(一社)日本印刷産業連合会(JFPI)では、印刷産業界における各企業の環境問題に対する取組みを促進するとともに、印刷工場の環境改善および印刷企業に対する社会の一層の支持・理解を獲得することを目的に、2002年度から印刷産業環境優良工場の表彰制度を実施しているが、2019年度の第18回印刷産業環境優良工場表彰の推薦工場が決定した。軟包装グラビア印刷関連では、JFPI奨励賞推薦の一般部門で、全国グラビア協同組合連合会所属の、(株)ダイドー本社工場、八潮化学(株)本社工場の2工場が推薦されている。
表彰は、9月13日(金)に開催される「2019年 印刷文化典・記念式典」にて執り行われる。
JFPI印刷産業環境優良工場表彰審査委員会は、印刷産業環境優良工場表彰推薦工場びその理由として次にようにコメントしている。
<総 評>
第18回を迎えた印刷産業環境優良工場表彰は、一般部門、小規模事業所部門合計59工場からの応募があった。昨年は設立以来初めてとなる、2社が同時に経済産業大臣賞を受賞したが、今年は昨年のような他の模範となるレベルの工場が見当たらず、経済産業大臣賞推薦は該当工場無しとなった。
受賞工場の特徴として、環境への取り組みに対するトップの意向を従業員に浸透させ、従業員の健康を守るための職場環境の改善や、地球環境への対応も考慮した省エネ活動(温暖化防止)やVOC排出抑制(大気汚染防止)などの取り組みが行われている他、地域社会に配慮した騒音・悪臭等の対策や、社会貢献としての工場見学の開催、インターンシップの受け入れ等、環境や地域社会への対応をベースとした経営を実践している会社が多く見受けられた。
その他の会社も廃棄物の削減、GP認定品の採用や地域の環境問題への参画など、自主的な取り組みが機能して成果を上げており、今後も水平展開できるモデル事例としての活用が望まれる。
<経済産業省商務情報政策局長賞推薦:1工場>
■一般部門
(株)研文社 尼崎工場
所属団体…全日本印刷工業組合連合会
本工場は、2012年1月に操業開始した兵庫県尼崎市の工業専用地域にある、商業印刷物やオンデマンド印刷を行う、正規従業員46名の会社である。昨年の会長賞受賞に続いての応募であったが、2007年6月に取得したISO14001に基づいた環境活動が継続して行われており、「VOC濃度測定と排出抑制」「騒音測定と発生源対策」「エネルギー使用量の把握と省エネ対策」など、実績の把握と改善が継続して行われレベルアップしており、また、特色インキの種類を基準化して得意先に提案することによる廃インキの削減や、環境情報の公開、近隣の清掃等を進めるとともに、個人別の提案活動とそのフォローアップを毎月実施しており、トップから第一線の従業員まで工場が一体となって取り組んでいることは評価に値する。
<(一社)日本印刷産業連合会会長賞推薦:4工場>
■一般部門:2工場
光写真印刷(株)
所属団体…全日本印刷工業組合連合会
本工場は、1931年3月に操業開始した東京都大田区の工業専用地域にある、会社案内、カタログ、会報誌等の制作から印刷・製本加工まで行う、正規従業員63名の会社である。第15回に奨励賞を受賞して以来の応募であるが、エコアクション21の認証取得やGP工場認定等の環境マネジメントシステムを積極的に取り入れ、東京都VOC対策アドバイザー制度を活用して職場環境測定を定期的に実施するとともに、VOC警報器をいち早く導入し、VOCの発生状況を把握した上で対策を実施する等、従業員の健康管理に前向きに取り組んでいる。また、GP認定品の積極的な採用や、省エネ施策の実施、環境レポートの公開を行う他、オープンファクトリーの開催等、地域に根差した活動も行われている。
足利印刷(株)
所属団体…全日本印刷工業組合連合会
