JSR(株)と日本電信電話(株)(以下 NTT)、アクセンチュア(株)の3社は、政府も提唱しているConnected Industriesを実現すべく、コンビナートに拠点を構える企業が相互連携して生産性・安全性向上を図る次世代型の「スマートコンビナート」の実証プロジェクトをJSRの千葉⼯場(千葉県市原市)で開始した。
今回の実証では、暗黙知とされてきた熟練技能者の優れた技術やノウハウを、デジタル技術を活用して継続的に形式知化し、活用する体制を構築・検証する。具体的には、JSR千葉⼯場で熟練技能者が化学製品の生産プロセスで⾏っているプラント運転管理や保全業務に関して、映像や音声などの非構造データ(*1)をセンサーと無線で自動収集し、分散制御システム(DCS:DistributedControlSystem)など機械設備からのデータと組み合わせて分析できる基盤を構築する。また、機械学習アルゴリズムに基づいた適切な判断をリアルタイムにオペレーターに提示できるソリューションも開発し、次世代型の「スマートコンビナート」に求められる機能や基盤の実証を行う。
3社は、JSRの運転管理・保全業務に関する知見、NTTアドバンステクノロジ(株)などNTTグループが有するAI技術「corevo®」(*2)などの先進技術、アクセンチュアのアナリティクスおよびインダストリアル・インターネット・オブ・シングス(Industrial Internet of Things)領域におけるノウハウや国内外で有する化学業界の業務実績など、各社の強みを融合させて、今回の実証を行う。「スマートコンビナート」実現のためには、様々な企業や⾏政などが相互連携してオープンイノベーションを推進することが重要であり、今回の3社による実証は、こうした考えに基づくもの。
化学業界では、経済産業省が中心になってIoTを活用したスーパー認定事業所(長期連続稼働)の取り組みが始まっている。一方で、連続安定稼働と熟練技能者の引退に伴って生じると考えられる「現場力低下」が懸念されおり、こうした課題の解決に貢献するデジタル技術は、防爆対応などの観点から導入が遅れている。こうした状況を踏まえ3社は、化学業界におけるデジタル技術の有用性を評価・検証し、工場の安全性や生産性の向上に資するデータを有機的に連携させる、「スマートコンビナート」の実現を目指している。
JSRの小柴満信代表取締役社長は次のように述べている。
「デジタル化の進展によって、設備の異常予兆検知や製品の需給予測が可能になれば、化学業界に大きな変革が起こりす。NTTおよびアクセンチュアが持つイノベーション⼒を活用し、『スマートコンビナート』を推進するとで、日本の化学業界の競争力強化に貢献してまいります」
日本電信電話の澤田 純代表取締役副社長は次のように述べている。
「NTTグループは、B2B2Xモデルを基本とし、他分野の企業との協業を通じて、付加価値の高いサービスを提供していきたいと考えています。今回の実証は、日本の化学業界がさらに発展する上で重要な取り組みであると同時に、NTTグループが目指すビジネスモデルを象徴するものでもあります。ICTが持つ潜在的な能⼒を最大限に引き出し、スマートコンビナートの実現に貢献できるよう、JSR様およびアクセンチュア様と協力してまいります」
アクセンチュアの江川昌史代表取締役社長は次のように述べている。
「市場競争原理は、デジタル化とグローバル化によって業界や国境を越えて破壊されつつあります。こうした状況下で日本の化学業界が発展していくためは、安全・安定操業を最優先にしながら、世界の課題を解決する新たなイノベーションを生むための企業変革が必要です。デジタル技術には、生産性や安全性を向上できるだけでなく新たな価値を創造し、ビジネスを根から変革できる力があります。今回の実証を事業モデルに昇華させて業界にゲームチェンジをもたらせるよう、3 社で連携してまいります」
(*1)画像や音声など、構造定義を持たない非定型のデータ
(*2) 「corevo®」は日本電信電話株式会社の商標