HP Inc.(以下「HP」)は、2018 IMTS(シカゴ国際工作機械見本市)にて、最終製品として利用可能な金属パーツの量産に対応する、世界で最も先進的な金属3Dプリンティングテクノロジー「HP Metal Jet(エイチピーメタルジェット)」を発表した。
「HP Metal Jet」は、他の3Dプリンティング方式と比較して最大50倍の生産性(*1)を大幅な低コスト(*2)で実現する。HP Metal Jetは、製造業のリーダー企業であるGKN Powder MetallurgyとParmatechの工場に最終パーツの生産機として導入されている。顧客には、グローバル企業のフォルクスワーゲンやWilo、Primo Medical Group、OKAY Industriesをはじめとする革新的なバーティカル市場のリーダー企業が含まれる。
HPは、設計と製造の方法を変革するというミッションの一環として、「Metal Jet Production Service」(*3)も発表した。これにより、世界中の顧客が最新の3Dによるパーツ設計を活用し最終パーツを量産できるため、長期的な生産ロードマップに「HP Metal Jet」を組み込むことを可能にする。
HPのCEO兼社長であるディオン・ワイズラー(Dion Weisler)氏は次のように述べている。
「私たちは、12兆ドルの規模を持つ製造業界を変革するデジタル産業革命の途中にあります。HPは3Dによるプラスチックパーツの量産を開拓しこの変革をリードしてきました。今後は画期的な金属3Dプリンティングテクノロジーである『HP Metal Jet』によりその変革を加速してまいります。自動車、工業製品、医療セクターだけでも毎年数十億個の金属パーツが生産されており、このテクノロジーは極めて大きな 影響を与えるものと予想されます。『HP Metal Jet 3Dプリンティングプラットフォーム』は、スピード、品質、経済性に関する問題を解決し、お客様がデジタル時代において新たなソリューションの設計、製造、供給方法について完全に見直すことを可能にします」
HP Metal Jetは、HPの30年以上に及ぶプリントヘッドと高度な化学のイノベーションを活用した、画期的なボクセルレベルのバインダージェッティングテクノロジー。
430 x 320 x 200mmの造形エリアサイズ、4重に冗長化されたノズルと2本のプリントバー(*4)、バインダーの大幅な削減を実現し、他の金属3Dプリンティングソリューションと比較して高い生産性(*5)と信頼性を、低い導入コストと運用コスト(*6)で可能にする。HP Metal Jetは、ステンレススチール製の最終パーツの提供から開始し、ASTM(米国試験材料協会)とMPIF(Metal Powder Industries Federation)規格(*7)を満たす機械的特性を提供する。
「HP Metal Jetテクノロジー」により業界を変革
HPは業界初のコラボレーションとしてGKN Powder Metallurgyと提携し、同社の工場にHP Metal Jetを導入し、フォルクスワーゲンとWiloを含む自動車や業界をリードする企業向けに機能的特性を持つ金属パーツを生産する。GKN Powder Metallurgyは、粉末冶金技術を用いた材料と製品を製造するリーディングカンパニーであり、GKN Sinter Metals、GKN Hoeganaes、GKN Additive Manufacturingを含むブランドを 展開している。同社は年間30億個を超える部品を生産しており、早ければ2019年にもHP Metal Jetによる最終製品として利用可能なパーツをさまざまな業界の顧客向けに量産する予定。
GKN Powder MetallurgyのCEOであるピーター・オバーパーライター(Peter Oberparleiter)氏は次のように述べている。
「私たちは3Dプリンティングによる量産という未来に向け、新たな時代への転換点にあります。HPの新しい『HP Metal Jetテクノロジー』により、従来はコストがかかり実現が難しかった機会を活かすことで、私たちはビジネスを拡大することが可能になります。弊社のDNAとデジタルでネットワーク化されたシステムを使う粉体生産と金属パーツ処理に関するノウハウは、積層造形のバリューストリーム全体における工業化の推進を可能にします。HPとGKN Powder Metallurgyの力を合わせることで、私たちは『HP Metal Jetテクノロジー』の経済性と技術的優位性により、お客様の生産性と能力を新たなレベルにまで高めることができるでしょう」
世界最大かつ最も先進的な自動車メーカーの1つであるフォルクスワーゲンは、同社の長期的な設計と生産ロードマップにHP Metal Jetを組み込んでいる。
フォルクスワーゲン、GKN Powder Metallurgy、HPによる連携により、パーソナライズキーホルダーや外部に取り付けるネームプレートなどの、マスカスタマイゼーション製品を短時間で検討できるようになった。HP Metal Jetの活用に関するフォルクスワーゲンの複数年計画には、シフトノブやミラーマウントなど、構造的に大きな要件を伴う、より高い機能性を持つパーツの生産も含まれている。電気自動車などの新しいプラットフォームが大量生産に移行しようとしている現在、HP Metal Jetは軽量ながら完全な安全認証を受けた金属パーツなど新たな用途にも活用される予定。
フォルクスワーゲンの技術計画&開発責任者であるマーチン・ゲーデ(Martin Goede)博士は次のように述べている。
「自動車産業はお客様からのパーソナライゼーションへの期待だけでなく、フォルクスワーゲングループが 2025年までに電気自動車80車種投入を予定するなど、革命期を迎えようとしています。1台の自動車は6,000から8,000種類のパーツから構成されています。『HP Metal Jet』をはじめとする積層造形技術の大きな利点は、最初に製造用ツールを作ることなくさまざまなパーツを製造できることです。パーツ生産のサイクルタイムを短縮することにより、より大量の生産が迅速に実現可能となります。新しい『HP Metal Jet』のプラットフォームが業界にとって大きな前進であるのはこの理由によるものです。お客様に提供する価値とイノベーションの水準をさらに引き上げることができることを楽しみにしています」
