ユニチカ(株)は、金属(銅など)およびポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルムに良好な接着性を有し、かつ金属の腐食による接着性の低下を防ぐことができるポリエステル樹脂接着剤を開発した。従来、防錆処理と接着層塗工は、それぞれが別の工程であったが、開発品を用いることにより、一度の塗工で2つの機能を同時に発現することができ、工程簡略化に役立つ。また、メッキレスで金属の腐食を抑制できる環境にも配慮した製品となっている。
今回の開発品は、同社の飽和共重合ポリエステル樹脂「エリーテル」の耐腐食性グレードとして新たにラインアップする。
I.開発の背景について
近年の急速なエレクトロニクス化により、様々な分野で高度な電子機器を搭載するケースが増えている。例えば、自動車や通信端末などでは、小型化にも対応できる強力な接着性だけでなく、屋外など過酷な環境で使用するための腐食に対する耐性も求められ、これらの機能が両立できる材料が望まれている。このようなニーズが高まる中、当社のエリーテルが長年培ってきた、ポリエステル樹脂設計技術、ワニス調合技術、量産製造技術を駆使することで接着性と耐腐食性を両立する接着剤の開発に成功した。
II.開発品の特長について
1.優れた接着性
銅、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属やPET、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどの樹脂フィルムに対して接着性が良好。
2.優れた耐腐食性
通常は金属の腐食を防止するために様々なメッキ処理が施されますが、本開発品はメッキレスで金属の腐食を抑制することができる環境配慮型製品。
・耐腐食性比較テスト①
評価の方法としては、PETフィルムに接着剤を塗工し銅と貼り合せる。貼りあわせた後、PETフィルムの上から1mm×1mmのマス状に100個の切込みを入れて塩水を噴霧する。塩水噴霧後にPETフィルム上から粘着テープを貼付け接着が維持できているかを確認します。下記のグラフに示すように、従来品は切込みから塩水が浸透し銅の腐食を引き起こして接着強度が低下するのに対して(グラフ右)、本開発品は、塩水噴霧処理後も初期と変わらない接着性を維持していることがわかる(グラフ左)。
・接着性の評価方法:JIS K5600-5-6(クロスカット法)に準じて、1mm×1mmのマスを100個作製し、粘着テープ剥離後に銅板にPETフィルムが残った数を示す。
・塩水噴霧処理の評価方法:JIS Z2371(中性塩水噴霧試験法)に準じて、100マス作製後に塩水噴霧をおこなった。
・耐腐食性比較テスト②
評価の方法としては、銅箔にコーティングし被膜を形成する。被膜の上から切れ込みを入れて塩水に50℃×24時間の条件で浸漬した後の外観を評価する。下記の写真に示すように従来品は切れ込みから腐食が生じて銅箔が変色してしまっているのに対して(写真右)、開発品は切れ込みからの塩水の浸食を防ぎ、銅箔の変色が起こらない(写真左)。