デル(株)は、海洋に漂流し続け環境汚染の原因となっているプラスチックをリサイクルし、IT業界で初めてとなる海洋プラスチックを含んだ梱包材の出荷を開始する。同社の環境維持供給プロセス戦略に基づいた商業レベルの実証プログラムとして、2017年4月30日から世界最小※1の13インチ2-in-1ノートパソコン「New XPS 13 2-in-1」の梱包材の原材料に25%の海洋プラスチックを含んだリサイクル梱包材に移行する。これにより、2017年には、16,000ポンド(=約7,300 Kg)の廃プラスチックの海洋への流入を阻止することを目指す。
また、デルで社会貢献を提唱する俳優のエイドリアン・グレニアー(Adrian Grenier)とLonely Whale Foundationが共同で取り組む、海洋環境の保全に向けたエコシステムに対する世界規模での認識と活動を啓蒙するための情報を梱包材に記載する。さらに、海洋に再び戻ることがないよう、各梱包材にはリサイクル可能な素材であることを示すプラスチック材質表示識別マークを印字する。デルの梱包材部門は、製品パッケージの重量ベースで93%以上リサイクルできるようになり、循環型経済の一部として再利用できるようなデザインと部材調達が可能になる。
海洋プラスチックの供給プロセスには複数の段階がある。まず、プラスチックが海洋に到達する前に、河川や海岸で海洋プラスチックを回収する。次に、海洋プラスチック(25%)にボトルや食品容器などからリサイクルされたHDPE(残る75%)を混合し、使用済みプラスチックを処理、精製する。最後に、できあがったリサイクルプラスチック片を新しい梱包材に成型し、出荷する。
さらに、デルの実証プログラムには、2016年3月にハイチで成功したフィジビリティ・スタディ(実現可能性調査)を受けた業界初の環境プログラムがある。デルは、長年にわたって製品や梱包材にサステイナブルな素材やリサイクル素材を活用しており、2008年には使用済みの再生プラスチックをデスクトップPC製品に利用し、2017年1月時点で約22680トン(5000万ポンド)のリサイクル素材の製品利用を目指す「Dell 2020 Legacy of Good計画」の目標を達成した。デルは、製品や梱包材の材料として他所で排出された廃棄物から得た素材を使用して再生資源を循環利用することに重点を置いている。また、デルは初めてPCとモニタに電子廃棄プラスチックとリサイクル・カーボンファイバーを再利用し、現在も提供し続けている。
デルは、エイドリアン・グレニアーおよびLonely Whale Foundationとの連携を通じて海洋環境保全の理解向上に貢献しており、海洋が直面している問題を人々に身近に感じてもらうために仮想現実(VR)テクノロジーを活用。最近の調査※2では、2010年の1年間だけで管理を誤った480~1,270万トンのプラスチックが海洋に流入したことが報告されている。海洋環境保全を推進するOcean Conservancyが2015年に行った調査によると、海洋プラスチックの60%はアジア(中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)で発生している。東南アジアで海洋プラスチックの排出量が最も多いのは、インドネシア。デルは部材調達戦略に関するホワイトペーパーを発表したほか、海洋プラスチックの問題に世界規模で対応するための業界横断的な作業部会を開催する予定。
※1 2016 年11 ⽉に発表された「Principled Technologies」の調査結果に基づき、ノートブックの全表⾯積を基準としている。全レポート。
http://www.principledtechnologies.com/Dell/XPS_13_9365_comparison_0916.pdf
※2 J. R. Jambeck、R. Geyer、C. Wilcox、T. R. Siegler、M. Perryman、A. Andrady、R. Narayan、K. L. Law、「Plastic waste inputs from land into the ocean.(陸上から海洋へのプラスチック ゴミの流入)」、『Science』誌、2015; 347 (6223): 768 DOI: 10.1126/science.1260352