大日本印刷(株)(DNP)は、液体窒素を使った-150℃の凍結にも耐えられる、再生医療用の細胞の凍結保管に最適なプラスチック容器を開発した。
同容器は、テラファーマ(株)(本社:東京 社長:宮澤準一)が製造を担っている再生医療等製品の治験における製品容器として採用されている。
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(左)内容物を入れてヒートシールで密封 (右)内容物を入れる前
【開発の背景】
再生医療の分野では、患者様の細胞を培養・加工した細胞製剤の開発および実用化が推進されている。細胞製剤は凍結して輸送することが多く、培養した細胞は凍結保管される。凍結保管は、細胞を凍結保存液の入った容器に入れ、その容器を保存用タンク内の液体窒素に直接漬けこむ方法(液相保管)と、液体窒素の冷気によって冷やす方法(気相保管)がある。凍結保管用の容器は主にチューブ形状で、スクリューキャップで密封しているが、キャップのすき間から液体窒素が侵入することによる細胞や組織の汚染、気圧変化によるチューブの破裂、キャップ開封時の内容物の飛散という品質面や安全面の課題があった。
これらの課題に対して今回DNPは、液体窒素による-150℃の凍結にも耐えられる、凍結保管に最適なプラスチック容器を開発した。この容器は、細胞や組織を容器に入れた後にチューブの先端部分に熱を加えて密封するヒートシール方式のため、汚染や破裂の課題が改善する。また、注射器を用いて内部の細胞や組織を直接吸い上げるため、内容物が飛散する課題も改善できる。
DNPは、精密なパターニングやコーティング等の印刷技術、画像処理等の情報技術、医療・バイオテクノロジー関連の技術を融合し、超高齢社会における人々の健康寿命の延伸などをサポートする製品・サービスの開発に取り組み、ライフサイエンス事業の拡大を図っている。その一環としてこれまでに、細胞培養用ディッシュや不妊治療用ディッシュなどを開発してきたが、今回のプラスチック容器の開発によって、再生医療分野での更なる貢献をめざす。
【新開発の凍結保管向け容器の特長】
○液体窒素による凍結保管について、厚生労働省が定める医薬品の規格基準書の「日本薬局方」に適合し、滅菌保証した容器。液体窒素を使った-150℃の凍結保管に耐えうる性能がある。
○キャップやゴム栓を使うスクリューキャップ式ではなく、容器を直接ヒートシールして密封する構造のため、内容物の汚染を防ぐだけでなく、使用時の効率的な作業が可能。また、小型ヒートシール機で密封できるため、少量・多品種のニーズに適している。
○最適なプラスチック素材を選定するとともに、形状を精密に設計することで、細胞の付着やチューブ内の液残りを少なくすることが可能になった。
〇注射器で直接容器を穿刺して細胞製剤の内容物(培養した細胞や組織)を吸い上げるため、内容物飛散の課題が改善する。スクリューキャップ式や、はさみでヒートシールを開封する場合と比べて作業効率も改善する。
○容器の容量はカスタマイズできる。
【今後の展開】
DNPは、同容器を再生医療関連の製品などを手がける企業や医療機関に販売し、2022年までに年間5億円の売上を目指す。
<テラファーマ株式会社について>
テラファーマ株式会社は、2016年12月7日に公立大学法人和歌山県立医科大学と医師主導治験の実施に係る契約を締結し、同治験での治験製品を製造している。日本初となる膵臓がんに対する再生医療等製品として、2022年内の薬事承認申請を目指している。