水素の利用推進に取り組む民間企業10社は、中部圏における水素の需要拡大と安定的な利用のためのサプライチェーンの構築を目指し、水素の大規模利用の可能性を検討する「中部圏水素利用協議会」(以下、協議会)を立ち上げた。この協議会は、石油・ガス・電力などのエネルギー、石油化学、自動車、金融など様々な業界の企業が参画し、産業界全体で横断的に検討を進める日本で初めての取り組み。
<中部圏水素利用協議会の参画企業(2020年3月6日時点。50音順)>
出光興産(株)
岩谷産業(株)
JXTGエネルギー(株)
住友商事(株)(事務局)
中部電力(株)
東邦ガス(株)
トヨタ自動車(株)(事務局)
日本エア・リキード合同会社
(株)三井住友銀行(事務局)
三菱ケミカル(株)
現在、地球環境問題においては、CO2の排出量削減による地球温暖化の抑制が喫緊の課題であり、これを解決するためには、持続可能で低炭素なエネルギー利用の促進が重要。そのため日本政府は、水素を将来の重要なエネルギーの1つとして位置づけ、「水素社会」の実現に向けた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(以下、ロードマップ)を策定した。この中で、当面の目標として、2030年に年間30万トンの水素を利用するという大規模な水素供給システムの確立が掲げられている。
こうした状況の中、水素の製造・供給サイドでは、様々な企業により社会実装に向けた新たな技術や方策の実証が進みつつあるが、水素を利用する需要サイドでは、大規模な使い方や水素利用量の拡大についての検討が個社レベルに留まっているのが現状。そこで、このほど、中部圏で産業界を横断した協議会を立ち上げ、大規模な水素利用の具体的な方策を検討し、供給サイドと連携を図りながら、社会実装に向けた取り組みを進めていくこととした。
同協議会では、当面の目標である「2030年に水素利用量年間30万トン」に弾みをつけるために、2020年代半ばからの社会実装開始を目指して、活動に取り組んでいく予定。
*海外からの水素大規模輸送が始まることを想定した、中部圏での水素受入拠点から需要サイドまでのサプライチェーンの検討
*発電・石油産業等の各製造業の企業活動やモビリティでの利用など、中部圏全体での水素利用量のポテンシャルの試算
*各々の需要サイドで受け入れ可能な水素コストの検討
*実現に向けた技術面・金融面・制度面での課題を整理し、必要な施策と社会実装につながる事業モデルを提案
政府が策定したロードマップの実現に向けては、産業界での技術開発、コスト低減努力のみならず、金融界との連携による資金供給スキームの構築、政府のリーダーシップによる制度・インセンティブ設計、規制改革等の三位一体の活動が必要であり、同協議会はその一翼を担っていく。そして、同協議会での取り組みが中部圏のみならず日本各地に拡がっていくよう、政府とも連携して官民一体となって進めていく。
【エネルギー】中部圏水素利用協議会設立、中部圏において水素の大規模利用の可能性検討着手
【スチレン系樹脂】旭化成、「スタイラック」「エステロイ」事業から撤退
旭化成(株)は、スチレン系樹脂であるAS樹脂、ABS樹脂およびACS樹脂(製品名:「スタイラック」、「エステロイ」)事業からの撤退を決定した。
(1)背景
同事業は、1962年の川崎工場(現 川崎製造所)におけるAS樹脂工場稼働により事業を開始し、1964年のABS樹脂工場稼働(1978年に停止し、水島工場に統合)、1995年のACS樹脂事業の開始とあわせて、これまで約58年間にわたり、国内外の顧客へ製品を提供してきた。
また、2015年には、国内市場の大幅な需要減などによる事業損益の悪化を受け、1967年に製造を開始した水島製造所のABS樹脂工場を閉鎖し、事業構造の改善を図ってきた。
しかしながら、グローバルABS市場において当社製品の優位性を発揮することは容易ではなく、また、将来的に拡大戦略を描くことも難しいとの判断から事業撤退を決定した。
同社は、中期経営計画"Cs+ for Tomorrow 2021"において、経営資源の優先投入や再配分を進めることで事業ポートフォリオの転換を図り、サステナブルで高付加価値な事業体となることを目指している。今後は同事業の経営資源を当社の他の注力事業へと振り向ける。
(2)今後の対応
1)工場について
2021年3月末 停止予定
2)営業活動について
2021年3月末 終了予定
3)同事業に携わる従業員について
原則として他の事業に再配置することを予定。
(3)撤退事業の概要
対象製品:AS樹脂、ABS樹脂およびACS樹脂(製品名:「スタイラック」、「エステロイ」)
製品用途:OA、家電、自動車および雑貨など
製造拠点:川崎製造所内AS工場(神奈川県川崎市)
生産能力:非公表
【Package】ヤクルト本社、「クイックチャージ」の容器に薄肉ラベルやバイオマスインキを採用
(株)ヤクルト本社は、熱中症対策に適したスポーツドリンク「クイックチャージ」の容器をリニューアルし、容量を555mlに増量して、2020年4月6日に発売する。「クイックチャージ」の2020年4月から2021年3月までの販売目標は、80千ケース。
【リニューアルのポイント】
■容量を500mlから555mlに増量する。
■環境に配慮し、ラベルは他の当社PET製品で使用しているラベルと比べ、5μm薄い肉薄ラベルを使用する。また、容器形状を活かすことで、現行品から高さを45%短縮したショートラベルとする。
■インクには、生物由来の資源(バイオマス)からインキ成分を抽出して製造した、環境に優しいバイオマスインキを使用している。
■ラベルデザインは現行品のイメージは踏襲しつつ、商品名、商品特性が目立ちやすいデザインとする。
【商品特長】
■スポーツシーンだけでなく、日常の様々なシーンでの水分補給・熱中症対策に適した飲料である。
■発汗により失われた水分およびミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)を素早く補給できるハイポトニック(低浸透圧)設計。
■熱中症対策に適したナトリウム含量(40mg/100ml(※))。
■甘すぎず、すっきりとした後口のグレープフルーツ風味。熱中症の対策として小分け飲みした際に、常温でもおいしく飲用できる。
■アレルギーフリー(アレルギー物質28品目を含まない)で、安心して飲用できる。
■カロリーを気にする方でも手に取りやすい、低カロリータイプ(13kcal/100ml)。
※ 厚生労働省が定める「職場における熱中症予防対策マニュアル」において、熱中症予防として、40~80mg/100mlのナトリウムを含んだスポーツドリンク等の飲用が推奨されている。
【電気絶縁材料】日本製紙パピリア、デュポンと連携して北海道勇払事業所に合同会社を設立
日本製紙グループの日本製紙パピリア(株)は、米国デュポン社(Du Pont de Nemours, Inc.)の100%子会社である、デュポン・スペシャルティ・プロダクツ(株)と共同で、「デュポン日本製紙パピリア合同会社」(以下「DPNP」)を設立し、高機能材料であるノーメックス紙を生産することで合意した。DPNPは、日本製紙 北海道工場 勇払事業所(北海道苫小牧市、以下「勇払事業所」)の敷地・建物の一部を利用して生産設備を設置する計画で、2021年度中の営業運転開始を予定している。
日本製紙株式会社 北海道工場 勇払事業所
