太陽ホールディングス(株)は、植物由来の次世代新素材として注目される「セルロースナノファイバー(以下、CNF)」を、世界で初めて電子部品用絶縁材料に使用する独自技術を開発した。
エレクトロニクス製品の小型軽量化により電子部品の高密度化が進んでおり、電子部品に使われる絶縁材料には、高性能化、高信頼性化が求められている。今回、CNFの高強度、低熱膨張率などの特性に注目し、研究の結果、さらに高性能な電子部品用絶縁材料を実現した。
CNFを添加した電子部品用絶縁材料(層間絶縁材)に回路形成した写真
CNFは、植物の繊維をナノレベルまで解きほぐしたもので、最も細いものは直径約3nm(髪の毛の約5万分の1の太さ)。その主な特性は、軽量でありながら高い強度(鉄の5倍の強度で重さは5分の1程度)。また、熱による変形が非常に少なく、半導体に使用されるシリコンと同等の低熱膨張率。そして、植物由来のため、環境負荷が少なく、森林資源が豊富な我が国で、自動車や建築など様々な分野への展開が期待されている。
電子部品のプリント配線板に使われる絶縁材料は、プリント配線板上の配線や半導体などと同等の低熱膨張率化が求められる。一般的に、電子部品用絶縁材料に使われる樹脂は、熱膨張率が高く、充填剤を混ぜ合わせて低熱膨張化させる方法が採られている。しかし、充填剤には絶縁材料を脆くする性質があり、現在の方法では、低熱膨張率化と高強度化の両立に限界があると考えた。そこで同社は、CNFが樹脂中で相互作用をもち、少量でも樹脂物性改善に大きな効果が発現することに着目し、電子部品用絶縁材料に応用することで、さらなる低熱膨張率化を図ると同時に強度を向上させる新たな方法を開発した。
CNFは親水性(水になじみやすく、油脂になじみにくい性質)が高く、一般的な樹脂に均一に分散することは困難。これを解決するため、同社では各種CNF材料と樹脂との組み合わせや、複合化方法を研究し、世界に先駆けて、CNFを使用したより高性能な電子部品用絶縁材料を実現した。