BASFとヒュンダイモーターは、「化学の力」を豊富に取り入れ、空気力学を応用した設計と特別な高性能テクノロジーを組み合わせた新たなコンセプトカーを共同開発した。このコンセプトカー「RN30」は、10月19日~26日までドイツ・デュッセルドルフで開催された K Fair(国際プラスチック・ゴム産業展)で展示された。
BASF のパフォーマンスマテリアルズ事業本部プレジデントのライマー・ヤーン氏は、「BASF が RN30 において重要な役割を担うことができ、非常に誇らしく思います。両社の素晴らしいパートナーシップとイノベーションの力を基盤に、ヒュンダイモーターは、当社の素材性能をこのユニークなコンセプトの中で実現してくれました」と述べている。 このコンセプトカーは、レーシングカーを運転する純粋な喜びを具現化し、ヒュンダイは多岐にわたる製品ポートフォリオと自動車への熱意をもとに、BASF の素材を活用することで、斬新なデザイン・設計を実現した。
自動車の性能向上と軽量化を実現するプラスチック
サーキット向けに設計されたレーシングカーである RN30 は、軽量化と低重心を実現し、急なコーナリングに対しても、素早い対応を可能にする。 重量を減らすための手段として、一般的に高性能車には炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使用されるが、RN30 は CFRP を使うという固定概念から離れ、高性能車にとって最適な、BASF の新たな軽量素材の提案を採用した。一例として、BASF の硬質インテグラルフォームである Elastolit®(エラストリット)や、ボディパネル用に開発された反応射出成形(RIM)システムは、その優れた流動性から、RN30 のフェンダーやスポイラーのような非常に難易度の高い設計を可能にしている。高品質かつ軽量であり、クラスAサーフェスなので直接塗装することも可能。また、RN30 のトランクフロアには半構造のサンドイッチソリューションが取り入れられており、大幅な軽量化と製造工程の高効率化を実現している。長繊維強化の表面層とペーパーハニカムで構成される超軽量、高強度のサンドイッチ構造を実現するBASFのスプレー式含浸ポリウレタン、Elastoflex® E(エラストフレックス)は、こうした用途に最適な素材。
安全性を最大限に確保する高耐久性素材
最高速度で走行中のドライバーにとって、品質は妥協を許さないものであ り、耐久性と信頼性の高い素材が重要。BASFのInfinergy®(インフィナジー)は、世界初の熱可塑性ポリウレタン発泡粒子。長期的な耐久性と優れた復元力があるため、塗装され、RN30のロールバーパッドに使用されている。一方で、スピードは制御できなければ意味がない。高速で走行する車両には高性能のブレーキシステムが必要。BASFが開発した画期的なブレーキフルードHydraulan®(ハイドラウラン)406 ESIは、あらゆる技術的課題を克服し、法規制上の厳しい要件を満たす。
これまでになく複雑でコンパクトなRN30の電子部品には、BASFの新た なUltramid® Advanced N(ウルトラミッド アドバンスト N)が採用され、小型化、機能統合、設計自由度の向上を可能にしている。電子コンポーネントだけでなく、耐熱性や高腐食性が要求される部品、様々な燃料と接触するエンジンやギアボックス周りの構造部品にも使用できる。
レース環境に最適化された内装設計
内装設計の工程では、RN30のデザイナーとヒュンダイモータースポーツのレース専門家が緊密に連携し、ドライバーが走行にしっかりと集中できるレイアウトを生み出した。ドライバーの体に完璧にフィットするレース用バケットシートと、車体強度を向上させる一体型ロールケージが、危険な状況下においてもドライバーを保護する。
シートシェルやシートパンのような複雑な形状を持つ部品に、連続繊維で 強化された射出成形体向けの熱可塑性コンポジットシステムUltracom®(ウルトラコム)を提供している。これは最適な強度と剛性を維持しながら、シートの軽量化を可能にする。テープやラミネートと射出成形を組み合わせることで、シートシェルとシートパンを構成している。こうした部品を実現する上で、BASF独自のシミュレーションツールであるUltrasim®(ウルトラシム)や、パーツテスト設備および処理技術であるUltratest™(ウルトラテスト)が、シートコンポーネントの全製造工程において大きな役割を果たす。 レーシングカーはエアコンのような不要なバラスト重量(重量バランスを調整するウェイト)を避けるため、可能な限り、無駄が省かれた設計をしている。RN30のウィンドウを太陽熱から保護しているBASFの近赤外線反射フィルムのような熱管理ソリューションが、車内を涼しく、快適な状態に保つことを可能にしている。この有機透明フィルムは、メタルフィルムと異なり、赤外線だけをカットし、光やGPS、電話の信号などは通すように設計されている。
Acrodur®(アクロデュア)は天然繊維を強化し、環境に優しく寸法安定性に優れた、軽量化を実現する水性バインダー。RN30のダッシュボードやドアパネルのような複合材に使用されており、質の高い設計を可能にする。
カラーと塗料で生み出すデザインの可能性
色は想像力や個性を引き出す。BASFの水性塗料ColorPro IC(カラープロ IC)の「Performance Blue」(パフォーマンスブルー)は、幅広い色スペクトル、柔軟性、類のない品質を誇る個性的なカラー塗料の最新色の1つ。RN30で魅力的な外装を実現した。また、洗浄を容易に する効果を持つBASFの革新的なクリアコート、iGloss®(アイグロス)が、微細な擦り傷を大幅に低減する。内装では、BASFの特許取得済みトランスファーコート技術であるvalure™(バリュアー)が質の高い内装表面を作り出し、設計の自由度を高め、レザーなど柔軟性のある様々な基材におけるユニークな素材の組み合わせを実現する。表面は、通気性と柔らかな感触を備えている。
コンセプトを形に: 新たな「ヒュンダイ i30」シリーズモデルに「化学の力」で様々なソリューションを投入
新しい「ヒュンダイ i30」は、「a car for everyone」というコンセプトのもと2017年初頭に発売予定。これによって、BASFのソリューションがコンセプトから現実の「形」となる。BASFのエンジニアリ ングプラスチックであるUltramid®(ウルトラミッド)は、「ヒュンダイ i30」のトランスミッションオイルパンやシリンダーヘッドカバー、エアインテークマニホールドなどに使われ、パワートレインやシャーシに対して、金属から樹種へ代替するというトレンドを、BASFは今後も業界を牽引していく。
BASFは、自動車の内燃機関からの有害な排気を低減する取り組みにおける自動車業界の主要パートナー。ヒュンダイ i30に使われているEMPRO™ TWC 触媒技術には、炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)の還元において従来の三元触媒の性能を大幅に上回る。
Catamold®(キャタモールド)は、金属射出成形向けの材料。従来の精密鋳造材料よりも50%軽量で、設計の自由度が高まるため、ヒュンダイ i30のデュアルクラッチトランスミッションのパーツ製造に使用されている。
微細発泡ポリウレタンCellasto®(チェラスト)は、ジャウンスバンパー、トップマウントの製造に用いられている。これによって騒音や振動、ハーシュネスを最小限に抑え、i30 の走行快適性を高めている。