優れた電気絶縁性・耐薬品性・機械特性と素材本来の難燃性を有するノーメックス紙は、幅広い電気絶縁用途に適している。今後も世界中で広がる自動車の電動化においては、電気駆動モーターを搭載した xEV(電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・ハイブリッド自動車・燃料電池自動車)を支える重要な技術である。パワーエレクトロニクスやバッテリーシステムにおいても耐熱特性により重要な部品を保護している。また、航空機の内外装の構造材としても、ノーメックス紙製のハニカムが重要な役割を果たしている。
同社グループは、中期経営計画のテーマとして、「洋紙事業の生産体制再編成と自社設備の最大活用」を掲げている。このたびDPNPが開始する事業は、市場の成長が見込める分野への事業構造転換へ繋がり、勇払事業所の土地と設備、さらには製紙工場で培った紙加工の技術・ノウハウを有する人材の活用により、地元・北海道の発展に寄与していく。
デュポン日本製紙パピリアの概要
会社名 デュポン日本製紙パピリア合同会社
所在地 北海道苫小牧市字勇払(日本製紙北海道工場勇払事業所内)
設立年月日 2020年1月6日
事業内容 電気絶縁材料「ノーメックス紙」の生産
従業員数 100名以上
【重金属吸着シート】凸版印刷、ケー・エフ・シー、イーエス総合研究所と「パデムシート」を共同開発
凸版印刷(株)と(株)ケー・エフ・シー、(株)イーエス総合研究所は、土中に含まれる有害物質である重金属を吸着し流出を防ぐ「パデムシート」を共同で開発し、施工業者に向けて3月から販売を開始する。
土壌から流れ出る溶出水に基準値を超える重金属が含まれていた場合、その土壌は適切に処理することが義務づけられている。同製品は、トンネル施工や建設工事などの際に発生する、自然由来の有害物質である重金属を含有する土壌を処理するための、吸着材を均一に充填したシート状の製品。重金属を吸着して処理をする「吸着層工法」において土壌の下敷きとして使用し、吸着材が均一に充填されているため重金属が漏れ出る心配がなく、高い安全性を実現する。土中の重金属のみを吸着するため、溶出水の濃度を基準値以下にすることが可能で、河川や海への有害物質の流出を防ぐことができる。また、現場で重機を使用せずにそのまま広範囲に敷設することができるため、法面(※1)への施工もより簡易的となり作業効率の向上につながる。
■背景
トンネル施工や建設工事などで土壌を掘り起こした際、自然由来の有害物質である重金属が雨などにより河川や海などに流れ出すことがあり、環境汚染につながるとともに魚などを通じて人体に影響を及ぼす危険性があることが問題視されている。有害物質の流出防止策として、土壌を遮水シートで覆う「封じ込め工法」や、不溶化材を使用して重金属を含有した土壌を固める「混合固化工法」が採用されている。しかし、それらの工法は遮水シートの劣化や混合品質の不安定さなどの課題があり、近年は吸着材を下敷きとする「吸着層工法」が注目されている。「吸着層工法」は「混合固化工法」と比較して安価に施工できるが、重機を使用し重金属を含まない土と吸着材を混合しなければならず、かつ現場において吸着層の均一性の品質確認を必要としていた。3社は、吸着材を均一に充填することで高い品質と柔軟性、透水性を有するシートの開発に着手。現場での品質確認が不要で、谷などの法面や複雑な地形でも簡易的に施工できる「パデムシート」の製品化に成功した。同製品を使用することで、従来よりも安全で簡易的な土壌汚染対策を実現する。
■「パデムシート」の特長
○高い品質による安全性向上
NETIS(新技術情報提供システム)登録で「吸着層工法」において実績のある吸着材を均一にシートに充填することによりムラなく重金属を吸着し、現場での品質確認を行う必要がない。また適度な透水性をもつほか、シート同士を熱溶着で接合させるため、吸着層を隙間なく構築でき高濃度の溶出水が河川や海へ流出するのを防ぐ。
○柔軟なシート形状による作業効率向上
厚さ2mmの柔軟性を有するシートでロール状に納品されるため、従来の吸着層工法と比較して現場で重機を使用せずにそのまま広範囲に敷設でき、工程数の削減による作業効率の向上を実現。また、谷などの法面や複雑な地形でもより簡易的に施工が可能。
■「パデムシート」の仕様
・製品形状:ロール3kg/m2(吸着材量)
・サイズ:幅1.5m×長さ20m
・厚さ:2mm
■今後の展開
同製品の販売にあたり、吸着材の提供をイーエス、製造を凸版印刷、販売をケー・エフ・シーで行う。今後3社は、同製品を土壌汚染対策現場において施工業者向けに販売を拡大し、環境保護に寄与することでサステナブル社会の実現を目指す。
※1法面(のりめん) 道路建設や宅地造成などに伴う切土や盛土により作られる人工的な斜面のこと。
【生分解性フィルター】伊藤園、環境に優しい「お~いお茶 緑茶」ティーバッグを販売
(株)伊藤園は、日本初となる植物由来の生分解性フィルターを採用した環境に優しい「お~いお茶 緑茶」ティーバッグを4月13日(月)から販売開始する。
昨今、マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な社会問題となり、プラスチック製ストローの廃止やレジ袋の使用規制の動きが強まるなか、企業の社会的責任を果たすためにも対応が必要となっている。同社は、持続可能な社会・環境目標を踏まえた「伊藤園グループ環境方針」のもと、プラスチックごみの課題解決に取り組み、環境に優しい資材を使用したティーバッグ製品の開発に至った。
「お~いお茶 緑茶」ティーバッグは、植物由来の生分解性フィルターを採用した、環境に優しい緑茶ティーバッグです。フィルターはグリーンプラ認証(※3)を取得している。また、ティーバッグの構造を見直すことで、従来のフィルター使用量を約50%削減する。さらに、ティーバッグの個包装に紙素材を使用し、プラスチックの年間使用量を約15t削減する。パッケージの外箱にはFSC認証紙(※4)を使用することで、環境性をさらに高めている。
また、抽出性の高い国産茶葉を使用し、お茶の味と香りがしっかりと楽しめる設計に見直した。マグカップはもちろん、近年所有率の高まるマイボトルなど幅広い飲用シーンで楽しめる。
同社は、「お~いお茶」ペットボトル製品を『100%リサイクルペットボトル』に順次切り替えている。また、2021年をめどに「お~いお茶」ティーバッグシリーズのその他製品でも生分解性フィルターを採用した製品開発を進めていく。今後も、環境問題の解決と伊藤園グループの成長を両立させる「共有価値の創造(CSV)」を具現化する持続可能な生産と消費を通じて、持続可能な社会・環境の実現に貢献していく。
(※1)マチ付きシングルチャンバーティーバッグとして日本初
(※2)ポリ乳酸のこと。微生物の力で水と二酸化炭素にまで分解
(※3)微生物の力で水と二酸化炭素まで分解される生分解性素材を使用し、環境負荷を低減した商品に認められる認証
(※4)適切に管理された森林からの木材を使用した用紙
【エコレールマーク】トクヤマ、取組企業の認定取得
(株)トクヤマは、(公社)鉄道貨物協会エコレールマーク事務局が実施するエコレールマーク事業において、「エコレールマーク取組企業」として認定された。
エコレールマークとは、地球環境に優しい鉄道貨物輸送を定期的に利用している商品または企業に対して認定を行い、マークの表示によって消費者に判断基準を提供する制度。エコレールマークの表示された商品などを通じて、流通過程において企業が地球環境問題に貢献していることを消費者に意識してもらい、企業の鉄道貨物輸送へのモーダルシフト(輸送手段の転換)を促進することを目的としている。
トクヤマは、融雪用途で使用される塩化カルシウムなどの製品の輸送に、鉄道貨物輸送を多く利用してきた。今後も新たに発生する案件を中心に、地球環境への配慮や輸送手段の多様化を目的として、鉄道貨物輸送の利用の検討を行うとともに、今後も積極的にモーダルシフトを推進し、環境負荷の低減に貢献するさまざまな活動に取り組んでいく。
