関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人(株)は、世界初のポリ乳酸の積層フィルムをロール状にした圧電体「圧電ロール」を開発した。
圧電体は、圧力を加えると電気エネルギーを発生し、逆に電気エネルギーを加えると伸縮する特性を有する物質の総称で、その特性を利用してスイッチなどのセンサーやスピーカーなどのアクチュエーター(駆動体)として使用されている。圧電体としては、一般的にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられているが、セラミックであることから柔軟性に欠けることや、鉛を含むことで用途が限定されることなどが課題となっている。一方、有機物であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が圧電体として用いられることもあるが、温度変化により電位が発生する性質(焦電性)を有することから、用途が限られるという課題があった。さらにポリ乳酸も圧電体として実用化されているが、圧電効果の指向性の問題から積層数の調整や大面積への対応が難しいとされており、普及に向けた要素技術の開発が進められている。
こうした中、関西大学と帝人は2012 年に、ポリL乳酸とポリD乳酸を積層させることで強力な圧電性能を発揮し、柔軟性と大面積への対応を実現した圧電積層フィルムを共同開発した。現在、その市場開拓を進めているが、このたびその技術を発展させることにより、ポリ乳酸の圧電積層フィルムをロール状に巻回した圧電ロールの開発に成功した。
このたび共同開発した圧電ロールは、数μmのポリ乳酸フィルムを数百~数千の間で巻回したもので、持続的に荷重をかけることで電圧(最大電圧の90%以上)が最大2 分程度持続するという、従来のPZTやPVDFにはない新規特性を有する圧電体。
また、これまでフィルム形状では実現できなかった荷重依存的に電圧が発生・減衰するという特性を有し、さらには、PZTの弱点であった柔軟性の欠如を克服するとともに、大面積への対応や、巻回数による圧電性能の持続時間の調整が可能となるため、センサー用途としての活用可能性を拡大することが期待できる。
関西大学と帝人は、圧電積層フィルムの開発に加え、2015年には圧電ファブリックの開発にも成功しており、このたびの圧電ロールの開発を加えて、世界中でニーズが高まる環境配慮型圧電体の用途開拓を強力に推進する。今後は、顧客ニーズに応じた圧電性能や加工ノウハウを集積し、センサー用途や起電エネルギー用途を中心に顧客との共同開発に取り組んでいく。