本工場は、2000年1月に操業開始した栃木県足利市にある、カタログ、パンフレット、チラシ等の商業印刷物の製造を行う、正規従業員48名の会社である。第15回に奨励賞を受賞して以来の応募であるが、「足利で一番きれいな会社」をスローガンに5Sを中心とした活動を着実に展開しており、専門家の調査・分析結果を取り入れたVOC排出抑制対策の取り組みや、使用実績を毎月フォローしながらきめ細かく省エネ対策を展開するとともに、廃棄物の削減に地道に取り組むなど、自社のスローガンに則り環境に拘った活動を進めていることが伺える。また、近隣の清掃活動や工場見学の受け入れ、工場緑化の取り組みなど地域社会への貢献も成果をあげている。
■小規模事業所部門:2工場
(有)オザワ
所属団体…全日本製本工業組合連合会
本工場は、1993年12月に操業開始した東京都荒川区の準工業地域にある、複写伝票を中心に商品券、メモ帳等の加工を行う、正規従業員12名の会社である。断裁機・折機・手加工が中心の工場であり、環境負荷は少ない業態であるが、2013年3月にGP認定工場を取得しており、「化学物質の取り扱い指示書」や「化学物質リスクアセスメントシート」を活用しながら、従業員の健康管理に配慮した活動が行われている。また、騒音・振動・悪臭対策への取り組みや、限られた敷地での花壇・菜園の設置による工場緑化の取り組み等、自社で出来ることを着実に実行し成果を上げている。
(有)篠原紙工
所属団体…全日本製本工業組合連合会、全日本印刷工業組合連合会
本工場は、1995年5月に操業開始した東京都江東区の準工業地域にある、書籍、会社案内、パンフレット等の製本加工を行う、正規従業員15名の会社である。今回初めての応募であるが、社会への貢献を通じて従業員の成長を願う社長の思いを経営理念として制定し、従業員にも浸透させており、周辺の環境に配慮したVOC排出抑制や騒音対策に着実に取り組んでいる他、工場見学会での環境活動の啓蒙や、社会科見学の受け入れ等、地域に根差した幅広い活動を展開している。また化学物質についての勉強会や設備の安全講習など、従業員が安心して働ける活動が定着していることが伺える。
<(一社)日本印刷産業連合会特別賞推薦:1工場>
オオゼキ写真印刷(株)
所属団体…全日本印刷工業組合連合会
工場は、1991年4月に操業開始した静岡県浜松市の1種住居地域にある、カタログ、会社案内、パンフレット等の制作から印刷・加工まで行う、正規従業員45名の会社である。10年前にエコアクション21の認証を取得し、環境計画に基づいた活動が行われており、大気・水質・騒音・振動等の対策や省エネ活動、廃棄物の削減に地道に取り組んでいる。また、住居地域にある工場として、毎週行う工場周辺の清掃や、廃液の漏えい対応訓練等、工場周辺への対策もなされている。比較的規模の小さい会社であるが、10年前から16ページに渡る「環境経営レポート」を毎年作成し、社内外に発信しており、環境への取り組みをベースに会社の永続的な発展と従業員の雇用確保を目指す経営者の強い意思と、それを受け止め地道に取り組む従業員との一体となった活動が行われている。
<(一社)日本印刷産業連合会奨励賞推薦:7工場>
■一般部門:3工場
(株)ダイドー 本社工場
所属団体…全国グラビア協同組合連合会
八潮化学(株) 本社工場
所属団体…全国グラビア協同組合連合会
マルワ工業(株) 春日井本社工場
所属団体…全日本スクリーン・デジタル印刷協同組合連合会
■小規模事業所部門:4工場
(株)佐久印刷所 本社工場
所属団体…全日本印刷工業組合連合会
(株)文伸 BUN-SHIN FACTORY
所属団体…日本グラフィックサービス工業会
タカラ印刷(株)
所属団体…全日本シール印刷協同組合連合会
(株)協和テック 本社工場
所属団体…全日本光沢化工紙協同組合連合会、全日本印刷工業組合連合会
上記7工場は、環境優良に努力を払うとともに改善が認められ、特にその活動に特色があることから、その業種の特殊性や企業規模を鑑み、今後のさらなる環境改善を期待し、(一社)日本印刷産業連合会環境優良工場奨励賞に推薦するものである。