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【CNF】日本製紙、江津工場で食品・化粧品向けの年産30トン以上の量産設備が稼働

日本製紙(株)は、江津工場(島根県江津市)に、食品・化粧品向けのセルロースナノファイバー(CNF)量産設備の建設工事を進めてきたが、このたび計画通りに完工し、稼働を開始する。  

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2017 09 27 nipponpaper

江津工場CNF量産設備

 江津工場のCNF量産設備では、食品添加物として製造・販売の実績があるカルボキシメチルセルロース(以下「CMC」)の製造技術を応用し、年間30トン以上のカルボキシメチル化CNF(以下「CM化CNF」)を製造することができる。

 CM化CNFは、繊維幅が数nm~数十nmのミクロフィブリルセルロースで、温度による粘度変化が小さい、曳糸性がない(ネバツキがない)、チキソ性(注1)を有するなど、CMCをはじめとする従来の添加剤(増粘剤)にはない特長を発現することから、食品・化粧品などの新規添加剤としての実用化が見込まれている。江津工場では、今回の量産設備の稼働を機に、すでに確立している「水分散したCNFを固形化する技術(水分率10%以下)」を用いて、粉体でのCNFサンプル供給を本格的に開始している。

 同社は、本年4月に石巻工場(宮城県石巻市)で、TEMPO触媒酸化法(注2)により完全ナノ分散したCNFを生産する、世界最大級の量産設備(年間生産能力500トン)を稼働させ、機能性シートをはじめ、機能性添加剤やナノ複合材など、幅広い工業用途での利用を進めている。

 また、本年6月には富士工場(静岡県富士市)で、樹脂に混練することにより得られるCNF強化樹脂(注3)の実証生産設備(年間生産能力10トン以上)を稼働させた。現在、補強材料としての用途開発を進めている。

 江津工場では、長年、木材成分から溶解パルプや機能性ケミカル製品を製造し、木材の総合利用を推進してきたが、今後は、既存のセルロース事業の幅を広げる新規添加剤用途で、本格的にCNFの市場を開拓している。

(注1)撹拌すると時間とともに粘度が低くなるが、撹拌を止めると、元の粘度に戻る性質のこと。

(注2)東京大学大学院農学生命科学研究科 磯貝 明教授らが開発した、TEMPO触媒によるセルロースの化学変性方法。これにより、パルプが解繊しやすく均一な幅のナノファイバーを得られる。

(注3)ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ナイロンなどの樹脂にCNFを混練することにより強度を付加したもの。


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