Quantcast
Channel: コンバーティングニュース
Viewing all articles
Browse latest Browse all 7252

【しなやかなタフポリマー】東レ、CFRPに応用する技術を開発

$
0
0

 東レ(株)は、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の伊藤耕三プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として開発した「しなやかなタフポリマー」を、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に応用する技術を開発した。

 今回開発されたCFRPは、本来のCFRPが持つ高い強度と剛性を維持しながら、従来に比べて約3倍の耐疲労特性を実現することから、今後、自動車、自動車、スポーツ用品、医療など、幅広い分野への応用展開と市場拡大が期待される。

 今回開発した技術の概要は下記のとおり。

・大学などによる分子設計技術や構造解析技術と、東レが保有する独自のナノアロイ(R)(注1)技術を融合することによって、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のポリマー(注2)材料へ環動ポリマー構造(注3)を導入する「しなやかなタフポリマー」作製技術を、確立した。

・具体的には、CFRPのマトリックス樹脂中に環動ポリマーをナノスケールで均一に分散することに成功し、本来CFRPが持つ高い強度と剛性を維持しながら、従来に比べて約3倍の耐疲労特性(注4)を実現した。

・この技術により炭素繊維強化プラスチックは、今後10年間で、航空機、自動車、スポーツ用品、医療ほか幅広い分野への応用展開と市場拡大が期待される。

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の1つである「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」(伊藤耕三プログラム・マネージャー、以下「本プログラム」)の一環として、東レ株式会社(以下、「東レ」)は、分子結合部がスライドする環動ポリマー構造を炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」:Carbon Fiber Reinforced Plastics)に導入することで、CFRPの耐疲労特性を向上させる新たなポリマーアロイ技術を開発した。

 CFRPは、その高い強度と剛性を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途、義肢などの医療用途などに広く利用されている。

 CFRPのマトリックス樹脂(母材)として使われている熱硬化性樹脂(注5)は、分子内に3次元架橋点(網目構造)を持つことから、優れた耐熱性、高強度、高剛性といった良好な機械的特性を示す。しかし、架橋点により分子の動きが制限されるために、材料の変形に追随できず、繰り返しの変形により壊れやすくなるという問題があった。これを解決して、機械的特性と耐疲労特性を両立できれば、CFRPはより幅広い用途に展開できると期待されてきた。

 同プログラムではこれまでに、分子結合部がナノメートルオーダーでスライドする環動ポリマーであるポリロタキサン(注6)の構造を、熱可塑性樹脂であるポリアミドに組み込み、加えられた力を分子レベルで分散させて「いなす」ことで、強度や剛性を保ちながら、衝撃を受けても壊れにくいしなやかな材料を開発することに成功していた。これは、大学などによる分子設計技術や構造解析技術と、東レが保有する、2種類以上のプラスチックをナノメートル単位で最適に混合する「ナノアロイ技術」との連携によるものである。今回、同様の技術をCFRPに適用し、一般的なCFRPに環動ポリマー構造を組み込んだ結果、強度や剛性を維持しながら、繰り返し曲げ疲労試験において約3倍の耐疲労特性を達成した。

CFRPを構成する熱硬化性樹脂へ環動ポリマー構造を導入したことによって、CFRPの持つポテンシャルを最大限に引き出せる可能性が見いだされたことから、今後、さらに幅広い分野への応用展開とCFRP材料市場の拡大が期待される。

同研究は、東京大学の伊藤耕三教授、大阪大学の原田明特任教授、山形大学の伊藤浩志教授、井上隆客員教授、東京工業大学の中嶋健教授、理化学研究所の高田昌樹グループディレクター(東北大学 教授)と星野大樹研究員、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社、東レ・カーボンマジック(株)の協力を得て行われた。

(注1)ナノアロイ®:2種類以上のプラスチックをナノメートル単位で最適に混合する技術。(ナノアロイ®は、東レの登録商標)

(注2)ポリマー:小さな分子が繰り返し結合してできた、ひも状の分子。プラスチック、化学繊維、ゴムはポリマーからできている。

(注3)環動ポリマー構造:分子の結合部分がスライド可能な分子構造。ポリロタキサン中の環状分子を目的のポリマーと架橋して作成する

(注4)耐疲労特性:試験片を繰り返し曲げ、疲労させた際の耐久性。破断するまでの繰り返し曲げ回数を指標とした。

(注5)熱硬化性樹脂:加熱により硬化(重合)させることで、3次元架橋構造(網目構造)を形成することから、剛性、強度に加え耐熱性、耐薬品性に優れるポリマー。硬化前のプレポリマーは炭素繊維への含浸性に優れることからCFRPのマトリックス樹脂として用いられる。

(注6)ポリロタキサン:複数のリング状の分子をひも状の分子が貫通した、数珠やネックレスのような構造を持ったポリマー。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 7252

Trending Articles