昭和電工(株)は、パワー半導体モジュールのゲートドライバ用フォトカプラーやIoT関連各種センサー用に用いられる赤外LEDチップ(以下、赤外LED)の製品ラインナップを拡充した。同社の赤外LEDは、LPE法注1)の標準型LED、MOCVD法注2)の透過型および反射型LEDの3種類で展開している。低電流域での出力の立ち上りや高速応答性に優れていること等から、高信頼性が要求される産業機器・車載・医療・セキュリティ用途などで広く用いられている。
反射型LEDは、発光層の下にミラー層を形成し、光を真上方向に反射させることで発光出力を高めたLEDチップ。従来産業機器用光電センサーなどに採用されていたが、今回、同技術を発展させ、「ダブルジャンクション反射型LED」「P-アップ反射型LED注3)」の2製品を追加した。
(1)ダブルジャンクション反射型LED
発光層を2層にしたチップで、従来の反射型LEDチップの2倍近い出力を実現。生体認証や監視カメラ、バーチャルリアリティ、車載センサーなど高出力が求められる用途に適している。
(2)P-アップ反射型LED
反射型LEDで主流のN-アップ構造と極性を逆にした製品。赤外LEDで広く用いられているLPE法ではP-アップ型が主流であり、同じ回路設計で高出力モジュールを開発したいという顧客ニーズに応えた。こうしたチップ構造の選択肢が増えることで、パッケージやモジュールにおける回路設計の自由度が高まる。
昭和電工は、LEDチップメーカーとして40年の歴史があり、4元(AlGaInP)系、ガリウムヒ素(GaAs)系・ガリウムリン(GaP)系など多種のLEDチップの生産販売を行っている。近年は特に赤外LEDの事業拡大に取り組んでおり、メイン工場である秩父事業所での上記取り組みの他、2017年4月には昭光通商(株)より昭光エレクトロニクス(株)の株式を取得し、完全子会社化した。同社は、鹿児島県日置市に製造拠点を有するLEDチップメーカーで、産業機器・車載・民生用の赤外LEDおよび表示用LEDを中心に事業展開を行っている。昭和電工秩父事業所と同社の2拠点体制とすることで、技術・品質面でのシナジーを発揮すると同時に、品揃えを拡充することで多様化する市場に対応できる体制を整えた。
昭和電工はフォトカプラーおよびセンサー分野で市場から高い評価を得ている。赤外LEDは、IoT市場の進展と共に市場規模拡大が予想されている。今後も製品ラインアップを拡充し、市場からの要求に応えていく。
注1)LPE法
液相エピタキシャル成長(Liquid Phase Epitaxy)の略。溶液から固相結晶を基板上に晶出させる結晶成長法。成長速度が速いため厚膜化が容易。
注2) MOCVD法
有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)の略。有機金属を気体化し、基板上に結晶を成長させる製造方法。ガス流量を制御することで、効率よく均質な薄膜結晶を形成できる。
注3)Pアップ
LEDチップはP極とN極の二極で構成され、PアップはP極が上面にあるチップを指す。
<昭和電工の赤外LEDチップ構造>配光特性、出力数の異なる3構造で展開
<昭和電工のLED製品ラインナップ>青色を除くすべての波長を取り揃えている