東洋紡(株)は、次世代の太陽電池として注目を集める有機薄膜太陽電池(以下、OPV)用発電材料の開発を加速する。
OPVは、シリコンなどの無機物を材料とする一般的な太陽電池に対して、炭素、硫黄、窒素原子などを含む有機物を発電材料に用いられている。発電材料は、ガラスや金属だけでなくプラスチックなどの表面にも塗布することができ、薄くて軽いフィルム状の太陽電池も実現可能。壁や窓、衣服やカーテンの布地など、従来は使用が困難だった場所にも設置できるので、あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」において欠かせない、無線通信を行うセンサーデバイス用のワイヤレス電源などに適しており、次世代の太陽電池として普及が期待されている。
同社は、ファインケミカル事業で長年培った有機合成技術を応用し、材料の化学構造を最適化することで、LEDなど低照度の室内用光源でも高い出力が得られるOPV向けの新しい発電材料の開発を進めてきた。直近の検証では、オフィス環境と同等の照度環境において、卓上電卓に使用される一般的なアモルファスシリコン太陽電池に比べて1.4倍の出力を確認した。
このたび、同材料を使用したOPVモジュールの室内環境での高い出力性能や、製造工程における高いハンドリング性能などが評価され、フランスの政府機関であるCEAとの共同研究を開始した。OPVの普及がいち早く見込まれる欧州での展開を視野に、本材料を用いたOPVの早期実用化に向け、開発に努めている。
■CEA
フランス政府機関の原子力・代替エネルギー庁(CEA: Commissariat à l'énergie atomique et aux énergies alternatives)。ICT、エネルギー、ヘルスケア分野の開発に加え、スタートアップの創出やメーカーとの共同研究を行う。