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【CFRP】東レ、寸法精度向上と省エネの両方を実現可能な新規成形技術を開発

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 東レ(株)は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)の成形方法において、寸法精度の向上と省エネの両方を実現可能な新規成形技術を開発した。今後、この新技術の実証を進め、省エネかつ生産性向上が求められる航空機用途をはじめ、自動車、一般産業用途向けCFRPへの幅広い展開をはかり、CFRPの需要拡大を推進していく。

2018 03 28 toray

図.新規開発した成形システムの模式図

 CFRPは、通常オートクレーブと呼ばれる高温圧力釜やオーブンを用いて、所定形状の金型上にプリプレグ(シート状中間素材)を配置した後、温風によって加熱することによって、プリプレグの樹脂が硬化、成形される。温風による加熱は雰囲気加熱であるために熱伝達が悪く、また熱容量の大きい金型に熱を奪われるため、昇温に時間を要し、成形時間が長くなるという課題がある。

 また、部位によって厚さが異なる大型・複雑形状の部材では内部温度の制御が難しく、残留応力分布が不均一となるため、硬化後の部材が大きく変形するという問題がある。そのため、航空機主翼などの最終製品組立時には、シムと呼ばれる充填材の加工、取り付け等に膨大な労力が必要であり、部材成形に要する以上に長い作業時間を要する場合がある。

 これに対して、今回開発した成形技術は、所定数の面状ヒーターを金型表面に配置し、真空圧下において部材への接触加熱を用いることにより、加熱の効率化による省エネを実現する。さらに、各ヒーターを個別制御し、各部位に最適な温度分布を付与することにより残留応力の分布を均一化し、部材をより設計通りに近い形状、寸法に成形することができるので、上記の問題が解消し、組立時の労力および作業時間の低減が期待できる。

 この加熱システムを有効に制御するため、当社は愛媛大学と東京理科大学との共同研究を通じて部材の変形予測とヒーター温度最適化シミュレーションをそれぞれ確立、両者を融合することによって、部材の成形時間と寸法不良を最小化できる加熱条件設計プログラムも合わせて開発した。現在、試作成形装置を導入し、実証試験を進めていく。

 部材の形状や寸法にもよるが、従来のオートクレーブやオーブンでは、航空機向けなどの大型CFRP部材の成形には、約9時間を要していた。これに対して、今回開発した成形方法では、成形工程における型の占有時間を4時間程度にまで短縮できる効果が見込める。また、空気などの加圧・加熱媒体が不要となることで、従来の成形方法に対して約50%の省エネ効果や、寸法精度の向上によって、シムを用いる組立時の修正作業時間の削減効果も期待できる。

 なお、同成果の一部は、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的構造材料」(管理法人:科学技術振興機構)により得られた。

 東レは、昨年4月からスタートした新たな中期経営課題“プロジェクト AP-G 2019”において、炭素繊維複合材料事業の重要課題として「成長分野での事業拡大、新製品開発による新規需要の創出」を掲げている。今後も、CFRPの一層の高性能化やプロセス加工性改善を通じて新製品の開発に取り組んでいく。


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