荒川化学工業(株)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研、理事長 中鉢良治)先進コーティング技術研究センター(研究センター長 明渡 純)は、エアロゾルデポジション法(AD法)によるプラスチック基材への低温・低圧でセラミック膜をコーティングする新手法について共同開発した。
AD技術と今回開発した技術によるプラスチック上へのセラミック成膜
荒川化学工業は、シングルナノサイズ以下のシリカ微粒子がポリマー中に均一に分散し、それぞれのシリカ微粒子がポリマーと共有結合を形成した特徴的な化学構造を有する有機無機ハイブリッド樹脂「コンポセラン」の事業展開を行っている。一方、産総研 先進コーティング技術研究センターは、常温固化現象を用いた画期的な無機コーティング法であるAD法を開発し、主に金属・セラミックなどの無機基材へと応用している。
プラスチック材料は、軽量化が可能であることや成型の容易さから、金属材料やセラミック材料からの置き換えが進んでいるが、これらの無機材料が持つ硬さや耐傷性、ガスバリア性などの特性を再現するには至っていない。また、低温でのセラミック製膜を特長とするAD法のプラスチック基材への応用は、密着性、緻密性、透明性などにおいて十分な性能が得られず、実用化には至っていなかった。
今回、共同開発チームは、それぞれ独自の技術を持ち寄り、プラスチック基材上に有機無機ハイブリッド膜を下地として形成し、更にAD法でセラミック膜を付ける手法により、実用的なセラミックの表面コーティングが可能となることを見出した。この技術の応用範囲は極めて広く、自動車に使用されているガラス代替や、フラットパネルディスプレイの品質向上など、各種部材の軽量化や、ガスバリア性向上といった技術革新に貢献すると期待される。
成果の活用は、産総研の先進コーティング技術研究センターと日本ファインセラミックス協会(JFCA)による先進コーティングアライアンス(ADCAL、参加企業40社以上)を通じて協業企業を広く募集し、速やかな商品化を目指す。