ドイツの化学・消費財メーカー ヘンケルの日本法人、ヘンケルジャパン(株)のトランスポート&メタル事業本部は、自動車向けコンポジット部品の技術サポート拠点として、最新鋭の試験機器を備えた「コンポジットラボ」を、同社アジアパシフィック技術センター(横浜市磯子区)内に開設した。ヘンケルでは、日本をはじめアジア全域における自動車業界の顧客企業と連携し、新設されたコンポジットラボを活用することで、コンポジット部品の開発や試験、生産プロセスの最適化を進め、自動車設計における優れたアイデアの製品化を支援する。
近年自動車業界では、コンポジット材料を用いた車体軽量化と燃費向上への取り組みが進められており、コンポジット材料に対するOEMやTier1サプライヤの関心は急速に高まっている。しかしながら導入に際しての要求は非常に厳しく、年間1万点以上の部品生産が可能で、なおかつコスト効率に優れた生産プロセスが求められている。現状では、高速硬化型のマトリックス樹脂を使用したサイクルタイムの短縮が課題となっており、試験設備を保有する信頼できるパートナー企業の重要性が高まっている。 自動車分野向け接着剤、シーリング剤、機能性コーティング剤のリーディングカンパニーであるヘンケルでは、マトリックス樹脂として一般的に使用されているエポキシ樹脂よりも大幅に硬化速度を速め、生産プロセス全体のサイクルタイムを短縮した樹脂製品を開発、ボルボ自動車のリーフスプリングに採用されるなど、コンポジット部品の大量生産を実現している。
今後ヘンケルでは、より高性能なコンポジット材料の開発を進めると共に、技術サポート拠点の新設によって、顧客企業との連携によるコンポジット部品の開発や試験、および生産プロセスの最適化に向けた取り組みを強化する。このたび新設されたコンポジットラボには、主要設備として、高圧樹脂トランスファー成形システム(HP-RTM)が導入されている。このシステムには型締力380トンの成形機が含まれており、試験用金型を用いた試作が可能。またコンポジットラボが開設されたアジアパシフィック技術センターには、既に機械物性測定、レオロジー測定、環境試験に必要な機器が取り揃えられており、加えて耐衝撃性試験用の設備も導入を予定している。
グローバル開発機能の強化
ヘンケルは2016年6月に、同社初のコンポジットラボをドイツ・ハイデルベルクに開設した。今回新たなコンポジットラボをアジアに開設したことは、日本の自動車産業はもとより、全世界の顧客企業に対して高品質なサービスとノウハウの提供を目指すヘンケルの強いコミットメントを表すもの。
ヘンケルの自動車用コンポジットプロジェクト統括マネジャーであるフランク・カーステン氏は、「最新鋭の試験機器を備えたコンポジットラボをアジアに開設したことを誇りに思います。世界の自動車メーカーは、車やトラックの軽量化によって燃費向上やCO2排出削減を進めるなか、これまで用いられてきた材料やプロセスにとらわれず、常に最新技術や新興技術に目を向けています。欧州とアジアに開設されたコンポジットラボは、サイクルタイムを短縮した先端コンポジット材料の可能性について、当社エキスパートチームからOEMやTier1サプライヤの皆さまへの最適な情報提供の場となります。ヘンケルは、バリューチェーンにおける競争優位性を確立することで、パートナー企業に貢献します。また顧客との密接な連携によって、量産に適したコスト効率の高い統合ソリューションを提供してまいります。ヘンケルの製品は、強度と安全性に優れ、より静かで、より軽量で、より耐久性に優れた自動車を実現します」と話している。
ヘンケルは、コンポジット用マトリックス樹脂や接着剤といったコンポジット材料に関する広範なポートフォリオを提供している。マトリックス樹脂のLOCTITE MAX series(ロックタイトマックスシリーズ)は、ガラス繊維や炭素繊維プリフォームを用いたRTMプロセスに適している。同製品には、繊維強化部品に利用されるバインダーや剥離剤も含まれている。またLOCTITEコンポジット用接着剤は、複数素材の接合やアセンブリに適している。これら材料の開発には、RTMプロセスやコンポジット部品のシミュレーションとカスタマイズに関するヘンケルの豊富なノウハウと専門知識が活かされている。