【半導体】三菱ケミカル、関連事業を強化
三菱ケミカル(株)は、半導体関連事業の強化を目的に、2020年4月1日付にて情電・ディスプレイ部門に半導体本部を設置し、関連する事業を集約する。同時に、グローバルなバーチャル組織として「MC Chemical Solution for Semiconductor」を立ち上げ、「MCSS」の統一ブランドのもと海外の現地法人含め既存の組織・会社の枠にとらわれないスピーディな事業運営を行う。
昨今のAI、IoT導入の広がり、自動車産業におけるCASEの潮流等に伴い、半導体市場は大きく成長を遂げており、今後も高機能化が進みつつ一層伸長することが見込まれている。同社はこれまで、情電・ディスプレイ部門内の各事業部や高機能化学部門において、半導体製造に関連する製品やサービス等の事業を行ってきたが、これを新設する半導体本部に移管・集約し、一体的に運営することで、事業基盤の強化とともに業界内での存在感の向上を図る。
また、同本部内の各事業部や所管する関係会社の枠にとらわれず、グローバルに「MCSS」の統一ブランドを用いて事業を展開することで、世界各国・地域の顧客に対して、半導体関連のソリューションをワンストップで提供する体制を立ち上げる。
今後も、三菱ケミカルホールディングスグループの中期経営計画「APTSIS 20」のもと、フォーカスマーケットの1つである「IT・エレクトロニクス・ディスプレイ」において、半導体関連事業の拡大を図る。
【World's Most Ethical Companies】3M、7年連続で選出
スリーエム ジャパン(株)は、米国のシン クタンクEthisphere Instituteが2020年2月25日に発表した「World’s Most Ethical Companies 2020」(世界で最も倫理的な企業)に3M社が7年連続で選出されたことを発表した。同社の事業活動における倫理観、透明性、コンプライアンスの高さが評価され、グローバルな工業製品メーカーとして受賞した8社のうちの1社となった。
「World's Most Ethical Companies」は、企業の倫理観や社会的責任に対する透明性を調査し、透明性、誠実さ、企業倫理、法令遵守において優れたパフォーマンスを挙げている企業を表彰するもの。「企業倫理と法令遵守への取り組み」「倫理的企業風土」「企業市民として責任ある行動」「コーポレートガバナンス」「企業のイノベーションならびに社会的評価」の5つのカテゴリで企業を評価している。
3M社のバイスプレジデント兼チーフ・エシックス・コンプライアンスオフィサーであるマイケル・デュラン氏は次のように述べている。
「私たちは100年を超える全ての企業活動において、人々との間に信頼と誠実さの基盤を築いてきました。当社の成功は、私たち社員1人ひとりの日々の行動 や判断に委ねられています。今回の受賞は世界で活躍する96,000名の社員による日々の取り組みの成果です。当社が『働きがいのある職場』と称されるのもこの高い倫理観や価値観に紐づいています」
スリーエム ジャパンの代表取締役社長の昆 政彦氏は次のように述べている。
「このたびの7年連続受賞を非常に嬉しく思います。本年の受賞も社員1人ひとりが高い倫理観や価値観を持ち、これまで業務に励んできた結果だと自負しています。この受賞を受けて、日本においてもコンプライアンスとインテグリティ(誠実原則)の推進に努めながら、3Mの製品やサービスを通じて社会を豊かにし、人々に喜びをもたらす企業を目指します」
【防眩フィルム】DNP、ディスプレイ表面に発生するぎらつき現象の光学測定原理を解明
パソコンやスマートフォンなどのディスプレイには、外光や照明などの反射による映り込みを低減するため、表面に防眩フィルムを貼るなどの対策を施している。しかし、防眩フィルム表面の凹凸形状が、ディスプレイの画素マトリクスから出る光と作用して不規則な粒状ノイズとなり、微細な輝度分布を引き起こし、「ぎらつき」現象が発生していた。
従来、ぎらつきの度合いは、熟練者が経験や感性によって目視で判断していたが、個人差が生じやすく、測定結果の定量化や再現性に課題があった。そこで、防眩フィルム製品の開発や品質管理において、ぎらつき度合いを数値管理する「ぎらつき測定方法」が考案されてきたが、同じサンプルであっても測定装置によって測定数値が異なることや、光学測定の前提となる理論体系が未成熟であったことなどにより、測定データの定量的な比較は困難で、信頼性にも課題があった。結果的にこれまで、防眩フィルムを製造する部材メーカーのデータと、防眩フィルムを貼った最終製品メーカーのディスプレイのデータを比較できず、部材と最終製品のメーカー間のコミュニケーションが円滑に進まないといった不具合が生じていた。
また、2019年12月に制定された「ディスプレイのぎらつき度合いの求め方(JIS C1006)」では、測定データを絶対値として定量化する議論ではなく、条件が固定された測定装置での測定結果と目視による官能評価試験との相関という点に主眼が置かれている。
このような状況に対して、防眩フィルムを製造する部材メーカーであるDNPは、顧客である最終製品メーカーとの間で、測定データを介した円滑なコミュニケーションの実現と開発速度の向上を図るため、目視官能評価の数値化にとどまらず、測定結果を定量的に比較・評価できるよう、2015年よりぎらつき測定の光学測定原理についての研究を開始した。2018年には、ぎらつき発生の基本原理を理論的に解析し、2019年には異なる測定条件間での測定データの絶対値としての定量化や互換性が得られる方法に関する指針を確立した。
ぎらつき測定は、防眩フィルムを貼ったディスプレイ表面をカメラで撮影して、撮影画像からぎらつきの明暗として感じられる輝度分布の標準偏差を平均値で除して行う。DNPは、カメラレンズの絞りから測定面を見込む角度でディスプレイ面上の最小解像領域の大きさが決まることを確認し、ディスプレイ面上の最小解像領域の大きさがぎらつきに反比例することを突き止めた。

その結果、撮影の際には最小解像領域が同じになるようにレンズの焦点距離や測定距離を適切に設定することにより、異なる測定条件でも撮像面上でのぎらつきが一致することを実証しました。
また、カメラレンズの撮像素子上の最小解像領域は一般的にレンズのF値(レンズの焦点距離と絞り開口径の比)のみに依存することが知られているが、同じF値で撮像するという条件をさらに加えることで、異なる焦点距離のレンズを用いた場合でも、測定装置から出力されるぎらつきの値を一致させることに成功した。
以上の知見を用いることにより、異なる測定装置・条件の場合でも、測定値の差異が生ずる原因解析や基準を統一したデータ比較を行うことができる。
DNPは、1999年からディスプレイのぎらつきの、目視による官能評価試験を数値化する評価方法を独自に構築し、学会での報告や特許取得などを行い、その技術に基づく「ぎらつき防止防眩フィルム」を開発してきた。
DNPの「ぎらつき防止防眩フィルム」は、ディスプレイ表面のぎらつきを防ぐとともに、外光や照明などの映り込みを低減する。高精細でコントラストに優れた画像表示に優れており、2000年代初期から現在まで、さまざまなメーカーの多くの各種ディスプレイに採用されている。その寄与もありDNPは、ディスプレイ表面処理フィルムで世界No.1のシェアを獲得している(「2019年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望」(株)富士キメラ総研の2018年見込より)。
