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【大型発電機用高熱伝導マイカテープ】日立化成、開発技術に関する基本特許取得

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 日立化成(株)は、火力発電所の大型発電機に用いる高熱伝導*1マイカテープの開発技術について、基本となる特許6094683号(以下、本特許)を取得した。
 近年、新興国の発展や電気自動車の普及に伴い世界の電力需要は増加しており、特に高効率で発電できる火力発電の需要が拡大している。世界の火力発電による発電量*2は2013年には200GW(ギガワット)であったが、2025年には315GWになると予想されている*3。火力発電は水を熱して発生する水蒸気でタービンを回し、タービンによって磁石をコイルの中で回転させることで、コイルに電気が流れ発電する。発電により発熱するコイルは、発電効率の向上とコイルの劣化を防ぐために、冷却が必要。冷却方法としては、従来はコイルに使われる銅線の中を空洞にしてその内部に水を通し、コイルの内側から冷却を行う水直接冷却方式が一般的であったが、近年はメンテナンスのしやすさと設備コストの安さから、コイルの外側を水素ガスで冷却する水素間接冷却方式が主流になってきている。しかし水素間接冷却方式は水直接冷却方式より冷却効果が小さいため、コイルに巻き付ける絶縁材料のマイカテープには、コイルの放熱ができるよう高い熱伝導率が求められていた。
 そこで日立化成は優れた絶縁性を維持しつつ高い熱伝導率を実現したマイカテープを開発し、2014年に本特許を出願した。本特許は、窒化ホウ素粒子を用いたマイカテープの開発技術に関する基本特許。熱伝導率の高い材料である窒化ホウ素粒子を新たに用いたことにより、マイカテープは同社従来品比約2.8倍の熱伝導率を実現し、コイルが高温になる、発電量400MW(メガワット)以上の大型発電機等に用いることができる。また窒化ホウ素含有層とマイカ含有層に分かれた構成になっているため、窒化ホウ素粒子がマイカ片の間に混入してマイカテープの絶縁性が低下することを防ぐ。
 なおON・OFFの頻度が高い発電機では、コイルの銅線の熱膨張・収縮によって、コイルに巻き付けたマイカテープに曲げや歪みが発生することがあるが、このマイカテープは曲げ・歪みが発生した場合でも優れた絶縁性を実現する。
 本マイカテープはすでに国内発電機メーカーの700MW級の製品に採用されているほか、日本、米国、欧州の発電機メーカーにおいて高効率・高寿命な発電機への適用に向けた評価が進んでいる。日立化成は本特許の関連特許として、中国でも高熱伝導マイカテープの開発技術の基本となる特許ZL201480055766.8を取得している。また11件のPCT国際出願*4、4件の国内特許出願を行うとともに、米国、欧州でも特許出願し、ワールドワイドでの特許網構築を進めている。
 日立化成は、この開発技術を同社の技術および事業の差別化に活用するとともに、本特許をはじめ、保有する知的財産権を積極的に有効活用し、今後も事業の優位性を高めていく。
*1 熱伝導率は、熱の伝わる速さを示す値。熱伝導率の値が高い(高熱伝導な)材料ほど、熱が伝わりやすく、熱を逃がす能力が高いため、冷却・放熱材料に適している。
*2 新規に設置される火力発電の発電量。
*3 出展:(株)富士経済「World wide 火力発電関連ビジネス市場の現状と将来展望」
*4 特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願。1つの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度。


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