DIC(株)は、半導体実装向け厚膜レジスト用樹脂として、これまで両立が難しかった高耐熱性と柔軟性を兼ね備えたフェノール樹脂「RZ-230シリーズ」を開発し、7月よりサンプルワークを開始している。人工知能(AI)を同開発に活用することで同用途に適合した厚膜形成を可能にし、0.5~1μmレベルの回路微細化を実現する。
世界的なスマートフォンやタブレットPCの需要拡大などにより、半導体の世界市場は2017、18年と2桁成長しており、今後も市場拡大が見込まれている。また昨今、IoTの活発化などによる通信速度の高速化を背景に、半導体集積回路のさらなる大容量化、高速化、低消費電力化とともに半導体実装の小型化や薄型化を目的として、半導体回路の微細化への要求はますます高まっている。
これまで、半導体実装用向け厚膜レジスト材料には耐熱性を有するネガ型*1ポリイミドやエポキシ系材料が用いられてきたが、分子構造や現像性から回路の微細化には限界があった。一方、高速現像性を有するポジ型*2ポリイミドに既存フェノール樹脂を添加することで微細化できるものの、耐熱性と柔軟性が劣ることから同用途への使用は限定的であった。
DICは、独自の高分子設計技術とAI技術を化学分野に生かすケモインフォマティクス(Chemoinfomatics、化学情報学)を駆使してフェノール樹脂の新たな分子骨格を見出した。同分子骨格を採用することにより、Si基板などへポジ型ポリイミドでの厚膜形成が可能でありながら、ガラス転移温度をこれまでより50℃以上引き上げ150℃以上とし、現像性は2~3倍(同社製品比)の高速化を実現できる。また、ポリイミドの性質を阻害しない柔軟性を有することから、これまで5%程度だった添加量を約5倍増できる。これらにより、課題であった耐熱性と柔軟性が高まり、ポジ型での回路微細化を実現する。
半導体実装用材料は、膨大な情報を高速で処理するサーバー用のCPU(Center Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)や、スマートフォン用アプリケーションプロセッサーなどの統合化用途への採用が今後増加することが期待されている。
DICは、今年で最終年を迎える中期経営計画「DIC108」のポリマ事業において、国内ではニッチで高機能なテーマに取り組んでいる。今後も研究開発と用途拡大を鋭意実行し、高機能フェノール樹脂において5年後に売上高10億円を目指す。
*1 ネガ型:露光されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に露光部分が残る。
*2 ポジ型:露光されると現像液に対して溶解性が増大し、露光部が除去される。
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【半導体】DIC、AI設計を活用し、高耐熱性と柔軟性を兼ね備えた厚膜レジスト用樹脂開発
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