凸版印刷(株)は、オフセット印刷の工程で紙幣に真贋判定可能な機能を付与する高セキュリティインキを開発した。2017年2月中旬から本格的な販売を開始する。
なお同製品は本格販売に先立ち、メキシコ銀行が2017年2月5日(日)に発行した、メキシコ立憲100周年記念紙幣のセキュリティ技術として採用された。また、メキシコ銀行は、十分な検証や加工試験行った上で、同製品を、来年以降に順次発行する新シリーズのメキシコペソ紙幣におけるセキュリティ技術として採用することも決定した。
同製品は、紙幣印刷用のインキに少量加えるだけで、その色や印刷適性に影響を与えることなく、近赤外線光源を用いた真贋判定効果を実現する高セキュリティインキ。近赤外線は、可視光線に近い特性を持つ電磁波で「見えない光」として、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコンなどに使われている。
通常のインキで印刷された絵柄は、近赤外線光源下では視認できないのに対し、同製品を混合したインキで印刷された絵柄は近赤外光源下で視認可能なため、紙幣処理機やATM、紙幣検知器に搭載された赤外線センサーで読み取ることで、簡単に真贋判定が可能。また同製品は、高いセキュリティ性に加え、紙幣流通に求められる高い耐久性を備えている。
従来、このような紙幣用の機械読み取り真贋判定技術を導入するためには凹版印刷を利用するのが一般的でしたが、今回、従来培ってきたセキュリティ技術や加工ノウハウを用いることにより、日本企業として初めて、オフセット印刷向けインキの製品化に成功。オフセット印刷は凹版印刷に比べ、印刷時のインキ使用量が少なく、従来の類似セキュリティインキと比較して5分の1以下の使用量で効果が発揮できるため、大幅な運用コスト削減が可能となる。
同社は同製品を、国内外の中央銀行や紙幣印刷会社へと拡販。2020年までに約5カ国での採用を目指す。