ディスプレイの大画面化や、4K・8K等の高精細化によって、ぎらつき度合いは増加する傾向にあり、ぎらつきが定量的に比較・評価できることがますます重要となってきている。今後もDNPは、ぎらつき光学測定原理の研究結果を用い、より優れた「ぎらつき防止防眩フィルム」の開発を行うとともに、ぎらつきに関する最新の技術について、学会などで発表していく。これにより、顧客企業とともに理論に基づいて議論することが可能となり、より適切なぎらつき防止のソリューションにつながると考えている。
ディスプレイのぎらつきコントラスト測定については、IECでも規格化がスタートしている。今回、今まで異なる装置で取得した測定値の相互比較が難しかった点において、IECが重視する相互運用性の道筋をつけたことに大きな意義があると考えられている。今後のIEC規格化の議論をサポートする知見となることが期待される。
【コンバーティングの明日を考える会】4月16日のセミナー、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い開催延期
コンバーティングの明日を考える会(田口 薫委員長)では、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し、4月16日(木)午後から東京で開催を予定してた第8回セミナーの延期を正式決定した。
開催日程は再度検討の上、決まり次第、募集を開始する。
【持続可能性】ヘンケル、サステナブルなパッケージングの実現と気候保護に向けた意欲的な目標を新たに設定
ヘンケル最高経営責任者のカーステン・クノーベル氏は、「サステナビリティの実現を目指す活動は、ヘンケルの企業文化に不可欠なものとして、これまで数十年にわたって続いてきました。2020年に掲げた目標に敢然と取り組む一方、ヘンケルは気候保護、循環型経済、社会の発展に積極的に貢献するためのマイルストーンを新たに設け、将来に向けた目標の強化を進めています。サステナビリティは、私たちの新たな戦略的フレームワークにしっかりと組み込まれ、他社に差をつける強みとなっています」と述べている。
またヘンケルの経営委員会メンバーで人事とサステナビリティを担当するシルヴィー・ニコル氏は、「世界的に見ても、ヘンケルという企業にとっても、これからの5年間がその先の未来を決定づけることになるでしょう。地球の温暖化に歯止めをかけ、国連が定めた『持続可能な開発目標(SDGs)』を達成するために、私たちは確実に正しい道を進んで行かなければなりません」と述べている。
2030年までに、ヘンケルは事業活動の効率性を、2010年当時の環境フットプリントの状況と比べて3倍にまで高めることを目指している。これはヘンケルのサステナビリティ戦略の要となる目標。2019年末時点ですでに、総合的な効率性を56%向上させることに成功している(基準年2010年との比較)。
ヘンケルは、2020年までの目標のうち次の3つを早くも達成している。
(1)CO2排出量を31%削減し、生産量1トン当たりの廃棄物量を40%削減
(2)労働環境の衛生状態と安全性については42%の改善を果たし、2020年の目標をすでに超えている
(3)生産量1トン当たりの水消費量を2010年との比較で28%削減し、目標とする30%削減が目前
CO2排出量の削減によって地球温暖化を抑えるために、ヘンケルは長期的なビジョンをさらに強化し、クライメート・ポジティブな企業を目指すとともに、バリューチェーンの各関連分野においてさらなる前進を続ける。
シルヴィー・ニコル氏は、「2040年までにクライメート・ポジティブな企業になるというビジョンを掲げる私たちは、確かな足取りでカーボンニュートラル(大気中のCO2の量に影響を与えない)の一歩先へと進み、業界をリードする存在としてサステナビリティの実現に取り組む姿勢を示していきます。自社の事業をさらに発展させる一方で、私たちの目標はバリューチェーン全体のパートナー各社とも連携し、地球の環境保護に貢献していくことです」と述べている。
2040年に向けてクライメート・ポジティブな企業を目指す過程で、ヘンケルは2025年までに生産活動に起因するカーボンフットプリント(CO2換算の温室効果ガス排出量)を65%削減する方針を立てている。エネルギー効率を継続的に改善し、使用する電力を再生可能エネルギー由来のものに変えることで、目標達成を目指す。現在生産に使用している化石燃料をすべて、2040年までにクライメート・ニュートラルな代替燃料に置き換え、余剰エネルギーが発生した場合には他社に提供したいと考えている。
また、顧客や一般消費者、サプライヤー各社にヘンケルブランドの製品と技術を活用してもらうことで、2025年までの5年間で1億トンのCO2削減を実現したいと考えている。
循環型経済の促進を助けるサステナブルなパッケージングの実現に向け、ヘンケルはこれまで活動を続けてきた。その実績を礎として、2025年に向けたさらに意欲的なパッケージングの目標を新たに掲げて取り組みを強化する。
(1)100%リサイクル可能・再利用可能注1)
ヘンケルの包装材をすべてリサイクル可能または再利用可能な素材にする注1)。
(2)石油由来プラスチックの使用を50%削減
石油に由来するバージンプラスチックの一般消費財への使用を、50%削減することを目指す。世界全体で一般消費財の再生プラスチック使用比率を30%超まで増やす、プラスチックの全体的な使用量を減らす、バイオプラスチックの使用を徐々に増やす、などの手段で達成できる見込み。
(3)ゼロウェイスト
自然環境へのごみ廃棄ゼロを願うヘンケルは、廃棄物の回収やリサイクル活動を支援し、クローズドループ型のリサイクル活動を積極的に進める数々の画期的なソリューションやテクノロジーに投資している。年間20億人超の顧客に届けることを目標に、リサイクルに関する適切な情報を発信していく。
ヘンケルが重点的に取り組んでいる6つの分野の1つが、社会の発展に力を尽くすこと。ヘンケルは2025年までに、100%信頼のおける原料調達先を確保し、ポジティブな社会的影響力をさらに高めて地域社会に貢献したいと願っている。そのために、サステナビリティアンバサダーとして研修を受けた5万人を超える従業員の力を活用し、世界中の2,000万人の人々がよりよい生活を送れるよう支援したいと考えている。
サプライヤー各社との密な対話を大切にすることで、ヘンケルはサステナビリティを実践し、バリューチェーンに関わるすべての人たちの権利を尊重してきた。ヘンケルは6段階の調達プロセスを、責任ある調達戦略のための重要な要素と考えている。それらのプロセスは、サプライヤーのサステナビリティ達成度を評価する目的に使われ、ヘンケルの購買活動にしっかりと組み込まれている。2019年に購入した物品の約86%が、パッケージング、原材料、受託製造に関するものであった。
責任ある調達を目指すヘンケルの姿勢を如実に示すのが、2011年に他社と共同で始めた「サステナビリティのための協力(Together for Sustainability:TfS)」という化学業界の持続可能なサプライチェーンを推進するイニシアチブ。この取り組みには化学工業界のあらゆる分野から23のパートナー企業が参加しており、ますます複雑化するサプライチェーン管理プロセスの統合を目的として、サステナビリティに配慮しながら互いに協力している。TfSイニシアチブの主な役割は、監査とオンライン評価の実施。厳選した独立監査法人と、サステナビリティ分析に特化したサービスを提供する格付け機関EcoVadisに実施を依頼している。
カーステン・クノーベル氏は、「ヘンケルは、サステナビリティを事業活動のすべてにしっかりと根付かせ、部門を超えた全社的なイノベーション戦略を中央で支える柱とすることを目標としています。それによってヘンケルはさらに資源効率性に優れた企業となり、高い競争力を発揮できるようになるでしょう」と述べている。
