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【レンズレスカメラ】日立、同心円パターンを印刷したフィルムを使い、動画撮影後に容易にピント調整できる技術を開発

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(株)日立製作所は、レンズの代わりに同心円パターンを印刷したフィルムを用いて、動画撮影後に容易にピント調整ができるレンズレスカメラ技術を開発した。レンズが不要となることでカメラの薄型軽量化を実現し、モバイル機器やロボットなどのデザインを損ねることなく、より自由な位置にカメラを設置することが可能となる。また同技術は、平面情報に加え、奥行き情報も画像センサーに記録することができるため、撮影後でも任意のピント位置で動画を再生することが可能。撮影した映像からピントを合わせたい対象物を自由に選択して再生することができるため、本カメラをモバイル機器や車、ロボットに搭載することで、作業支援、自動運転や人の行動分析など、幅広い用途での活用をめざす。

  スマートフォンに代表されるモバイル機器や、デザイン性が求められるロボットなどに搭載されるカメラには、搭載場所の制限を受けることのない薄型軽量化と、高性能化の両立が求められる。それらの要求に対応したカメラ技術として、近年、撮影後に画像処理を行うことを前提としたコンピュテーショナルフォトグラフィ*1という技術への期待が高まっている。同技術を応用したカメラとして、光線の位置と方向を同時に記録して撮影後のピント調整を可能としたライトフィールドカメラがあるが、特殊なレンズを要するため、大きく厚みがあることが課題であった。一方、レンズをなくすことで薄型軽量化を実現するレンズレスカメラが開発されているが、このカメラで撮影する画像の処理には多くの計算が必要であり、性能に課題があった。

  日立は、同心円パターンを重ね合わせることによって生じるモアレ縞*2の原理を利用することで、薄型軽量のレンズレスカメラでありながら、画像処理の計算量を300分の1*3まで減らすとともに、ライトフィールドカメラのように撮影後のピント調整機能を合わせ持つカメラ技術を開発した。

2016 11 16 hitachi

図 開発したカメラ技術の撮影原理

 

【カメラ技術の概要】

(1) モアレ縞を用いた撮影画像処理技術

  外側ほど間隔が狭くなる同心円パターンのフィルムを画像センサーの直前に置き、入射する光線が作る影に、画像処理内で同じ同心円パターンを重ね合わせると、光線の入射角に対応した間隔のモアレ縞が生じることに着目。このモアレ縞を利用し、フーリエ変換*4と呼ばれる広く普及した簡単な画像処理で撮影画像を得ることができる技術を確立した。

(2) 撮影後のピント調整技術

  入射する光線がフィルムを通じて画像センサー上に作る影に重ねる同心円パターンの倍率を変えると、ピント位置を移動させることができる技術を確立した。撮影後に倍率の異なる同心円パターンを重ね合わせて画像処理を行うことで、自由にピントを調整することが可能。

  今回開発した技術の性能を測定するため、1cm角の画像センサーと、そこから1mm離した位置に同心円パターンのフィルムを配置して実証実験を行った結果、標準的なノートパソコンで毎秒30フレーム*5で動画撮影できることを確認した。
  日立は、今回開発したカメラ技術を、モバイル機器や車、ロボットを初めとしたあらゆるものへの適用をめざすとともに、IoT(Internet of Things)技術を基盤とした超スマート社会*6の実現に貢献する。

*1 計算機による演算を前提とした光学系を導入することで、今までのカメラでは不可能だった機能を実現するイメージング技術

*2 規則正しい繰り返し模様が重なると、その繰り返し間隔の違いによって現れる粗い縞模様

*3 日立調べ

*4 空間周波数領域と空間領域との間で信号を変換する数学的操作

*5 TVなど一般的に動画で使用される1秒あたりのフレーム数

*6 必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会

 


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