(株)スギノマシン(富山県魚津市、代表取締役社長:杉野太加良)は、既に商品展開中の同社製セルロースナノファイバー(CNF)[商品名:BiNFi-s(ビンフィス)セルロース」を独自に粉末化した、補強用フィラー(充填材)*1向けのBiNFi-sドライパウダー(BFDP)を新規に開発した。
また、公立大学法人富山県立大学(富山県射水市、学長:石塚勝)の真田教授・永田客員教授グループとの共同研究で、BFDPと樹脂を複合化した場合に、特異な強度特性が現れることを発見した。
これらの成果は、NEDO*2の助成事業によるものであり、関連特許として出願済み。同社は、2018年4月以降にBFDPのサンプル提供を開始し、樹脂以外にも、塗料、電子材料、化成品や自動車部材等への応用実績を蓄積していく予定。なお、2月14日から16日まで東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2018」のスギノマシンブースおよびNEDOブースにおいて、本開発成果のサンプル品(図1,2)等を展示する。
図1 BiNFi-sドライパウダー(BFDP) 図2 BFDP/PP複合体ペレット
CNFは、植物由来のセルロースを直径約20nm、長さ数μmにほぐしたナノ繊維素材。高強度・低熱膨張・高比表面積・軽量等の優れた特長を持ち、世界中で注目されている。しかし、CNFは固形分1~10wt.%程度の水に分散したゲル状(スラリー)で販売提供されているため、疎水性の樹脂やゴム等への複合化には化学変性をはじめ溶媒置換、脱水、乾燥等の多くのノウハウが必要で、複合材料への応用は容易ではない。
また、CNFをスラリーで疎水性の樹脂やゴム等と複合化すると、母材中でCNFの疑集や、母材とCNF界面の接着不良を起こすため、均―な複合化は困難であり、さらに、単純に加熱によって乾燥させると、CNF同士が強固に凝集するため母材中に分散しない、という課題があった。
同社は、これらの課題を解決するために、既に商品展開中のCNF[商品名:BiNFi-s(ビンフィス)セルロース]のスラリータイプを、特別な化学変性等を施すことなく、乾燥工程で凝集を抑制しながら粉末化する手法を見出し、補強用フィラー(充填材)向けのBiNFi-sドライパウダー(BFDP)を新規に開発した。その結果、樹脂やゴム等との混練工程でBFDPが凝集することなく、高い分散状態で複合化可能となる。
さらに、同社は富山県立大学との共同研究で、BFDPを様々な条件でポリプロピレン(PP)樹脂に添加し複合化したところ、特定の条件ではBFDPが僅か1wt.%という少量添加にも関わらず、樹脂の引張り伸び*3と破断時の引張り応力*4を、未添加のものに比べ大幅に向上できた。
この結果はこれまでに報告されていない特異な強度特性であると言える。今回の開発はNEDO助成事業「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」の支援を受け、富山県立大学と共同研究を行った成果であり、関連特許を出願済み。
同社は、2018年4月以降にBFDPのサンプル提供を開始し、樹脂以外にも、塗料、電子材料、化成品や自動車部材等への応用実績を蓄積していく予定。
*1【フィラー(充填材)】
高物性や高機能、あるいはコストダウンを実現するために添加される充填材の総称で、様々な複合化材料の鍵となる素材。(フィラー研究会ホームページより)
*2【NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)】
日本最大級の公的研究開発マネジメント機関として、経済産業行政の一翼を担い、「エネルギー・地球環境問題の解決」および「産業技術力の強化」の二つのミッションに取り組む国立研究開発法人。
*3【引張り伸び】
引張試験において、材料が破壊されずに引き伸ばされる性質を示すもの。
*4【引張り応力】
物体が原形を保つために抵抗しようとする力。