また、GKN Powder Metallurgyは、ポンプとポンプシステムの世界的メーカーであるWiloの水力効率をさらに高めコスト効率に優れた工業用パーツの生産にHP Metal Jetテクノロジーを活用する。Wiloは吸引力、圧力、温度の大きな変化に耐える、さまざまなサイズのインペラー、ディフューザー、ポンプ用ハウジングなどのパーツの生産においてもHP Metal Jetの活用を検討している。
「HP Metal Jet」を活用してヘルスケアを改革
医療業界に向けては、HPはATWのグループ企業であるParmatechと提携し、OKAY IndustriesやPrimo Medical Groupをはじめとする顧客を対象としてHP Metal Jetによるパーツの量産を拡充する。Parmatechは、金属粉末射出成型法の世界的な企業であり、40年以上にわたり医療と工業分野向けに大量生産、低コストの金属パーツを提供するパイオニア。
Parmatechの社長であるロブ・ホール(Rob Hall)氏は次のように述べている。
「『HP Metal Jet』は金属パーツの工業スケールの生産において、初めての真に実用的な3Dテクノロジーです。弊社のお客様は極めて高水準の性能、品質、信頼性を求めますが、HPが持つ先進的テクノロジーと市場に破壊的な変革をもたらしてきた伝統により、弊社は期待を上回るものを提供できると確信しています。『HP Metal Jet』を弊社の工場に導入し、外科用はさみや内視鏡用鉗子などの複雑なパーツをはじめ、従来の金属加工技術では不可能な新たなアプリケーションや形状の製造を開始できることに興奮を覚えています。『HP Metal Jetテクノロジー』は弊社の使命である、それぞれのお客様の課題に応えた 革新的なソリューション開発において鍵となる役割を果たすと期待しています」
大量生産向けにデザイン:「HP Metal Jet」の価格と提供予定
2019年上半期には、新サービス「Metal Jet Production Service」により、顧客は3D設計ファイルをアップロードし、最終製品として利用可能なパーツをオーダーすることができる。最高水準のエンジニアリングと生産品質を持つパーツは、HPのパートナーであるGKN Powder MetallurgyとParmatechにより生産される。
「HP Metal Jetソリューション」の価格は399,000ドル未満の予定。先行導入される顧客には2020年から、一般の顧客には2021年から提供される予定。
「HP Metal Jetシステム」の事前予約は9月10日から受付が開始されている(*8)。 「HP Metal Jetテクノロジー」の技術的詳細や「HP Metal Jet Production Service」の詳細と利用に関してはHP.com/go/3Dmetalsを参照。
IMTSにて3Dプリンティングによる量産の未来を展示
米国現地時間9月11日午前9時(日本時間9月11日23時)よりMcCormick Place内のWest Building、Sky Ballroomにて、HPの3Dプリンティングビジネス担当プレジデントであるステファン・ナイグロ(Stephen Nigro)氏によりIMTSのAdditive Manufacturing Conference開会基調講演が行われた。
HPとパートナー、顧客は、金属3Dプリンティングテクノロジーを量産向けとして実現するまでの経緯を展示する。この基調講演のライブストリーミングを視聴するには、http://gbm.media/hp-keynote にて登録を。
*1:比較対象のバインダージェッティング方式およびSLM(レーザー粉末焼結方式)の3Dプリンティングソリューションとの比較(2018年7月31日現在)。生産性については下記に基づく。
1)最大50倍の生産性は、最大10万パーツまでを連続造形した場合のスピードを比較。2)ソリューション取得コスト。
*2:比較対象のバインダージェッティング方式およびSLM(レーザー粉末焼結方式)の3Dプリンティングソリューションとの比較(2018年7月31日現在)。プリンターの価格は、2020年に先行導入される顧客向け販売予定価格。
*3:HPは本サービスを提供しない。顧客は、製造パートナーと直接やり取りし、そのサービスに対して支払いを行う。HPは、設計データと「HP Metal Jetプリンティング」との互換性をチェックする。Metal Jet Production Serviceは、西ヨーロッパと米国で、2019年上半期に開始される予定。
*4:比較対象のバインダージェッティング方式およびSLM(レーザー粉末焼結方式)の3Dプリンティングソリューションとの比較(2018年7月31日現在)。
*5:比較対象のバインダージェッティング方式およびSLM(レーザー粉末焼結方式)の3Dプリンティングソリューションとの比較(2018年7月31日現在)。生産性については下記に基づく。
1)最大50倍の生産性は、最大10万パーツまでを連続造形した場合のスピードを比較。2)ソリューション取得コスト。
*6:比較対象のバインダージェッティング方式およびSLM(レーザー粉末焼結方式)のプリンティングソリューションとの比較(2018年7月31日現在)。プリンターの価格は、2020年に先行導入される顧客向け販売予定価格。
*7:具体的には、引張強度、降伏強度、および延性に対するASTMおよびMPIF規格。
*8:事前予約は、米国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインが対象。「HP Metal Jet プリンタ―」は、先行導入顧客には2020年後半から、一般の顧客には2021年から提供される予定。