電波吸収体の開発・製造・販売を手掛ける(株)新日本電波吸収体は、自動車用・工業用ゴムおよびプラスチック部品を製造販売する(株)タケチと共同で、車を安全に自動走行させるミリ波レーダーを正しく作動させる大豆の皮を使った電波吸収シートを開発した。これは、従来にない厚2mmの薄さでミリ波広帯域の電波(76~110GHz)を吸収するもの。
現在、2020年試験運用開始を目標とする自動車の自動安全走行システムおよび自動ブレーキに搭載されるセンサーのキーテクノロジーとして、ミリ波車車間レーダー(76GHz)、ミリ波近接レーダー(77GHz)のシステム開発が進められている。ミリ波電波吸収体は、これらのレーダーセンシングを正しく作動させるため、不要な電磁波の漏れを吸収する部材とし用いられてきた。しかしながら、従来採用されて来た電波吸収体は、狭帯域(76GHz)だけを吸収し、かつ薄型電波吸収シートは製造工程においてミクロン単位での厚さ精度や無機誘電材料のハイレベルでの均一充填・分散が必要であった。そのため、歩留まりが悪く価格にもそれが反映されてきた。
こうした問題を解決するため、両社では、山形大学工学部飯塚研究室(飯塚博工学部長・博士)で研究開発が進められてきた植物由来材料(大豆の皮)を高温で焼成した中空構造のカーボンを用いて新たな電波吸収シートを開発した。この製品の評価には国内有数のミリ波電波吸収性能評価の設備を有する防衛大学校通信工学科亀井准教授の電波評価施設が用いられた。
今回開発した電波吸収体により、広い帯域でかつ高い電波吸収をもつ電波吸収シートが実現する。その結果、量産時の歩留まり向上し生産性が向上する。また、中空状のカーボンは非常に軽量であるため、自動車の車体の軽量化そのものに寄与する。これにより、広帯域、薄膜、軽量の3拍子そろった電波吸収シートの量産が可能になる。
内閣府の計画では2025年以後自動安全走行システムの市場化を目指しており、これに対応して、このミリ波レーダーシステムおよびそれに使用されるものとして、電波吸収シートも更に普及すると予想される。
(株)タケチは、2月15日~17日に東京ビッグサイトで開催される「新機能性材料展2017」に出展する。ブースは、東2ホール 2J-22の四国産業・技術振興センターブース内。