日本製紙(株)は、微粒子化した無機物と紙の原料であるパルプ(セルロース繊維)を相互に定着・複合させる独自技術により、無機物の特徴・特性を備えた機能性材料を開発した。この技術を用いることで木材パルプをベースに無機物の持ついろいろな特性を付与した新しい素材を提供することが可能となる。
無機粒子は、コピー用紙や新聞用紙など通常の紙の製法では、白さや不透明性などを高める目的で使われる。しかし、無機粒子は紙の原料であるセルロース繊維に直接定着しないので、多くを配合することはできなかった。このたび開発した新しい機能性材料は、通常の紙の製法とは異なり、まずセルロース繊維の表面に無機粒子を高密度に定着(図1)させることで、無機粒子とセルロース繊維の複合体を作る。そして、これを原料として紙を作ることで無機物の配合を最大90%まで高めることができるようになり(図2)、無機物と紙・セルロース繊維の持つ特性・長所を併せ持った新しい素材を提供することが可能になった。また、新しい機能性材料は、ウエットパルプ、シート、ボード(貼り合わせ)、パウダーなど、必要に応じた形態にすることができるとともに、再生可能な「木」を原料としていることからリサイクル適性も兼ね備え、資源循環型の持続可能な社会の構築に貢献する素材として期待できる。 同社は、この機能性材料を"ミネラルハイブリッドファイバー"と名付け、「ミネルパTM(英文名 MinerPaTM)」という商標で、商標登録を申請した。難燃性のある壁紙やパーティションボード、消臭・抗菌機能があるペーパータオル、放射線遮蔽効果のある建材など、様々な分野で用途開発を図り、商品化を進めていく。
図1 無機粒子を複合化した繊維の電子顕微鏡写真(A:3,000倍、B:50,000倍)
(参考 C:セルロース繊維、3,000倍、D:一般的な填料、50,000倍)
図2 シート断面の電子顕微鏡写真(白色部分が無機分)
E:ハイブリッド材料、無機粒子量74%
F:一般的な新聞用紙、無機粒子量15%
G:ハイブリッド繊維の斜断面(中央灰色部分が繊維一本の断面、周囲の白色部分が無機分)
■「ミネルパTM(MinerPaTM)」ロゴ
ネーミングの由来である「ミネルヴァ(ローマの女神)」が知恵の象徴であることから、古代より知恵のシンボルとして用いられてきたフクロウをマーク化。ミネラル(鉱物)の硬さとパルプの柔らかさをロゴに落とし込み、素材を表現。
なお、この新規ハイブリッド素材は、2月15日(水)~17日(金)に東京ビッグサイトで開催される「新機能性材料展2017」の日本製紙ブースに出展される。