、また、どのマーケットにおいて権限をローカルの組織に引き継ぐのかを決定する。さらに、BASFは、主要なプロセスをよりシンプルにするためのプロセス簡略化タスクフォースを設置した。BASFはプロセスを簡素化・短縮化し、意思決定の迅速化を図る。

革新的なソリューションで課題を解決
 BASFは常に、顧客にとって最も魅力的なイノベーションの開発に取り組んできた。「競争力やお客様との関係性は、優れたプロセスとテクノロジーによって実現します。私たちが新たに戦略的に連携することで、研究部門をビジネスやお客様のニーズにもっと近づけていきます」とブルーダーミュラー氏は述べている。BASFの研究部門と開発部門は組織的により密接につながり、顧客のニーズに焦点を当てることになる。これにより、製品を市場に投入するまでの時間を短縮し、BASFの有機的な成長を促進することができる。

トップクラスの生産体制
 オペレーショナルエクセレンスは、BASFの重要な強みの1つ。「お客様は、製品が仕様通り、かつ納期通りに納品されることを望んでいます。そのためには、安全で効率的かつ信頼性の高い生産を行わなければなりません」とエンゲル氏は述べている。BASFはプラントの信頼性を高め、柔軟性を向上させる。このため、BASFはオペレーショナルエクセレンスを向上させるための予算を年間4億ユーロに増額した。これは近年の平均値を大きく上回っている。

全社的なデジタル化の推進
 デジタル化は、BASFの資産のライフサイクルにおいて、前例のない利点をもたらす。例えば、さまざまなプロセスや投資アイデアをコンピュータ上でシミュレーションできるため、コストを最小限に抑えることができる。また、拡張現実は、社員の日常業務をサポートするツールとして既に利用されている。BASFは2022年までに世界中の350以上のプラントでプロセスをデジタル化することを目指している。
 デジタル化はBASFのビジネスに不可欠な要素となる。BASFは、デジタル化によって顧客に付加価値を提供し、事業を拡大し、効率性を向上させる。また、スーパーコンピュータ「Quriosity」をより集中的に使用することで、研究開発の創造性も高まる。BASFがデータから確実に最高の価値を得られるよう、BASFはデータの可用性と品質をさらに向上させ、バックエンド・システムを接続するために必要なインフラを提供する。そして、意思決定をサポートするために既存のデータを活用していく。BASFは、デジタル化の取り組みにおいて、スピードと影響力、そしてリーチを得て、化学業界をリードしていく。


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