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【プラズマバブル】NICT、観測レーダをタイ国内で運用開始

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 国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)では、電波の伝わり方に関する予報や警報を発信することを目的に、長年にわたり電離圏及び太陽活動を始めとする宇宙天気の観測や予報に関わる研究を行っており、1988年から「宇宙天気予報」を毎日配信している。近年、様々な分野で、宇宙天気情報のニーズが高まりつつあり、特に航空業界では、2019年11月7日に国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気センターが情報提供サービスを開始した。NICTも当該センターの一員として、通信、衛星測位、放射線被ばくに関する情報を提供している。
 我々の社会生活において、宇宙天気が及ぼす極めて大きな影響の1つとして、電離圏の乱れに由来する衛星測位の誤差の増加が挙げられる。電離圏の乱れの大きな原因の1つは、地球磁場の赤道(磁気赤道)を中心に発生する「プラズマバブル」。プラズマバブルの付近では、通過する電波が乱れるため、衛星測位の精度が低下したり、衛星測位や通信ができなくなったりすることがある。
 現在、人工衛星を利用した農業や建築分野での無人運転など、高精度ナビゲーションの実利用が進んでおり、既に社会において欠かすことのできない重要なインフラとなっている。プラズマバブルは、磁気赤道域を中心とした低緯度のみならず、中緯度に位置する日本などでも測位誤差を引き起こすことから、その継続的な観測や発生の予測を行うことが近年強く望まれてきた。
 今回、NICTはタイ王国モンクット王ラカバン工科大学(KMITL)と共同で、プラズマバブル観測のためのレーダをKMITLチュンポンキャンパスに設置し、2020年1月17日から運用を開始する。チュンポンは、プラズマバブルの発生領域である磁気赤道に近く、その発生直後の状況をいち早くとらえることができるため、プラズマバブルを観測するレーダの設置をするには最適な場所である。
 このレーダは、東西90mの敷地内に等間隔に設置した18本のアンテナから成るレーダシステムで、VHF帯(39.65 MHz)の電波を利用している。レーダから発射された電波は、電離圏のプラズマバブルが作り出す不規則な形状によって反射され、戻ってくる電波を観測することで、プラズマバブルの位置や速度を把握することができる。
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 プラズマバブルは、発生後に東に進んで赤道から中緯度まで発達することもあり、日本南部に電波障害をもたらすことがある。
 同レーダの設置によって、プラズマバブルの定常的な観測が可能となり、人工衛星を利用した高精度測位の、日本や東南アジア域への農業・建築分野などでの利用の拡大実現に大きな進歩となることが期待される。
 今後、同レーダシステムに加え、日本やタイ国内の衛星測位受信機網も利用して、プラズマバブルが様々な衛星測位手法に与える影響を調査するとともに、その影響を軽減する研究を進め、宇宙天気予報サービスの1つとして提供していく予定。これにより、将来、プラズマバブルに影響されることのない高精度測位の更なる利用拡大に向けた宇宙天気情報サービスの提供を進める。


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