例えば一般消費者向けのビューティーケア事業部門とランドリー&ホームケア事業部門では、サステナブルなパッケージングの実現と、用途を特定した製品ブランドの新規展開に重点を置くことで、製品ポートフォリオの強化を図る。アドヒーシブ テクノロジーズ(接着技術)事業部門は、業界に画期的なソリューションをもたらす製品とテクノロジーを駆使し、持てる力を存分に発揮していく。
【企業戦略】ヘンケル、成長計画に着手
ヘンケル最高経営責任者のカーステン・クノーベル氏は、「ヘンケルは、強力なブランドと革新的テクノロジー、世界の様々な市場においてトップの位置を確保する魅力ある事業、強い熱意を持つチーム、そしてキャッシュ創出力の高い優れたバランスシートといった強固な基盤を、未来を見据えてさらに強化しています。しかし、最近の当社全体の業績は、当社目標と株主の皆様の期待を下回る結果となりました。今後は、より高い業績を達成できるものと確信しており、必ずこれを実現します。さらに、ヘンケルの強みと変化の必要性に関する詳細な分析に基づいて、当社は新たな戦略的枠組みを策定しました。この戦略的枠組みにより、当社は意義ある成長にしっかりと焦点を合せながら、2020年からの10年間を勝ち抜いていくことが可能となります。これは、市場を上回るより優れた顧客・消費者価値の創出、サステナビリティ分野でのリーダーシップの強化、そして社員がヘンケルでの仕事を通じてプロとしても個人としても成長できるようになることを意味します」と説明した。
「今後は、意義のある成長に向けた新しい戦略的枠組みが、ヘンケルの順調な発展の推進力となります。また、この枠組みも時間とともに進化していきます。この枠組みの柱となる主要要素は、勝てるポートフォリオ、イノベーション・サステナビリティ・デジタル化という3つの分野における競争上の強みと、未来を見据えたオペレーティングモデル、そして、その基盤となるのが協力的な文化と意思決定力を持つ社員です。また、当社の意義ある成長へのコミットメントは、中長期的な財務目標にも反映されています」と述べた。
今後の方向性を示す主要な要素の1つが、積極的なポートフォリオ管理。ヘンケルは、主に一般消費者向け事業の中から総計で売上高10億ユーロ以上となるブランドやカテゴリーを特定し、そのうちの半数を2021年までに売却または廃止する予定す。また、M&A(合併買収)は今後もヘンケルの戦略の重要な要素となる。買収の主要基準は、有効性、戦略上の適合性、および潜在的ターゲットの財務的な魅力となる。ヘンケルは、自社の有する優れたバランスシートを活用し、影響力の大きな買収を進めていく。買収によって、アドヒーシブテクノロジーズ(接着技術)事業部門の技術的リーダーシップ拡大を目指しながら、一般消費者向け事業部門においては、各国およびカテゴリーにおけるトップの位置の確保、そして手付かずであった分野と新たなビジネスモデルに重点をおいて取り組んでいく。
ヘンケルは、自社の競争上の強みを一層強化するために、影響力のあるイノベーションを加速させ、差別化要因としてサステナビリティを推進し、デジタル変革によって顧客・消費者価値を創出することに注力していく。
投資拡大などによって、影響力のあるイノベーションを加速させていう。例えば、より迅速により良いインサイトを得られるようデジタルツールやデータの利用を拡大するなど、イノベーション・アプローチの強化等にも取り組んでいく。また、組織全体において、市場により即応した意思決定を推進し、オープンイノベーションやアイデア・クラウドソーシングの力を活用していくとともに、機動性をさらに強化し、インキュベーターやイノベーションセンターへの投資を継続していく。これにより、3つの事業部門すべてにおいて影響力のあるイノベーションの開発を実現させることができる。イノベーションとブランドについては、中核となるカテゴリーおよび地域への一貫した投資によって促進していく。そのため、ヘンケルは広告活動、デジタル化およびITへの投資を2018年比で3億5000万ユーロの増額とし、さらなる成長投資の拡大に取り組んでいく。
ヘンケルは、その2020年とさらに先に向けた目標達成を目指し、優れた実績を基にさらに前進していくため、競争上の差別化要因としてサステナビリティを強化していく。同社は、顧客や消費者をはじめ、ビジネスパートナー、さらには社会全体に関わりの深い3つの重要事項に関し、次のような目標を定めている。
2040年までのクライメート・ポジティブ(環境に前向き)な企業の実現に向け、顧客、消費者、そしてサプライヤー各社とともに、2025年までにカーボンフットプリント(CO2換算の温室効果ガス排出量)の65%削減、二酸化炭素排出量の1億トン削減を目指す。循環型経済と環境中のプラスチック廃棄物ゼロの実現に向け、ヘンケルは、パッケージに関する2025年までの意欲的な目標を設定している。ヘンケルのパッケージにおいては100%リサイクルまたは再利用注1)を可能にし、消費者向け製品のパッケージにおける化石ベースの未使用プラスチックの割合を50%削減する。
さらにヘンケルは、100%責任ある調達や、5万人以上の熱意ある社員の活用、また2025年までに世界2,000万人の人々の生活改善に貢献するなど、コミュニティに対するポジティブな社会的影響をさらに高めていきたいと考えてる。
サステナビリティは、しっかりとすべての活動に組み込まれることになる。サステナビリティをイノベーション戦略の中心的柱として確立することにより、一般消費者向け事業のビューティーケア事業部門とランドリー&ホームケア事業部門では、特にサステナブルなパッケージソリューションに重点を置いて、目的をもったブランドのさらなる展開を進めながら、製品ポートフォリオを拡充させることができる。アドヒーシブ テクノロジーズ(接着技術)事業部門では、業界基準となる製品とテクノロジーを通じ、引き続きサステナビリティを推進していく。
ヘンケルは、今後、デジタル変革によって顧客・消費者価値を創出することを目指す。既存のプラットフォームの拡充と新たなプラットフォームの開設によって消費者と直接的な関係を構築し、一般消費者向け事業において、1対1のエンゲージメントとデジタルの売上を向上させたいと考えている。新たな事業を生み出すため、すべてのタッチポイントにおける顧客体験のデジタル化を進めていくために、産業用事業におけるエンドツーエンドで顧客中心のデジタル化を推進していく。さらに、ヘンケルはエンドツーエンドのデータ統合をさらに進めていく。これにより、例えば、AI主導の革新的かつカスタマイズされたソリューションを生み出すことができるようになる。また、ヘンケルは、デジタル人材、特に、これから必要となる能力とテクノロジー産業の深い専門知識を有するデータサイエンティストおよびデータエンジニアに投資を行っていく。そして、デジタルビジネスの重点化および効率化を実現していきたいと考えている。同社のデジタル体制を全面的に再編成し、「デジタルビジネス」と称する新たなデジタル体制を確立する。ヘンケルは昨年末、新たに最高デジタル・情報責任者(CDIO)を設置した。ヘンケル全体のデジタルとITチームは、最高経営責任者(CEO)に直属するCDIOの下に統合されることになる。
ヘンケルの新体制「デジタルビジネス」には、2つの柱があります。1つ目の柱は「ビジネステクノロジー」であり、ビジネスプロセスとITシステムの継続的な最適化によってバリューチェーン全体にわたる効率化を促進させる部署。2つ目は「ヘンケルデジタル」で、市場重視のインキュベーションとイノベーションのために新しく設置された部署。この体制の下、ヘンケルでは、ベルリン、シリコンバレー、アジアの各地に、デジタルイノベーション拠点の設置を計画している。
