カシオ計算機(株)は、革や布などのさまざまな素材の触感や加飾による質感を専用の「デジタルシート」※1上に表現することで、製品開発における経営者の正確な判断をサポートする2.5Dプリントシステム“Mofrel(モフレル)”『DA-1000TD』が、4月に(株)デンソーに導入された。
※1 基材層・バンプ層・インクジェット層・マイクロフィルム層からなる2.5Dプリントシステム専用のシート。
より高度な技術を早期に実現することが求められている中、デンソーでは製品開発・設計と試作、生産技術を担当する技術者と技能者のより緊密な連携を可能とする“モノづくり棟”を2014年に建設するなど、技術開発力の強化を追求し続けている。
今回、同社では「モノづくり」における新たなイノベーションを起こすツールとして2.5Dプリントシステムに着目。アイデアを短時間・低コストで具現化できる点を評価し、導入に至った。今後同社では製品開発の試作や要素技術開発に2.5Dプリントシステムを活用していく予定。
カシオ計算機は、自動車や建材、アパレルなどさまざまな業界に対して、製品開発におけるデザインのイノベーション促進をサポートしていく。
デンソーの概要
社名:株式会社デンソー
設立:1949年12月16日
本社所在地:〒448-8661 愛知県刈谷市昭和町1-1
代表取締役社長:有馬 浩二
資本金:1,874億円(2018年3月31日時点)
売上高(連結):5兆1,083億円(2018年3月期)
従業員数(連結):168,813名(2018年3月31日時点)
2.5Dプリントシステム“Mofrel”
“Mofrel”『DA-1000TD』は、「電磁波造形技術」※2により、さまざまな素材の触感や加飾による質感の表現を約5~9分※3という短時間の印刷で実現。新たな金型を起こす必要がないため、初期の試作品製作におけるコストと時間をそれぞれ約50分の1※4にまで短縮することが可能。
従来に比べ、コストと時間の制約が弱まるとともに、デザイナーのアイデアを短時間で簡単に具現化できるので、色々なアイデアを試すことができ、デザインの自由度が高まった。さらに、“Mofrel”の活用の場を大きく広げるべく、薄いシート状のスイッチであるメンブレンスイッチの表面シートの出力が実現できるよう開発を進めている。
※2 電磁波の照射によってデジタルシートに印刷されたカーボン分子を振動させ、その振動熱をシートに含有させたマイクロパウダーに伝える。その振動熱により、マイクロパウダーを膨張させてシート表面に凸状の隆起をつくりだすだけでなく、カーボンの分子の量で熱量を制御し、隆起の高さを制御する技術。
※3 A4サイズの場合。出力する素材やモチーフ、その他の要因により変動する場合があります。
※4 ファブリック素材のエンボス加工試作の場合。従来がA3の仮型作成で約250,000円、期間約1.5カ月に対して、“Mofrel”が約5,000円(シート:2,000円、インク:200円、本体償却費:2,800円)、期間約1日。
製品名 | メーカー希望価格 |
DA-1000TD | 500万円+税(専用のアプリケーションを含む) |
デジタルシートの構造
印刷の手順
(1) スキャンデータやパソコンで作成した2次元データに合わせて、専用のアプリケーションにより、自動的にバンプ(凹凸)データが作成される。このバンプデータを必要に応じて調整し、確定したバンプデータを『DA-1000TD』に送り、デジタルシートに印刷する。
(2) 均一な配光で電磁波を照射。カーボン分子の発熱によりマイクロカプセルが膨張し、シート表面を隆起させる。このときの高さはカーボンの分子の量によって制御する。
(3) 鮮明なカラー印刷を行えるように、カーボン印刷をマイクロフィルムごと取り除く。
(4) 凸状の隆起のあるシート表面にカラー印刷を行う。