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【低炭素石炭火力発電】NEDOと大崎クールジェン、CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電の実証試験開始

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図1 第2段階のCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証試験のCO2分離・回収設備
(中国電力(株)大崎発電所内)
 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と大崎クールジェン(株)※1は、石炭火力発電から排出される二酸化炭素(CO2)を大幅に削減するため、究極の高効率石炭火力発電技術とされる石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)※2とCO2分離・回収技術を組み合わせた革新的な低炭素石炭火力発電の実現を目指す「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業※3」に取り組んでいる。
 本実証事業は、酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC)実証(第1段階)※4、CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証(第2段階)※5、CO2分離・回収型IGFC実証(第3段階)の順に実施し、中国電力(株)の大崎発電所構内に建設した実証試験設備で、システムの基本性能やプラント運用性・信頼性、経済性を検証する。2017年3月から開始した第1段階の実証試験では、170MW規模の実証プラントとしては世界最高レベルの効率となる送電端効率40.8%(高位発熱量基準※6)を達成し、実用化後の商用発電プラント(1500℃級IGCC)に換算して送電端効率約46%(高位発熱量基準)の達成に見通しが立った。
 そして今般、第2段階となるCO2分離・回収型酸素吹IGCCの施設が完成し、試運転を経て2019年12月25日から実証試験を開始した。第2段階では、酸素吹IGCC実証試験設備とCO2分離・回収設備を組み合わせたCO2分離・回収型酸素吹IGCCの石炭火力システムとしての基本性能やプラント運用性・信頼性、経済性を検証する。CO2回収時のエネルギーロスによる発電効率の低下という課題に対し、実用化後の商用発電プラント(1500℃級IGCC)に換算して、IGCCでガス化したガス全量に対してCO2を90%分離・回収しながら、現状で最新鋭微粉炭火力発電方式と同等レベルの送電端効率40%※7(高位発熱量基準)の達成見通しを立てることを目標とする。

図2 石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業の概要
2.実証試験の内容
(1)目的:CO2分離・回収実証設備が付設された酸素吹IGCCプラントにおいて安定的に高効率発電を維持し、同時にCO2を安定的に分離できる技術を検証する。
(2)実施期間:2019年12月25日~2021年2月28日まで
(3)実施場所::中国電力(株)大崎発電所構内(広島県豊田郡大崎上島町中野6208番1)
(4)実証試験目標:下表参照
 商用機におけるCO2分離・回収の費用原単位※9について、技術ロードマップ※10に示された費用原単位をベンチマークとして評価する。
 本実証試験の目標を達成することにより、本事業とは別に開発が進められているCO2の利用・貯留技術と組み合わせることで、CO2をほとんど排出しないゼロエミッション※11石炭火力発電が実現できる。

今後の予定
 第3段階(2018~2022年度)として、今回の実証設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCの実証事業を計画している。第3段階では、実用化後の500MW級の商用発電プラントを想定して、IGCCでガス化したガス全量に対してCO2を90%分離・回収しながら、送電端効率47%(高位発熱量基準)程度の達成の見通しを立てることを目標としている。
<注釈>
※1 大崎クールジェン(株)
 中国電力(株)と電源開発(株)の共同出資会社。
※2 石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
 IGFCは、Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycleの略。石炭をガス化して、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のこと。
 参照リリース: 世界初、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手(2019年4月17日)
※3 石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業
 事業名:次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証
 事業期間:2012年度~2022年度(2012年度~2015年度は経済産業省事業)
 事業規模:助成金467億円、事業費1,176億円
※4 酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC)実証(第1段階)
 IGCCは、Integrated Coal Gasification Combined Cycleの略。石炭をガス化して、ガスタービン、蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式には、石炭ガス化炉に酸素を供給する酸素吹方式と空気を供給する空気吹方式がある。CO2分離・回収設備と組み合わせる場合には、酸素吹方式の方がエネルギー効率的に優れているとされる。
 参照リリース:「大崎クールジェンプロジェクト」の第1段階、酸素吹IGCCの実証試験を完了(2019年3月6日)
※5 CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証(第2段階)
 参照リリース:CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電の実証事業を開始(2016年4月4日)
※6 高位発熱量基準
 燃料が燃焼した時に発生するエネルギー(発熱量)を表示する際の条件を示すもので、燃料の燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱も発熱量として含めたもの。高位発熱量は、総発熱量とも呼ばれる。高位発熱量から燃料の燃焼 によって生成された水蒸気の蒸発潜熱を除いた低位発熱量(真発熱量)に比べ、見かけ上の熱効率が低く表示される。高位発熱量基準は、政府のエネルギー統計、電力会社の発電効率基準、都市ガスの取引基準などに用いられている。
※7 発電効率40%
 発電効率には分離・回収プロセスまでを含む(貯留に係る動力は含まない)。
※8 CO2回収効率
 CO2分離・回収設備単体のCO2回収割合:(分離・回収されたCO2ガスのC量/CO2分離・回収設備に導入されたガスのC量)×100
※9 CO2分離・回収の費用原単位
 1トンのCO2を分離・回収するために必要な費用(円/トン-CO2)。
※10 技術ロードマップ
 次世代火力発電の早期実現に向けた協議会(2015年6月に経済産業省が設置)にて策定された次世代火力発電に係る技術ロードマップ(物理吸収法によるCO2分離回収コストは2000円台/t-CO2)。
※11 ゼロエミッション
 産業により排出されるさまざまな廃棄物・副産物について、他の産業の資源などとして再活用することにより社会全体として廃棄物をゼロにしようとする考え方のこと。

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