ヘンケルの事業プロセスと構造の競争力を継続して高めていくために、会社全体においてオペレーティングモデルを効率的で迅速かつシンプルなモデルに再構築している。同社は、より迅速な意思決定によって顧客・消費者の距離を縮め、継続して効率性を高めるために、新たなビジネスモデルの実現に向けた取り組みを強化したいと考えている。
ワンチームで協力していくためのしっかりとした文化、バリューの共有、明確な枠組みが、今後のヘンケルの成功のカギとなる。ヘンケルは、その第一歩として、2019年に世界中のすべての社員に対し、リーダーシップコミットメントを導入した。このコミットメントを中心に据え、成功のカギとなる文化醸成に向けた動きを加速させていき、協力と意思決定力(社員への権限付与)の文化を醸成し、これから必要となる能力について社員のスキルアップを図り、社員が成長・発展していけるよう取り組んでいく。
カーステン・クノーベル氏は、「意義ある成長に向けた新たな戦略的枠組みは、既存事業売上高の伸び率2~4%、調整後注2)の優先株1株当たり利益成長率5~9%(為替変動の影響を除いた場合)などの数値目標や、フリーキャッシュフロー拡大に引き続き重点を置くなど、中長期的な財務目標にも反映されている。つまり、ヘンケルは今、未来に向けて順調な発展を継続していくための基盤を構築したということになります。そしてここから、当社はそれに基づいた各施策の実施に注力し、変革を推進するとともに、成長計画をさらに進化させていきます」と述べている。
注1)接着剤製品については、残留物がリサイクル作業に支障を与えたり、作業工程で有害物質を排出したりする恐れがあるため、対象外とする。
注2)一時費用、一時所得およびリストラ費用を除く。
【LIB】ヘンケル社とコベストロ社、接着剤による効率的な組立を実現し、車の電動化を促進
消費者からの電気自動車の値下げ圧力は強く、自動車の完成車メーカーにとってLIBを優れた費用対効果で大量に組み立てることが必要条件になっている。そういった背景から、ヘンケルのLoctite AA 3963電池組立用接着剤とコベストロの紫外線透過PCブレンドBayblend®は開発され、接着剤を量産向けに自動塗布する技術との互換性を確保し、プロセスに応じて柔軟な急速硬化が可能になった。このアクリル系接着剤Loctite AA 3963は、特殊な難燃性樹脂でできた電池ホルダー用に開発されている。基材との強力な接着性を確保するとともに、長いオープンタイムと短い硬化サイクルにより様々な生産ラインに対応できる。
ヘンケルのヨーロッパ電気自動車部門のトップを務めるFrank Kerstan氏は、「サイクルタイムを短くすることや量産プロセスに応じた柔軟な対応は重要です。完成車メーカーですでに採用されている接着剤LOCTITE AA 3963は、円筒型リチウムイオン電池をキャリヤに固定するために設計されたもので、プロセスに応じて適宜硬化させる(cure-on-demand)タイプの1液性の接着剤です。材料本来のオープンタイムが長いため、高速自動塗布後、予期しない製造中断があってもプロセスに対応できます。接着剤を塗布したキャリヤにすべての電池をセットし、電池ホルダーを組み付け、紫外線(UV)を照射すると5秒以内に硬化します」と述べている。従来の製造では硬化時間が数分から数時間に及ぶため部品を保管する余分なスペースが必要であったが、Loctite AA 3963を使用することで大きなアドバンテージがある。
電池ホルダーは、コベストロのPC+ABS配合Bayblend® FR3040 EVで製作する。この樹脂は厚さがわずか1mmで、安全認証の難燃性規格UL94のV-0グレードを満たしており、波長範囲380nm以上の紫外線に対して良好な透過性を示す。
コベストロのPC部門で電気自動車市場開発責任者を務めるSteven Daelemans氏は、「この素材によって、部品のサイズが安定し、自動組立による大量生産が実現します。Loctite接着剤の速硬化性とこの素材の組み合わせは、円筒型リチウムイオン電池モジュールの大規模生産に向けた画期的なアプローチを提供します」と話す。
電気自動車のLIBをコベストロとヘンケルのソリューションでいかに効率よく組み立てられるかは動画を参照。
【電池リサイクル】Fortum、BASF、Nornickelの3社、協力協定に調印
<2020年3月6日>Fortum社(フォータム、本社:フィンランド)、BASF(本社:ドイツ)、およびNornickel社(ノルニッケル、本社:ロシア)の3社は、電気自動車市場を支える電池リサイクルの共同事業をフィンランドのハルヤヴァルタ(Harjavalta)で行う基本合意書に調印した。この共同事業により、使用済み電池に含まれる重要な金属を抽出し、原料として電池材料製造に再利用するサイクルを確立させることで、電池循環システムの構築が実現できる。
リサイクル電池の金属を使用して電池材料を製造することにより、電気自動車の生産におけるCO2の大幅な削減が可能になる。また、リサイクルプロセスにフィンランドの再生可能な電力を使用することで、さらなるCO2削減を達成することができる。
Fortum Recycling and Waste社のビジネス開発部門の責任者であるTero Holländer氏は次のように述べている。
「リチウムイオン電池に含まれる有価金属をリサイクルすることで、主要原料であるコバルトやニッケル、その他の重要金属の供給を補完し、電気自動車用電池の環境負荷を低減します。Fortumは、低CO2の湿式冶金プロセスを専門とするフィンランドの成長企業であるCrisolteq社の買収により、リチウムイオン電池の希少金属の回収率を50%から80%以上に高めることができたことを、大変誇りに思っています」
BASFは、この協力の中で開発されるプロセスで生まれるリサイクル材を、フィンランドのハルヤヴァルタで建設を計画している電池材料の前駆体工場で使用する予定。
「電池材料の生産とリサイクルを組み合わせることでサーキュラー・エコノミー(循環型経済)を実現することができます」とBASFのケミカル&バッテリーリサイクル貴金属精錬事業のバイスプレジデントであるティム・イングル氏は述べている。「e-モビリティの実現に貢献するため、我々は高エネルギー密度の正極材および電池リサイクル用高効率リチウム抽出に向けたソリューションをもたらすことに注力しています」。
Fortum、BASF、Nornickelの3社は、電池市場において再生原料の責任ある生産、および利用を促進することを目指している。
「Nornickel Harjavalta社に隣接する近代的なリサイクル設備により、同社は世界で最も持続可能なニッケル精錬所の1つとしての地位を、さらに強化することでしょう。この設備は、リチウムイオン電池に使用される2つの主要金属の持続可能な処理に最適です。リサイクル・ソリューションの開発は、CO2排出量をさらに削減し、サステナビリティを高めるというNornickelの戦略を支えるものです。また、電池産業が、電気自動車分野において重要金属の需要の高まりに対応できるようにすることは不可欠です」と、Nornickel Harjavaltaのマネージング・ディレクターであるJoni Hautojärvi氏は述べている。
■Fortumについて
Fortumは、電力、熱、冷却、およびリソース効率を向上させるインテリジェントなソリューションを提供する、クリーンエネルギーのリーディングカンパニー。北欧、バルト海、ロシア、ポーランド、インドに約8,000名の専門家を擁している。2019年の売上高は54億ユーロで、発電量の59%がCO2フリーであった。Fortumの株式はNasdaq Helsinkiに上場している。
