DIC(株)は、三次元成型品に回路を形成する技術の1つであるレーザー・ダイレクト・ストラクチャリング工法(以下、LDS)に使用可能なポリフェニレンサルファイド(PPS)コンパウンドの開発に成功し、新製品「LP-150-LDS」のサンプル出荷を開始した。同工法はドイツのプリント基板加工装置メーカーLPKF Laser & Electronics社(以下、LPKF社)が有する技術であり、材料として使用するためには同社の認定が必要になるす。このたびの開発品は、2016年7月にPPSコンパウンドとしては世界で初めて認定試験に合格し、LDS適合材料としてリストに登録された。
LDSは、同社が指定する有機金属化合物を分散させた樹脂コンパウンド成型品の表面に、レーザー照射することにより粗化・活性化させ、その照射部にのみ選択的に無電解銅めっきで回路を描画する技術。レジストを利用したエッチング工程なども必要とせず、三次元成型品表面に回路を容易に形成することができる。デザイン性の高さから、部品の統合や小型化が可能となるため、欧州を中心に自動車部品、医療機器などで利用される部材として用途が拡大している。
LDS適合材料には既にポリアミド、液晶ポリマ(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチックが認定されている。また、優れた耐熱性、耐薬品性を有するため、用途の大幅な拡大が期待できるPPSについても各社で検討が進められてきたが、これまで認定基準を満たせず、材料として使用できなかった。
DICは、長年にわたり樹脂からコンパウンドまでの一貫生産を行う過程で培ってきた樹脂設計、コンパウンド技術、配合技術を駆使することで、認定基準をクリアした。同開発品は、PPSの有する高い耐熱性、耐薬品性を維持しているため、これまでのLDS適合材料では対応できなかった自動車部位などへの部品展開が可能になる。更なる部品数の削減や軽量化が求められている自動車部品向けに関しては、このたびの開発品およびLDS技術に大きな期待が掛かっている。
DICは、先に発表した中期経営計画「DIC108」において、PPSコンパウンドを成長牽引事業の1つと位置付けている。アジアパシフィックに続き、中国(昨年)と欧州(今年)への技術センターおよび技術サービスセンターの設置や中国でのPPSコンパウンド工場新設などにより、グローバルで技術サービスや供給体制を充実させるとともに、同開発品などの差別化製品の研究開発を進めることで、トップシェアの地位を磐石化する。
DICグループのDIC Europe GmbH(本社:ドイツ)は、同開発品を10月19日~26日までドイツ・デュッセルドルフで開催される世界最大の国際プラスチック・ゴム産業展「K 2016」に出展し、PPSの新たな市場を開拓する。
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【PPSコンパウンド】DIC、三次元回路形成方法に適合した「LP-150-LDS」開発
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