■Nornickelについて
PJSC «MMC «NORILSK NICKEL»は、パラジウムと高品位金属ニッケルの世界最大の生産会社で、プラチナと銅の主要生産会社。コバルト、ロジウム、銀、金、イリジウム、ルテニウム、セレン、テルル、硫黄などの製品も生産している。«NORILSK NICKEL»グループの生産拠点は、ロシアのノリルスク工業地域、コラ半島、ザバイカルスキー地方、フィンランド、南アフリカにある。PJSC «MMC «NORILSK NICKEL»の株式は、モスクワおよびサンクトペテルブルク証券取引所に上場されている。PJSC «MMC «NORILSK NICKEL» ADRは、米国の店頭およびロンドン、ベルリン、フランクフルトの各証券取引所で取引されている。
【プラスチック添加剤】BASF、インドの高速道路の耐久性向上に貢献
BASFの光安定剤「Chimassorb®(キマソーブ)」シリーズは、インドの大手ポリエチレン製品メーカーであるM/s Megaplast India Pvt Ltd(メガプラスト社)により、高速道路建設に使用される不織布・ジオテキスタイルを製造する際に使用されている。この光安定剤の添加剤パッケージは、生産プロセスの安定化とジオテキスタイルの耐用年数の延長に重要な役割を果たす。
BASFのアジア太平洋地域パフォーマンスケミカルズのシニアバイスプレジデントであるハーマン・アルトホフ氏は、以下のように述べている。
「不織布・ジオテキスタイルは、地上構造物の基礎にあたる土壌補強に使用される高性能材料で、道路を天候による浸食から保護します。製造工程においては、当社のプラスチック添加剤を使用することで、 より長い稼働時間を可能にし、さらに、より安定した加工処理とメンテナンスコストの削減をもたらし、非常に厳しい加工条件でも対応できるようにします」
BASFはメガプラストに適切な光安定剤のパッケージを提供しただけでなく、技術データの結果を解釈する際の支援を行った。試験期間中、BASFは様々な配合試験を サポートし、コストと性能の最適なバランスを選択するオプションを提供した。
道路建設において、ジオテキスタイルの最も重要な利点の1つは、異なる土壌粒子の層間の分離を維持すること。ジオテキスタイルは、水や細かい土壌粒子の砂利への侵入を抑制し、砂利の強度の大幅な低下を防ぐ。道路建設にジオテキスタイル素材を使用することで、道路自体の品質が向上し、耐用年数が延び、補修コストが削減される。この用法は、運河やトンネルの覆工、埋め立てにも広く使用されている。
このようなジオテキスタイルは、通常、高密度ポリエチレン(HDPE)で作られている。これらを製造するためには、HDPEの素材を細いフィラメントに紡糸し、バインダー(接着剤)を使用せずに熱で接着する。通常、光安定剤のパッケージには、押出成形中に ポリマーを保護するプロセス安定剤と、熱や光による劣化からポリマーを保護する紫外線吸収剤や耐熱安定剤が含まれる。遮水シートなどに使用されるジオメンブレンの世界的な需要は、今後数年間で劇的に増加することが予想される。この分野の最大の開発の多くは、大規模なインフラプロジェクトが進行中であるインドにおいて行われる。世界銀行は、資金提供を受けるすべてのインフラプロジェクトで、ジオテキスタイルやジオメンブレンの使用を義務付けている。
【interpack 2020】メッセ・デュッセルドルフ、今年5月の開催を延期。2021年2月25日~3月3日に開催決定
独メッセ・デュッセルドルフ見本市会社は、2020年5月7日~13日までデュッセルドルフで開催を予定していた国際包装産業展「interpack 2020」を、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開催延期を決定し、2021年2月25日~3月3日に開催することを決定した。
【drupa 2020】メッセ・デュッセルドルフ、今年6月の開催を延期。2021年4月20日~30日に開催決定
独メッセ・デュッセルドルフ見本市会社は、2020年6月16日~26日まで開催を予定していた国際印刷・メディア総合展「drupa 2020」を、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開催延期を決定し、2021年4月20日~30日に開催することを決定した。
【移転】トーヨーケム、貼付型医薬品工場を尼崎市から滋賀県守山市に
トーヨーケム(株)は、貼付型医薬品事業の拡充のため工場機能と開発拠点を兵庫県尼崎市から滋賀県守山市に移転することを決定した。
トーヨーケムは、東洋インキグループの中核事業会社の1つとして「ポリマー・塗加工関連」事業を担い、注力分野としてメディカル・ヘルスケア領域における貼付型医薬品や粘着剤、生体適合ポリマーなどの開発に取り組んでいる。
2016年に貼付型医薬品事業を積水メディカル(株)から取得し、以来メディカル関連の開発拠点として尼崎工場にて貼付型医薬品の開発、製造を行ってきた。設備の老朽化への対応および生産能力の増強の必要性から、この度東洋インキグループの関係会社である東洋ビジュアルソリューションズ(株)の守山製造所敷地内に、トーヨーケムとして新工場を建設し、生産と開発の全機能を移転する。
新工場にて、最新の規制状況に対応した設備に更新することで、新規開発を加速させるとともに、医薬品の長期にわたる安定供給を実現しメディカル・ヘルスケア事業の拡充を図る。
<新工場の概要>
所在地 〒524-0051 滋賀県守山市三宅町436-1(現東洋ビジュアルソリューションズ(株)守山製造所敷地内)
投資額 約40億円
移転スケジュール
着工 2021年上期(予定)
稼働 2023年中(予定)
【有機半導体】東大、AISTなど、高精細パターニング電極を取り付ける手法開発
さまざまな機能性を有する電子素子を駆動させるためには、電圧や電流を入出力するための電極が必要不可欠。電極は通常金属で、高真空下で大きなエネルギーを用いて成膜されることが多く、電極の設置面へのダメージを抑え、接着力など下地との相性を最適化することも重要な課題であった。
本研究グループは、洗濯のりの成分であるポリビニルアルコール(PVA)が乾燥すると固まり、水にあうと簡単に溶けることを利用し、基板上で高精細にパターニングされた電極をPVAなどとともに電極フィルムとして引き剥がし、半導体上に移し取る手法を開発した。さらに、たった1分子層(厚さ4nm)からなる有機半導体に金属電極を取り付け、半導体の機能を十分利用できることを実証した。取り付け先の制約は極めて少なく、曲面や生体などへの応用も期待できる。今回の成果により、さまざまな積層デバイスへの応用が可能となり、将来の産業応用における低コスト・フレキシブルエレクトロニクス用のプロセスとしての利用が見込まれる。
本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」2020年3月13日版に掲載された。本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」(研究者代表者:竹谷 純一)の一環として行われた。
背景
半導体はさまざまな電子デバイスにおいて重要な役割を担っており、現在はシリコンをはじめとする無機半導体が広く用いられている。半導体をセンサや論理演算などの機能素子として利用するには、電圧や電流を入出力するための電極を半導体上に形成する必要がある。電極は通常金属で、真空蒸着法(注2)やスパッタリング法(注3)など多大なエネルギーを要するプロセスを用いて形成されることが多く、高エネルギーに伴う半導体へのダメージを抑える必要があった。また、接着力不足などに起因する半導体との接触不良を解決することも重要な課題であった。このような金属電極を形成する際の問題は、フレキシブルエレクトロニクスの基盤材料である有機半導体の分野において顕在化している。
有機半導体は、塗って乾かすだけで高品質な結晶性薄膜が低コストで得られるため、RFIDタグ(注4)や種々のセンサといった膨大な数のデバイスが必要となるIoT時代の基盤材料として近年盛んに研究されている。しかしながら、原子同士が共有結合で強く結びついている無機半導体と比較して、分子同士が弱い分子間力によって集合している有機半導体は、溶剤や熱によるダメージを受けやすいという課題があった。例えば、有機電界効果トランジスタ(OFET: 注5)では、有機半導体や電極といった構成要素を積層して作製するが、有機半導体上への電極形成時に、熱によるダメージやパターニングに必要な溶剤によるダメージを抑える必要があった。
このような課題を解決するため、電極をあらかじめ別の基板上に作製し、半導体上に移し取るというアプローチに取り組んできた。基板上に作製した電極を直接半導体表面に移し取るには、基板から電極を引き剥がすため、電極を半導体に十分な強度で接合する必要がある。しかし、半導体と電極は直接触れて電気的につながっている必要があるため、間に接着層を挟むことができず、強く接合するのは困難。そこで、さまざまな基板や作製プロセスを検討してきた。そのうち、洗濯のりが乾燥すると固まり、水にあうと簡単に溶けることにヒントを得て、「のり」を使って基板から電極を引き剥がし、後で「のり」を除去するという発想に至った。さらに、電極を薄い保護層で覆えば、半導体と保護層との静電気力を利用して電極を半導体に接触させられるのではないかと考えた。
こうしてたどり着いた半導体上への電極の取り付け手法を図1に示す。

本手法では、基板上でパターン化された電極を半導体上に移し取るため、安価で広く用いられている2種類の高分子を使用した。1つ目は、アクリル樹脂の一種であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)、2つ目は洗濯のりの成分として知られ、水によく溶けるポリビニルアルコール(PVA)。まず、基板上で電極材料をパターニングし、その上に薄いPMMAを塗布。これらはいずれも厚さ数10~100nmと薄いため、このまま取り扱うことが困難。そこで、その上にPVAを20~30μmの厚さに塗って乾かす。その後、電極、PMMAおよびPVAを一括して基板から引き剥がすことで、取り扱いが容易な電極フィルムを得た(図2左)。続いて、電極フィルムを半導体上に貼り付け、温水でPVAを溶解して除去すると、薄い電極およびPMMAが静電気力によって半導体上に吸着する。以上の簡便な手法により、1μmという高精細でパターニングされた電極を、プロセス中に伸縮することなく半導体上に移し取ることに成功した(図2右)。

開発した手法の有用性を確かめるため、1分子層(厚さ4nm)の単結晶からなる有機半導体の上に電極を取り付けてOFETを試作した。従来の真空蒸着法で電極形成したOFETでは、ゲート電圧を変化させてもドレイン電流が殆ど流れないことから、熱的なダメージによって特性が大きく低下している(図3橙色の破線)。一方、開発した手法で作製したOFETは、ゲート電圧を変化させると有機半導体の本来の性能であるドレイン電流値を示し(図3赤色の実線)、ゲート電圧とドレイン電流の平方根(図3青色の実線)の関係から移動度(注6)を求めたところ、実用化の指標となる10cm2/Vs程度を示し、1分子層の有機半導体が持つ性能を引き出せることが実証できた。

および従来の真空蒸着法によって電極を作製したOFETの
伝達特性(橙色破線)。図中のVDはドレイン電圧
この手法を用いることで、積層デバイスの作製が容易となるため、より複雑で高度な機能を実現する集積回路の作製が可能となる。
また、安価で汎用性が高く環境負荷の小さいPMMAやPVAを使用していることや、大面積化が容易で、曲面などさまざまな表面形状の半導体にも適用できるなど、電極を取り付ける半導体側の制約が少ないことも特長。今後、こうした特長が活かせる有機半導体を用いたソフトエレクトロニクスの社会実装やバイオエレクトロニクス分野への貢献が期待される。
牧田龍幸(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 博士課程2年生)
渡邉峻一郎(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 特任准教授/AIST産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 客員研究員 兼務)
竹谷純一(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 教授/マテリアルイノベーション研究センター(MIRC)特任教授 兼務/AIST産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 客員研究員 兼務/物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)MANA主任研究者(クロスアポイントメント))
発表雑誌
雑誌名:「Scientific Reports」(オンライン版:3月13日)
論文タイトル:Damage-free Metal Electrode Transfer to Monolayer Organic Single Crystalline Thin Films
著者:Tatsuyuki Makita, Akifumi Yamamura, Junto Tsurumi, Shohei Kumagai, Tadanori Kurosawa, Toshihiro Okamoto, Mari Sasaki, Shun Watanabe*, and Jun Takeya*
DOI番号:10.1038/s41598-020-61536-8
<用語説明>
(注1)産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ
平成28年6月1日、東大柏キャンパス内に設置した産総研と東大の研究拠点。相互のシーズ技術を合わせ、産学官ネットワークの構築による「橋渡し」につながる目的基礎研究の強化や、先端オペランド計測技術を活用した生体機能性材料、新素材、革新デバイスなどの産業化・実用化のための研究開発を行っている。
(注2)真空蒸着法
真空中で金属などの材料を加熱することで蒸発あるいは昇華させ、基板表面に堆積させる手法。
(注3)スパッタリング法
真空中で金属などターゲットにイオン化させた希ガス元素を衝突させることで、はじき飛ばされた原子を基板表面に堆積させる手法。
(注4)RFIDタグ
電波を用いた無線通信により、個別識別コード情報(ID)をやり取りするタグ。Suicaなどの交通カードもRFIDタグに含まれる。
(注5)有機電界効果トランジスタ(OFET)
有機半導体を活性層とした電界効果トランジスタ。電界効果トランジスタは、スイッチング素子や増幅素子として利用され、集積回路において必要不可欠な電子素子である。一般的なトランジスタ同様に、ソース・ドレイン電極間にドレイン電圧(VD)を印加することで流れるドレイン電流(ID)をゲート電極に印加されるゲート電圧(VG)によって制御できる。
(注6)移動度
電場により電荷が移動する際の移動しやすさを表す量。IoTデバイスの動作には10 cm2/Vs以上の移動度が望ましい。